nuanceヌュアンス 「botäwnie 〜名古屋篇〜」ライブレポート
ぐっと寒さが増した2020年12月12日の名古屋。コロナ禍で遠ざかっていた、ひさしぶりのライブハウス。nuance(ヌュアンス)のライブツアー名古屋公演は登場SEの"おかえり、ただいま"の声にあたたかく迎えられて始まった。
ステージに立つのはファンにはおなじみ、信頼のバンドメンバー。そして真白い衣装をまとったヌュアンスのメンバーが天使のように舞い降りる。
椅子をつかった独特のフォーメーションは「ピオニー」。ヌュアンスを力付ける歌詞をヌュアンスが歌うことで曲の強度が増す。みおちゃんのロングトーンに胸が熱くなる。
綿菓子みたいな声色で歌われる「ゆれてみて」。やわらかな曲にトランペットの生音が重なり、フロアをメロウに染め上げる。
間を開けずに続くドラムのリズムに合わせて心拍数が上がる。定番曲「セツナシンドローム」でヌュアンス色がぐっと濃くなる。演奏するバンドメンバーの確信的な微笑みと交わされる視線。あぁもうカッコいいな、ヌュアンスの音楽は。
高揚を隠しきれないミサキサンの飛び跳ねる声に痺れる「ハーバームーン」も圧倒的に強い。
純白をひるがえし、衣装の裏の鮮やかな深紅をあらわに演じられる「ルカルカ」にドキッとさせられ、一転彩度を落とした曲調の「サーカスの来ない街」に聴き入る。緩急自在なセットリストに鼓動を掌握されるようだ。
それぞれの色を表情豊かにグラデーションしながら、異なる色相の4人の声がいつにも増してくっきりと際立つ。
ステージが暗転してわかちゃんによる幕間の一人芝居が始まる。キュートでコミカルで真面目でやさしくて。わかちゃんの人柄を映した内容にヌュアンスにわかちゃんがいてくれてよかったという想いを新たにする。
再び照らし出されたステージ。流れ出したのはみんな大好き「シャララシャララ」だ。予想外の選曲にこんなに聴きたい曲やってもらっていいんですか!?と戸惑いすら覚える。この上なく楽しそうな珠理ちゃんにつられて、こちらも笑顔にならざるを得ない。
ひたひたに漲った生命力がこぼれ、はじける「初恋ペダル」。"いつまでも"ときらめきをほとばしらせて踊る姿が、視神経焼き切れるかと思うくらい眩しくてかわいい。
「sekisyo」ではピュアで一途な恋心がヌュアンスにしかできない絶妙なバランスで表現される。熱の入った鬼気迫るパフォーマンスに息を忘れる。
MCをはさみ「i=envY」の曲振りにフロアがゆれる。「I know power」へと力強く続き、たたみかける「タイムマジックロンリー」「ミライサーカス」の極彩色の盛り上がり。
次の曲は漆黒の「雨粒」。高まりきった気持ちをこの曲に落とし込めるのがヌュアンスのヌュアンスたる所以だと思わされる。
最後は「wish」。燃える夕日のように情熱的で、それでいて宵闇に慰められるようなやさしいダンスに溢れた感情を包み込まれる。
音楽性の高さ、演劇の要素、エモーショナルで優美なダンス、清楚で上品なイノセンス、大人の女性の強かな魅力、今を生きる女の子の生の感情。ヌュアンスを形作る、よさ特盛全部のせなライブにすっかり満たされる。
振り返ってみるとニューアルバムからの新曲は2曲だけで、それでも私はハッキリと新しいヌュアンスを見た。
今というこの瞬間は誰にとってもいちばん真新しく、同時に今までの経験の積み重なった時間でもある。ヌュアンスはその瞬間を最高のかたちで見せてくれた。
ままならない日々のなかで、きっとこれからも更新される最高の瞬間に立ち会える日を、私はワクワクしながらまってる。