講演を聞いて〜越境するBL―日本と東南アジアの事例から

Instagramでフォローしている在東京タイ王国大使館(@gotothailand.jp)の投稿で、知ったオンライン講演を聞いてみました。

講演概要(出演者など)

テーマは「越境するBL―日本と東南アジアの事例から
ということで、メインはタイ向けの講演でした。
タイ人の通訳の方と、大分大学の教授:長池一美さんが出演。
2時間の長編配信でとても勉強になりました。

(2021/02/22 アーカイブが見れるようになったのでリンク追記)

長池さんはBL文化を研究していたして著書も出している方で、講演の主は長池さんからの日本のBL文化をタイの方へ紹介する内容でした。

講演内容(ざっくり紹介)

序盤にBLの歴史を紹介してくださったのですが、
70年代からの女性文学で森茉莉さんのお話があり、この方は森鴎外さんの娘さんのようですが、このような方が起源にいらしたなんて全く知りませんでした。今度著書を読んでみようと思います。
それから雑誌June創刊、YAOIからBLという単語が出てくるまでの経緯の紹介とっても興味深かったです。

この時点ですでに1時間を経過(日本語で説明する専門的なことをタイ語で通訳していただくと、けっこう長い解説になることがわかりました)

このあとは東南アジアでのBL文化についての紹介
フィリピンでの商業誌レーベルができるほどの定着ぶりや、マレーシアでの宗教による制限内での表現方法など知らなかったことが多くもっと色々ききたかった

このあと、BLに出てくる国籍や人種のアイコンとしての表現方法についてのお話もなかなか面白かったです。
例えば、西洋人と東洋人が出てくる場合は、西洋人×東洋人のカップルになりやすいとか、アラブ系はだいたい王族や富豪で、ステータスが高くそれは性欲にも反映されていることが多いなど。
ヘタリアでも東洋人の方が可愛く描かれているということもおっしゃってました。

で、最後にタイYシリーズのお話に。
ここでLGBTQも少し絡んできました。
教授は、日本のBL世界はLGBTQの本質的な問題は透明化しているとおっしゃっていました。窮鼠はチーズの夢を見るの行定監督がインタビューを紹介して、やはり日本のBLは綺麗にロマンチックに描くことに重きを置いている傾向にあると。

対してタイYシリーズでは、カミングアウトや周りとの関係性などLGBTQとして何かメッセージがあるような表現が使われているところが日本から派生してきたBLだけど違うということをおっしゃっていました。

こんな感じで2時間あっという間でしたが、普段からBL商業誌を読んでいるような私にはとても興味深い内容でした。
後日アーカイブ配信してくれるようなので、そしたらリンク張ろうと思います。

自分が感じたこと

最後の質問コーナーで「LGBTQドラマとBLドラマは何が違いますか?」というご質問が合って、先生もそれは一言に言えないとおっしゃっていました。
このチャット中にも「BLはファンタジー」というコメントも合ったのですが、BLのファンタジー性はどういうところについて言っているのかなと。
たしかに私もファンタジーだと思うし、LGBTQとは違うのではないかと思っています。
もしLGBTQの恋愛として描くのであれば、当事者が描いた作品であった方が説得力もあり、現実的な表現になった方がいいと思います。または念密な取材を重ねて書いたものであることが望ましいと思います。
Yドラマシリーズでもよく出ますが、BLは妄想が多いので「妄想=ファンタジー」という定義であればしっくりきますね。
そう思う反面、月9のような男女恋愛ドラマでも設定がほとんど現実的でなく、「ファンタジー」だと感じることもあります。そう考えると「BLはファンタジー」というより「恋愛ドラマはファンタジー」と思うので、BLもそれに漏れずで、そりゃそうでしょ。それでいいじゃん。って思う気持ちもあります。 
そのうちBLF(BLファンタジー志向)とBLR(BLリアル志向)とかジャンル分けが発生してもカルチャーとしては面白いのではないかと思いますね。

久々にメモを取って知識を吸収できた気持ちになれたとても有意義な時間でした。