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りんご飴と彼女

彼女は春が似合う
そう思っていた

僕が彼女に一目惚れしたのも、桜並木が満開だった頃だった
桜のピンクと彼女の肌がよく馴染んでいた事を、今でも鮮明に覚えている

出会ってから9ヶ月後に付き合いはじめた
彼女に一目惚れした時の話をすると、彼女自身春が1番好きだと、答えていた
なんとなく直感が通じ合ったようで嬉しかった

彼女と付き合いはじめて、はじめての春が終わった
夏の気配がやってくると同時に、少し寂しさも感じた
また1年後には彼女の1番似合う春がやってくる、と期待することにした

初夏を迎え僕たちは、早めの夏祭りに行く約束をした
カップルにはお約束なものだ

彼女は浴衣を着てくる、と言ってくれた
絶対かわいいだろうなぁ、と期待を胸に夏祭りの日を迎えた

案の定、彼女は可愛かった
自分が想像していたよりも、ずっとずっと

りんご飴が食べたいなぁ、とはしゃぐ彼女の横で僕は驚いていた
何がって、彼女があまりにも可愛すぎたことに
春がいいと思っていたのに、夏まで似合ってしまうことに

彼女はりんご飴を買うと、嬉しそうに食べていた
彼女は話す
「私ね、夏祭りに来たら絶対りんご飴買うんだ!
もともとりんごってさ、夏の食べ物じゃないんだよね。寒い所で作られるし、秋とか冬が旬だから。夏にあんまりりんごってたべないじゃん?
でもね、りんご飴にすると夏の食べ物になるんだよ!すごくない?飴をかけて棒に刺すだけで、こんなにも夏が似合う食べ物に変身しちゃうんだよ。
せっかく夏が似合うようにしてもらったんだし、寒い時にはない楽しみ方してあげないと、もったいないでしょ?
初詣とかの屋台ではりんご飴買わないけど、夏祭りは絶対いつも買うんだ!」

なるほど、と思ってしまった
りんご飴と彼女は同じなんだな

彼女の桜の馴染む肌には、りんご飴の赤は明るすぎたが、口紅を塗った唇にはよく馴染んでいた

たぶん僕は、こんな感じで秋も冬も、年中、彼女に絆されることになるだろう

あぁ、幸せだ

※画像はSaayaさん(Instagram @sa_386)の物を使用させていただいています。

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