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モテアマス小説執筆途中経過2(2024/10/18)

前回までのあらすじ

モテアマスを題材にした小説を書くことになった私。ノートにアイディアを書き出しプロットを練り、まずは三幕八場の構成で書き進めることに決定。参考になる資料もある程度揃い、準備が整うやすぐに執筆を開始した。(100字)

今回は後半の方で、現在執筆中の小説を1章だけ特別に公開してます。お楽しみに。

現在の進捗(2024/10/18)

前回のnoteからおよそ1週間経過した。その間に物語の序盤から中盤、第1章〜第4章まで執筆を終わらせる。残るは第5章からラストまで。ドラマチックな展開が多いので相当体力を消耗しつつの執筆となっている。

第一幕のプロット

今回のお話のあらすじ

「一緒に暮らすってさぁ、疲れるよな。単純に。なのに、なんで俺ら、一緒に暮らそうとしてるんだろうな」

第1章の主人公ジョージのセリフ

会社員になったものの4日でドロップアウトしたぼく(ジョージ)は、オンラインサロン「シェア小町」に入り浸るようになる。そしてオフ会で知り合ったとある女性の紹介でモテアマス三軒茶屋に辿り着いた。
個性豊かすぎる住民たち、情報量の多い生活。最初は新鮮さを感じていたぼくも住み続ける中で流石に疲れ始める。
とりあえず自分も何かしなければと皿洗いや料理、ゲストの接待を頑張るも、モヤモヤは溜まる一方。「一人になりたい」が常に出てくるようになり、周りと比較してはコンプレックスを強めていく負のスパイラルに陥っていた。
そんなぼくがある時、たまたまゲストで来ていた女性・りょうさんに一目惚れをしてしまう。しかし、惚れてすぐにやらかした粗相によって彼女がモテアマスに顔を見せなくなってしまう。
いよいよモテアマスに居づらさを感じはじめるぼく。しかし、他のライフスタイルを検討したり他のシェアハウスを見学したりしてみるものの、これというものになかなか出会えない。失意の中感じたのは、モテアマスというコミュニティにどっぷり依存している自分自身だった。
そんな自分に絶望を覚える中、住人の勧めで一人飲みを始める。新宿ゴールデン街のとあるバーで飲んでいたところ、元住民を名乗る男性・ひできに声をかけられ、意気投合。
しかし、気の緩みからかとめどなく自分の悩みを話してしまうぼくは、ひできから「お前、要するに自分に自信がないんだろう」と喝破されてしまう。

果たして、ぼくはどうしたら自信を持てるようになるのか?
そもそも、自信なんか持てなくてもぼくが生きていける道はないのだろうか?

モテアマスで暮らしながら、ジョージが自分の「いきる」術を模索する物語。

「自信なんか持てないぼくたちがそれでも生きていける場所」第1章公開

   1

17:07 ジョージ・ハリセンがトークに参加しました。

カズキタ「ジョージ!」17:08
カズキタ「@ジョージ・ハリセン 長めの自己紹介おなしゃす!」17:09
ジョージ・ハリセン「ジョージです。長めの自己紹介って言われたので頑張って書きます!

24歳、ニートです。
前職が街づくり系の会社で営業職やっていたんですが4日で会社に通えなくなって、辞めてからしばらく「シェア小町」っていうオンラインサロンに入り浸ってました。小町の方でリアル交流会があったのでそれに参加した時に、いろんなコミュニティに詳しいとある女性から「モテアマスいいよ〜。きっと合うと思う〜」っていう紹介がありました。

正直今住んでいるところは家賃が高いし、仕事も辞めてしまって新しい家を探していたタイミングだったので、とりあえずTwitterでカズキタさんに連絡とって、とりあえず遊びに行くだけならと思って行ってみたら、その場で入居することが決まってしまったのでこの文章を書いています。

あだ名のジョージはたまたま本名が譲治だったのでそのままジョージになりました。あと、七三分けに髭だったのも謎に決め手だったらしいです。
ジョンとポールは既にいるらしいので丁度いいじゃん、ということで決まりました。よく分かんないですが、ジョージっていうことでよろしくお願いします。ちなみに、ビートルズはそんなに詳しくないです。

