【終演報告】舞台『氷雪の門〜昭和20年、乙女たちが決めたこと〜』
舞台『氷雪の門〜昭和20年、乙女たちが決めたこと〜』2023
配信も終了し、これにて本当に終演となります。
沢山のご来場、ご視聴、応援!
誠にありがとうございました❄️☎️
本当に沢山の反響をいただき嬉しい限りです。
改めまして、真岡郵便電信局電話交換手・浜田テル役の米沢のぞみです。
看護婦の妹がいた乙女ですね。
戦後78年。作品も今年で10周年。
沢山の想いが詰まった本作の歴史に関わる1人になれたことを心から嬉しく思います。
元々大戦期の作品は私が役者を志した頃からずっとやりたかったことの1つで、お話をいただいてから長い間楽しみにしておりました。
この欲は、遡るとテレビっ子小学生時代(多分ドラマ『霧の火』をこの時観てるんですよね……)や、初めて作り手側として"戦争"について考えながらひと夏を過ごした中学の演劇部時代まで戻ります。
テルよりもっと直接的ではありましたが、そういえばあの時も広島に関係した女の子の役でした。不思議な縁です。
役者の役割の1つは"架け橋"たることだと思っています。
「氷雪」であれば歴史と今の橋渡し。
"物語を見る"という触れやすい形で世に残し思いを繋いでいくこと。
当然責任が伴いますし、実在の苦しみを物語として消費する後ろめたさは必ず持っていなければならないと思っています(やや自戒)
その後ろめたさを上回るつもりの礼節と全員の誠意があって初めて作品として認められるべきだ、というのが私の理想です。
その判断の先はお客様や当事者の方々なので私たちではどうしようも無いのですが。
それでも氷雪2023座組の皆さまは見習わねば!となるほど作品に真摯であろうとする方が多くて、自惚れかもしれませんが、いただいたご感想からそれらは欠片でも届いたのだと信じています。
役や皆のことも少しお話しさせてください。
まずは演じた浜田テルちゃん。
両親は他界。
親戚が固まって住む広島には原爆。
唯一の肉親は離れて暮らす妹の博子だけ。
つらい境遇ばかり目に入ってしまいがちですが、同僚とお汁粉にはしゃいだり妹の恋バナに沸いたり、死後の願いもそうなのですが、彼女も気を張っていただけの真面目な若い普通の女性なんですよね。
どんな暮らしをしているか、流行りには詳しいのか、何が好きなのか
台詞には無くとも、一度に舞台にいる人数が多いからこそ、ふとした瞬間に脇で各々の中身が滲んでいるのが氷雪の面白いところだなぁと思います。
シーン変わりとかで随所にある台本に無いやり取りも好きなんですよね(( ◜௰◝و(و "
米沢には1回やったボケを拾っていただき定着した箇所もありました。
規模が大きいほど数で括られてしまいがちな犠牲者たちにも、1人1人に1冊は自伝の書けるような人生がある。
台本を読んだ時、その愛情を強く感じました。
極力これに寄り添いたいと、米沢チェキはいつもと雰囲気を変えて、あまり描かれないテルの日常を切り取るイメージで作りました。
お気に入りは道端の猫ちゃんと恋愛系です。恋バナシーンの無い彼女にも、好きな人はいたかもしれないじゃないですか。
次に博子。テルにとって欠かせない存在です。
太平炭鉱病院の看護婦で、テルとは年子の姉妹。
博子博子言いすぎて稽古初期は自分の役の名前の方が分からなくなる時期がありました(?)
博子役の桃子ちゃん、天真爛漫でつい世話を焼きたくなるタイプの(おもしろ)可愛い子で本当に妹に欲しいです。
テルの胸ポケットにはずっと写真が入っているのですが、桃ちゃんも博子のポケットに同じ写真を入れてくれたようで、それを聞いたお姉ちゃんはとても嬉しかったよ……
ちなみに米沢自身は甘やかされて育ったばちばちの末っ子なのですが、浜田姉妹の関係性、割と性格の感じが似ています。
時代が違っても姉妹なんてそんなもん説……
まあ私は博子ほど可愛げのある妹ではないんですが
博子はテルの生きる動機です。
最後の博子の言葉を背中で受け止めるの、本当につらかった。
つらくて誇らしかった。
さのももちゃん博子が妹でよかったです。
博子がいた太平炭鉱病院の事件は真岡と同じく、ソ連の樺太侵攻で起きた悲劇として知られています。
ぜひ調べてみていただけると嬉しいです。
そして交換室といえば班長と副班長!
