見出し画像

情報の受け手に寄り添った表現を考える/クチイマスミ(CLARION Design Studio) #ノンデザ25周年

『ノンデザイナーズ・デザインブック』25周年記念、特典PDF「Missing Pages 2023」からの抜粋です。

特典PDF「Missing Pages 2023」のpp. 116-119に掲載しています。


食品の開封後の保存方法を間違えたことはありませんか?

食品を開封後、間違って保存していたという経験はありませんか? 私は開封後の保存方法の記載を見落として、何度も食べ物を無駄にしてしまったことがあります。

一度に食べ切らない限り、開封後の保存方法は消費者みんなに関係してくることですよね。開封後の保存方法の表示がもっとわかりやすくなればいいのに…と常々感じていました。

そこで、「保存方法の表記」が、どのようにわかりにくいのか、また、どうすれば情報の受け手に親切なものになるのかを考えてみました。

提案までの手順

食品表示法を理解したうえで、私自身を含む消費者の行動と表示方法の関係を分析し、情報の受け手の視点での親切な表示について私なりに考えてみました。

Step 1 | 「なぜ間違えてしまったのか」を分析・考察してみる

食品表示法での保存方法の記載

まずは食品表示法でどのように表示が義務付けられているか見てみましょう。

  • 未開封時:「一括表示」に記載することが決められている(2023年3月現在)

  • 開封後:記載場所は決められていないため、記載場所が商品によって異なる

分析結果からの考察

現在の表示方法を見つめてみると、以下のようなことが家庭内で起こっているのではないかと考えました。

  • 一括表示の保存方法だけを確認して開封後も保存してしまっている

  • 開封後の保存方法も探したけれど見つけきれていなかった

  • 別々に記載してあることを知らなかった

Step 2 | 他の人は正しく情報が受け取れているのか調べる

わかりにくいと感じているのは私だけなのか、SNSの検索機能を使って同じような投稿をしている人がいないか調べてみました。

検索には以下のようなワードを使用しました。

その結果、わかりにくいと感じている人や、同じように間違えて保存してしまっていたという人がたくさんいることがわかりました。

Step 3 | 情報の受け手を見つめて目標を設定する

食品の場合は日本で生活しているすべての人が消費者になり、年齢・見え方の特性・国籍などもさまざまです。情報の受け手とはどんな人なのかを見つめ、以下のように目標を設定しました。

  • 勘違いが起こらない表現にすること

  • 短時間で正しく情報が受け取れること

  • 文字を読むのが難しい方にも配慮すること

Step 4 | 私が考える親切な表示を提案

ラベルのサイズや情報量をなるべく変えずに、どのような順番・表示であったらより多くの人に親切なものになるのかを考えてみました。

マークは洗濯表示と同様に真ん中に保存時の温度を表示すると、生活に馴染みやすいものになると考えました。このマークの表示場所が決まっているとより親切ですよね。

情報を受け取る人が誰なのか、自分がその情報を受け取る立場だったら何が知りたいのかをしっかり見つめることで、思いやりのあるアイデアがでてきます。自分にとってあたりまえになってしまっている身近なものも、改めて見つめ直してみると改善できるポイントを思いつくでしょう。

デザインとは、色や形、レイアウトのことだけではありません。その制作物を手にする人、利用する人に役立つことや行動を変えることがゴールです。依頼された案件だけでなく、デザインの視野を広げていきましょう!


クチイマスミ

CLARION Design Studio

メディア・ユニバーサルデザイン ディレクター(MUD)
建築系デザイン学科を卒業後、まちづくりの事務所に勤務。担当地区に配布するチラシを作り、わかりやすいと喜んでもらえるのが嬉しく、本格的にグラフィックデザインの道に進むことを決意しデザイン事務所に転職。

見え方に特性をもっている方に配慮したカラーユニバーサルデザインを取り入れた制作や、ユーザーの目線で提案したり噛み砕いて表現するのが得意。現在は個人で活動しています。