モテアマス来ていいなって思っているところは、とりあえずアホなことをいろいろやらさせてもらえるところだって思ってます。リビングのカオスっぷりは皆さんのアホやった歴史が凝縮されているところだなって思っているので、そんなところに魅力を感じたりしています。私も何か思いついたら企画するかもしれません。

最後に、絶賛恋人募集中です!
こんな子合うなとかそういうのあれば絶賛紹介してください!
よろしくお願いします!」18:20

 ぼくが初めてファッション住民LINEに流した自己紹介は、今思えばこんなオモんない文章だった。
 しばらく何のリアクションもない時間が二時間くらい続いた後で、何事もなかったかのように当時準備が進められていたコミュニティシャッフル運動会の話題にすぐに切り替わってしまった。結果的に、何も刺さらんかったけど大丈夫か? という不安だけが後味として残ってしまったが、それがぼくのモテアマスでのスタートラインだった。

 一番最初にモテアマスで割り当てられた部屋はモバイルハウスだった。本来は軽トラの荷台に乗っけて移動しながら生活するために制作された住居ではあるのだが、モテアマスのそれはただ単管パイプの足場の上に乗っかっているだけで、その場から全く微動だにしない。要するにただの狭い小屋である。濃い紫色のボディーには銀のスプレーで治安の悪そうなラクガキがいくつも施されており、極め付けには入り口の上にこれまたスプレーでご丁寧にもFxxK Off(出ていけ!)と書かれている。なぜこんな構造物が敷地の脇に無造作に置いてあるのか全くもって謎なんだが、そのカオスこそがモテアマスだとも思えた。
 人生で初めてのモバイルハウス暮らしは快適そのものだった。中は意外にも広々としており、奥に物を置けるスペースもそれなりにあったことも手伝って、捨てられない思い出やお気に入りの家財道具も含めて案外多めに荷物を持ち込むことができた。長い夏もすっかり終わって、気温が徐々に過ごしやすいレベルに下がってくれた時期だったので備え付けのマットレスと毛布一枚あれば夜は十分だった。秋のモバイルハウスは異様に過ごしやすい。その過ごしやすさたるや、逆に夏や冬はどうなんだという恐怖もまたそこはかと無しに湧いてくるレベルの快適さである。一応エアコンはあるものの、型式が古く随分年季が入っているように見えるそれは、いざ極限の暑さや寒さを迎えた時にはとてもじゃないが活躍してくれそうには思えなかった。
 モバイルハウス暮らしで良かったと思えるもう一つのことは、「隣の部屋」がないことである。
 ぼくは誰かと一緒にいると結構その人に気を遣ってしまう。これまでずっとうまく人に取り入ったり、人の顔色を伺っては相手の機嫌を損なわないよう傷つけないよう生きてきたこともあって、極度に人見知りだし、そうでなくても人前ではどうしても気持ちがピリピリしてしまう。それで、人と会った後はかなり疲弊してしまう。
 いきなりモテアマスの建物内部に住むとなったら、それはそれで地獄だったと思う。ドミトリーでも、通常の個室でも、奴隷部屋でもいいけど、隣人や部屋の同居人なんか居たら、ぼくは気遣いだけで落ち着かず、更には夜も安心して眠れないまま過ごさなければならなくなるだろう。その点、モバイルハウスは自分にとってまだ安心して一人になれる時間を与えてくれるのだった。けれども、リビングで飯を食う時と、洗濯するときと、勉強部屋でパソコン開いて何かしらをする時は、どうしても建物の中に行かないといけなくなるし、行けばほぼ確実に他の住人と顔を合わせることになる。最初のうちは若干それが嫌で、リビングに人が少ない朝を狙ってこっそり飯を食ったり、わざわざ近くのコインランドリーで洗濯してみたりもした。
 ぼくがようやく他の住人と仲良くしようとコンタクトを取り始めたのは、引っ越しが落ち着いて一週間経ってからだった。

