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食べ放題に踊る心

私は牡蠣が好きだ。
コロナ前は兵庫県の牡蠣の産地で
毎年開かれるの牡蠣祭りを楽しみに
家族で訪れていたし、
スーパーで牡蠣が安い時は即購入し牡蠣鍋一択だった。
広島県も何回も行っているし、
都会のオイスターバーにも足を運ぶ人だったが
最近はあまり食べる機会がなくなっていた。

年始に、親からの提案で
広島で閉店するホテルがあり、
そこで牡蠣のフルコースが食べられるからと
旅行のチラシを見せてきた。
最初は行こう行こうとなっていたが、
結局広島まで行かずとも、
兵庫で食べれば良いのではとなり、
赤穂に出かけた。

せっかくならと
焼き牡蠣食べ放題のコースにしたが、
やはり全く食べられない。想定通りである。
もう、食べ放題は要らないんよ。
もう無理な年なんやでと人生何度目かの自覚。

食べ放題とは別でついてる牡蠣御膳と
最初についてくる15個程度の牡蠣のみで
充分お腹がいっぱい。
段々と焼いて食べることが試練と化してくる。
もう牡蠣の美味しさがわからないし
牡蠣のありがたみが感じられなくなっていた。

焼き牡蠣は自分たちで焼くのだが
慣れないうちはかなり焼きすぎてしまい、
縮んでしまったり硬くなったりした。
うまく焼けるようになったのは、
もうお腹がいっぱいの終盤も終盤で
きれいに焼けたのに苦しくて誰も箸をつけない。

やはり牡蠣祭りなどで、少しずつ
ちょこちょこといろんな味付け、
いろんな調理法で食べるのが
1番美味しいのでは…と思いながら
目の前の牡蠣を焼く。
美味しく味わってあげられなかった牡蠣たちよ、ごめん。

もう立派に量より質な年齢になっている。
良いものを美味しく、
少しずつ食べるのが1番幸せだと分かっている。
もう食べ放題に踊らされるのはやめようと
毎度思いつつ、
食べ放題やビュッフェなどの言葉に
テンションが上がり
食べられないことをわかっているのに、
そちらに行ってしまう。
哀れで学習しない私の心はいつまでも
食べ放題の言葉に踊る子どものままだ。
早く大人になりたいよ。

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