本当に大好きです。
班長と副班長も大好きだし、2人を演じた美乃里さんと咲稀さんも大好き。
しごでき上司なだけでなく年相応の女性やお茶目な一面もあるのがたまらなくて……
何よりお2人のリーダー感がすごい。
不安な場面でも目が合うと優しく微笑んでくれる班長。
生きる意欲と強さをくれる副班長。
仕事への責任感や家族のことも勿論ありますが、2人の背中を見ていたから、みんなあそこまで交換室に残りたいと言ったのだと思います。
お二人のお芝居を正面から浴びる位置にいられたこと、本当に貴重で贅沢な時間でした。
そして米沢がいち作品ファンとしてサヨ推しなことを抜きにしても、真面目なテルはきっと仕事一途で格好良い副班長のようになりたかったのかもしれないな、なんて思います。
交換室というともう1人、隣の席のトシ子さん。独白のある言葉が個人的にとても好きです。
言葉のやり取りは少ないのですが、奥地に家族がいる同士、一緒に泣いたり動揺したりする場面が結構多い。そして存在に安心します。
博子のいる太平は恵須取町の中にあるので恵須取空襲はテルも他人事では無いのですが、お姉さんの電話が切れた時のトシ子さんの表情を正面から見た時、それはもう恐怖感がものすごく掻き立てられるんですよね……
トシ子役のりあちゃんご本人も大好きです。
面白すぎて秒で懐いた。
舞台裏のくっっだらねえ私の小ボケに付き合ってくれたり沢山お話ししてくれたり、感謝しかないです。
最後は同期組。
作中で名言はされないのですが、乙女たちは18〜24歳の女性で構成されています。
(実際に亡くなられた方々は17〜24歳だったそうです)
テルの同期は母と2人暮らしのとみ、軍人の父を持つ節子。
正直食事で隣に座るくらいしか絡みがないのですがここで沢山仲良くしてくれて……描かれるシーンが偏っていて若干友だちいない説が出そうなテルの癒しでした。本当にありがとうございました。
"同期の絆"も描かれる氷雪において、米沢のテルにとっても2人は大切な存在でした。
交換室の大切な場面は何かとこの2人が目に入るという。
薬を受け取った後、節子とは大千穐楽にして初めて偶然視線のやり取りが生まれたのですが、この時に生まれた悲しみや怖いとは違う気持ちをよく覚えています。
雪音ちゃんとはこういう感じで生まれたものがちょこちょこあったのが楽しかったです。
とみ役のさらちゃんは本当に同い年でして、共通点もあったりなかったりで稽古初期から色々お話をしました。ちなみに身長も同じらしい。
とみの滲み出る可憐さと可愛さは憧れですが、そんな子だからこそ最後の電話シーンがつらくて大好きです。
テルはどちらかというと保護者寄りの存在なので、親御さんの愛情を受ける節子・とみがちょっと羨ましかったし、幸せでいて欲しかったです。
まだまだ
智恵子の笑顔の破壊力とかママsだとか生存組のシーンだとか可愛い川田姉弟とか日の丸を背負う郁代さんの格好良さとか、足りないのでいつかどこかでお話しさせてください。
共演の皆さまにおかれましては聞かれたらド長文でお返しします(怖)
皆様との関わり合い、その日の状態、温度、音。
毎回最期に行き着く感情は少しずつ違いました。繰り返しではなく毎回が事件で、人生を感じる稽古と本番の日々。
だからなのか、私はこの作品を死ではなく、生の物語だと思っています。
なので悲しむための物語ではなく、観てくれたあなたが、社会が、未来に進むためのヒントになればいいなと思います。
でね。
まず10年同じ作品を企画し上演を続けられるというのは本当にすごいことで。
観客の皆さまの愛と作り手の想いの両方がなければ実現しません。
10年前とは情勢も変わりました。
2023年の「氷雪の門」は嫌でも今の世界を思い浮かべる作品になっていたかと思います。
作品の節目がこの情勢に重なったことにも何か意味があると思いたいです。
作品から何を受け取るかは皆様の自由。
私は良い悪いではなく、"そういう出来事"伝えようと努めたつもりです。
だからこれからはその先の話をしましょう。
何派なんて言葉で括らない、個人の考えを語り合えたら嬉しいです。
当日パンフにも書きましたが戦争番組や体験者が減っていく中で、舞台という"生"の空間でこれを伝え続ける意味を考え続けていきたいですね。
この作品が、これからまた10年20年と長く続くことを祈っています。
……………………………
改めまして、この度は舞台『氷雪の門』2023への沢山のご来場に応援、誠にありがとうございました。
そして過去、私に自身の戦争体験を語ってくれたおばあちゃんたち
きっとどこかで見守っていてくださっただろう方々
丁寧に電話交換機の解説をくださったNTT技術資料館様
飛龍伝に続き素敵な作品に呼んでくださったGフォースプロデュース様
本当にありがとうございました。
内容が内容なので心配もされましたが、実は稽古も本番も本当に楽しんでおりました。
お芝居に出会えて、この座組に出会えて私は幸せです。
今も幸せになるために生きています。
乙女たちやその家族たちのことを忘れないでいてくれたら嬉しいです。
またどこかでお会いしましょう🦦
とりあえず一旦!このためにしてた食事制限も解除して美味しいものいっぱい食べます!!!
浜田テル役 米沢のぞみ
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