 とりあえず暇しかないので、一日中リビングのソファーに寝っ転がってだらだらYouTubeで動画見たりネットサーフィンしたりするところから始めた。住人が見えたらとりあえず挨拶して、何か軽く話せそうなら取り留めもない会話をした。ジョージって言います、よろしくです。何食べてるんですか、うまそうっすね。今住んでるところですか? モバイルハウスっす……
 そんな会話をしながら住人を観察していると大体モテアマスの生態系がぼくの目にも徐々に見えてきた。基本夜型の人間が多いこと。三分の一がデザイナーやプログラマーなどのノマドワーカー・リモートワーカー・個人事業主で、もう三分の一はスナックのママ、シェアハウスの管理人など何かしら別でコミュニティを運営している人で、残りの三分の一が学生もしくはニート枠であること。皆で飲みに行ったりイベント開いたりといった住人が集まってはっちゃけるのは大体週末になる傾向があること、などなど。まぁ、色々傾向はあって、一言で言うと個性強めの人たちの集合体。クリエイティブな何かしらを持っているけれどもそれを絶えず持て余している人が多い、ということなのだけれど、正直ぼくなんかがモテアマスについて知ったようなことを語るのはおこがましいし、オモんないのでこれくらいにする。
 とにかく、情報量が多い。リビングやトイレ、至る所に張り紙や写真、マジックテープが貼り付けられていて、モテアマスに来て嬉しかったことや住民への感謝を綴ったハートフルな手紙が貼ってあったかと思えば、そのすぐ側に元住人が税金を滞納していた廉(かど)で送りつけられたと思しき差押状が晒されていたりもする。住人の会話も、最近行ったレイヴやフェスの話題に花を咲かせているかと思えば、別のグループではどれだけ安く行きたい海外の国に飛べるかという話をしていたり、グルメや飲み屋の話をしていたかと思った次の瞬間には下ネタ混じりでお互いの性癖を茶化しあっていたりする。
 そう、とにかく内輪ノリがえげつないのだ。モテアマスで気に入られる人は、ウザいほど他人とよく絡む人、毎時毎分毎秒が大喜利であるかのようにオモロいことを絶えず発信出来る人、皆で飲み行く時やイベントをする時はタイミングよく予定を合わせられる人、そして、しょっちゅうトラブルを起こしたり巻き込まれたりしながら、それでも謎に愛されるような強いキャラクターを持っている人。「おもんなかったら死刑」という書がリビングに吊るされていたりするが、基本的にモテアマスと言う王国ではオモんないやつに人権はないと言っても言い過ぎではない。そして、周りからこいつオモロいなと認められる人はどんどんモテアマスの中核に吸い込まれていく一方で、モテアマス独特のノリに付き合い切れない人間はどんどん輪からあぶれていく。
 ぼくも最初の頃は合わせられるだけ話を合わせてみたり、三角地帯で飲んでいる話を聞きつけては輪に混じろうとしてみたりした。よく手巻き煙草を吸う住人がいるので、その人が外に出るタイミングを見計らってご一緒して、巻いてもらった煙草を頂戴しながらタバコミュニケーションを図ろうとしてもみた。面白い返しを思いつきそうな時はファッション住民LINEに流そうとしてみた。
 それで、どうなったかというと、ぼくはとうとうモバイルハウスから一歩も出られないレベルのうつ状態を経験した。
 燃え尽きてしまった。
 何もかもに疲れ切ってしまい、布団から起き上がれなくなってしまった。
 外は木枯らしが吹きすさび、いよいよ三軒茶屋を歩く人の装いも厚いコートに身を包むような季節に突入していた。モバイルハウスの床はクソほど底冷えし、毛布三枚でも寒さを凌ぐには厳しかった。丸落としのロックを上げて表に出る時は、煙草を吸う時と、栄通りのセブンに行く時くらいだった。身体中寒イボを出しながらコンビニおにぎりとセブンのMサイズコーヒーを胃に流し込み、チェのメンソールを燻らせていると、ぼくは一体何しにここにきたのだろう、というか、ぼくは何を目指してこれから生きていったらいいのだろう、という不安の入り混じった哲学的な問いがとめどなく頭の中をぐるぐる駆け巡ってくる。だんだんダウナーな気分になって疲れてくると、またモバイルハウスに戻って布団を被る。それだけの毎日。そういやいつぞや、ここでテントを張って暮らしていたという住人のZさんが喫煙所でこんなことを言っていたっけな。
