乳がん検診で要精密検査となったときに読む話

こんにちは。今日も頑張りましょう。


ここまでいくつか乳がん検診の話を書いてきて、そろそろ検診前のネタも尽きてきたので、検診を受けたあとの話をしたいと思います。


乳がん検診結果を読むための知識
https://note.com/nonaiscope/n/nbe3495021257

上記でも書きましたが、がん検診における「要精密検査」とは「診断が必要だから、専門病院(専門科)を受診してほしい」を意味しているにすぎません。必要とされるその診断には、異常なしも含まれます。決して乳がんが確定したわけではありません。慌てずに精密検査を受けてください。というわけで、今回は「要精密検査」の結果を受け取ってから、精密検査をどこで受けるかまでの流れになります。


・まずは検診画像を入手しよう

多少の手間はかかるかもしれませんが、検診先に問い合わせ、検診画像を絶対に入手してください。特にマンモグラフィについては画像の入手を強くおすすめします。

精密検査のために受診した病院でも、おそらくマンモグラフィと超音波検査は再検査になるでしょう。このことを知ってか、どうせ再検査するのだからと検診時の画像を持参しない方がそれなりの数います。いけません。

画像を持参してもらえれば、
1:検査前から「どのあたりを重点的に診ればいいか」がわかります
→このあたりが怪しいと思って検査をするのと、漠然と検査するのとでは精度が大きく異なります。(まれに紹介状やレポートだけでは「どこの所見を異常と言っているのかわからない」ということがありますが、画像もあればそれは減ります)


2:検査結果の比較ができます
→異常所見の再現性があるかないかは大事な要素です


3:場合によっては再検査しないですむことがあります
→特にマンモグラフィの場合、(おいらの外来では)条件によって再検査を省略することもありました


ごくまれに検査画像を準備したがらない検診機関もありますが、検診機関に拒否する権利はありません。強く要求してください。費用がかかるかもしれませんが、それに見合ったものだと思います。


・精密検査を受けるクリニックを決めよう

乳腺専門のクリニックは、増えているとはいえ、決して十分と言えるほどはありません。それでもやはり専門のクリニックを受診すべきです(受診するだけで1ヶ月以上の待ち時間があるかもしれませんが)

個人的には「生検(乳房内に針を刺して腫瘍組織の一部を採取するための検査)」できるクリニックを受診するのがいいと思っています。
もしくは(生検ができなくとも)大学病院などから派遣されている乳腺外科医が診察を行っているクリニックです。


日頃から乳腺外科医は「乳がんか否か」の判定ばかりを行ってきているので、画像を診れば良性か悪性か(がんか、がんでないか)をほとんどのケースで判断することができます。
ただ、その判断が正解だったか誤っていたかは、一定期間経過観察を行うか、生検もしくは手術などを行い病理結果が出てはじめて分かります。

つまり、「患者さんの画像を診る」→「良性か悪性かの判断をする」→「経過観察もしくは生検・手術を行う」→「最初の判断が正しかったか、画像との乖離がないか見直す」というトレーニングを積んではじめて、「画像を診ればある程度わかる」と言えるようになります。

生検や手術が行える施設に勤務している医師は、特にこういったトレーニングを積んでいると言えるでしょう。肩書だけで医師を選ぶのではなく、経歴などからしっかりとしたトレーニングを積んでいるかを判断し、そのような医師に精密検査を依頼してほしいと思います。



また、乳がん患者の若年化や訴訟リスクなどもあって、画像のみで「がんじゃないです」と言い切れることがなかなか難しくもなってきています(個人の印象です)。
少しでも患者への侵襲はなくすべきだと思ってはいますが、画像に怪しい所見があれば生検を行い、画像所見の見立てと病理所見の結果とに違いがないかを確認することが、最終的には最も患者のためになるのではないかとここ数年思いを強くしています(このようなやり方は病理の先生方には怒られてしまうかもしれませんが)

精密検査を受けるクリニック選びの際には、「生検」が可能か否かは一つの判断基準になるでしょう。

ちなみに乳がん手術を行っている病院は必ず生検も行えますが、受診だけで2-3ヶ月待ちもありえます。そのような病院は治療の必要性が生じた場合に受診すればいいので、まずは診断をつけることを優先してクリニックを受診しましょう。


・焦らず選んで受診しよう

早くに受診できればそれにこしたことはないのですが、乳腺外科外来については予約困難な状況が続いていますので、そもそも急いで受診すること自体が難しいかもしれません。

何ヶ月以内にという指標はないのですが、もともと乳がんは進行がそれほど早くない癌腫であることや、発育速度のバラメーターであるダブリングタイム(倍化速度・倍加時間)などを考慮すると、要精密検査となってから1ヶ月以内である必要性は少ないと思いますが、それでもおそくとも3ヶ月以内には受診してほしいかなと思っています(これは個人の考えです。また、3ヶ月は待っても大丈夫ということを示しているのではありません)


何度も繰り返しますが、「要精密検査」とは「診断が必要だから、専門病院(専門科)を受診してほしい」を意味するにすぎません。実際、乳がん検診で要精密検査となった方で実際に乳がんと診断される割合は約6%程度※です。慌てずに、しっかりとしたクリニック、病院で精密検査を受けるようにしてください。
※日本対がん協会乳がん検診の意義と目的
jcancer.jp/about_cancer_and_checkup/各種の検診について/乳がんの検診について/検診の意義と目的


以上、精密検査を受けるまでの流れでした。
大切なのでこれも繰り返しますが、要精密検査になったら検診画像は必ず入手してください。
次回は生検(細胞診、組織生検)について解説する予定です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?