「あんまりガッツリ長居すると、ここは病むぞ」
 今のぼくは、丁度そんな状態なのだろうか。
 ある日の夜。いつものように外で煙草を吸っていると、丁度出かけるタイミングだったのかN君が扉から顔を出した。
「おぉ! ジョージじゃん!」
「……ウイッス」ぼくは力なく挨拶する。
「最近見ないから、どうかなって思ってた」
「まぁ、ぼちぼちっすよ」
「どう? モバイルハウス。寒いよね」
「寒いっすねー」
 それから一瞬沈黙があった後、N君はぼくの向かいにあるバリカーのパイプの上に座った。そして言葉を探るようにして、ぼくに提案してきた。
「奴隷部屋、さ。若干スペースあるから、俺がいない時とか、そこで寝ていいよ」
 彼なりに気を遣ってくれているのだろうけど、ここんとこダウナー気分続きなのもあって、ぼくを憐れんで言っているのかコイツはとしか受け取れなかった。別に、モバイルハウス気に入ってはいるんで、とか何とか言って丁重にお断りしようとするも、N君は引き下がらず、モテアマス暮らしに不満があるのかとか、家賃払えているのかとか、しつこいくらい色々聞いてくる。だんだんぼくも根負けして、
「正直、貯金はあと一ヶ月持つか持たないかくらいなんだ。モバイルハウスはまだ安い方だし、それに、今でさえ疲れているのに、隣に人がいる部屋で生活なんか、できっこないよ」
 とつい本音を出してしまった。N君は言った。
「じゃあ、もういっそのこと俺と一緒に奴隷になろうよ。
 カズキタさんに今の状況正直に言って、何か仕事もらって、家賃Fireするしかないよ」
 ぼくの口から大きな溜息が漏れる。確かに、モテアマスの住人の中にはカズキタさんから仕事をもらってそれを生活の糧にしている人、いわゆる「奴隷」が何人もいる。note記事の執筆、クラウドファンディングのライター、カズキタさんが取ってきたデザインの仕事の補助もしくは代行……。ただ、やるかどうかと言われると、ぼくに出来るのか正直分からなかったし、そもそもデザイナーともライターとも畑が違うぼくが上手いこと案件をこなしているイメージが湧かなかった。カズキタさんの役に立てる自信、モテアマスに貢献できる自信がなかった。
 でも、このどうしようもない現状を打破するためには、とりあえずチャレンジするより他に選択肢がないようにも思う。
「うん、そうだね、なろうか、奴隷」
 そう言葉にして自嘲気味に笑って見せる。どうせここも、いずれ追い出される運命なんだ。最後は奴隷だったんだぜ、っていつか笑い話にでもなれば、それでいいや、くらいに思っていた。
 ところがN君はそうは受け取っていなかったらしく、ぼくの言葉を聞くや否やすぐにカズキタさんとLINEでやり取りし始めた。
「とりあえず、モバイルハウス住民としてnote連載するか、長野行って大仏の運搬手伝うかだったら、どっちがいい?」
 二番目の選択肢のパンチの効き具合に思わず草が生える。一般ピーポーなら空笑いしつつどっちもヤダと言って逃げるところだろうが、こうなってはもはやぼくも一匹の窮鼠。相手が猫だろうがライオンだろうが、噛み付いてかかるしかない。
「やるよ両方」
「了解っす!」
 二つ返事というやつをヤケクソで済ませ、吸いかけの煙草を灰皿に沈めた。ラーメン食いに行こうぜ、奢るから、と言ってくれたN君の好意に甘えて、ぼくはこれから三茶の夜の街に溶けてゆく。


「思うんだけどさぁ」
 独り言でもなく、でも語りかけるでもない調子で、口にしてみる。
「一緒に暮らすってさぁ、疲れるよな。単純に。なのに、なんでぼくらはさ、一緒に暮らそうとしてるんだろうな」
 N君はガチでスルーしていたようで「え? 何?」と聞き返してくる。いや、何でもないよ、と笑いながらぼくは応えた。

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