その買収大丈夫? 東証の新ルール、少数株主保護に一石:日本経済新聞

その買収大丈夫? 東証の新ルール、少数株主保護に一石:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD246SQ0U5A120C2000000/


この日経の記事、超面白いです。
有料にはなりますが、具体的な社名を出して問題点を指摘しております。
特に金融機関にお勤めの方はおすすめです。

中身はぜひご覧いただくとして、そもそも安すぎるMBOはなにが問題なのか?という点を、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

そもそもMBOとはなんぞや?というところから確認しましょう。

MBOとは、Management Buy Out
の頭文字を取ったものになります。

そのまんまですが、
Management=マネジメント=経営陣が、
Buy Out=バイアウト=買収する
ことを言います。

もっと平たく、現実的な言い方をすると、
「創業家が上場するコストを鑑み、株を市場から買い戻し、非公開化(上場廃止)する」
というアクションになります。

MBOの中にも大きく2パターンありまして、
ひとつめは経営者(=創業家)のみで買収するケース
ふたつめは経営者(=創業家)と、PEファンドが組んで買収するケース
のどちらかに当てはまります。

ひとつめのケースは、名実ともに非上場オーナー企業に戻ることになります。おそらくこのケースだと、上場の大変さを痛感したうえでの判断なので、再上場してくることはほとんど考えられないかと思います。

ふたつめのケースは、多くの場合、4〜5年後に再上場してくるケースもあります。PEファンドは投資家からお金を預かっているため、数年で投資して数年で回収し、投資家に返さなければいけないからです。アクティビストファンドからのプレッシャーを受けて非公開化するケースはこちらが多い印象です。


さて、ここで問題になってくるのは、日経の記事にもあるように、MBOする際の株の買い取り価格です。

創業家としては、(当然かもしれませんが)1円でも安く株を買いたい(買い戻したい)わけです。
そうすると、考えられる行動としては、

・わざと業績を落とし、株価を下げる
・株価の算定を恣意的に安くする

といったことになります。

創業家(=経営陣)は究極のインサイダーでもあるので、外野から見ると上記のような疑念はついて回ります。

一応、MBOすることを決めて話しを進めるときには、株を買い取る予定の人(=創業家)を除き、社外取締役を中心とした"特別委員会"なるものを立ち上げ、「株主のためにはいくらの株価が適正か」といっま議論をし、創業家と特別委員会で価格の交渉を行います。

ただ、社外取締役のメンバーも、何年も選任されており、また会社から報酬をもらっていた立場でもあるので、果たして本当に株主目線で価格交渉ができるのか?という点は疑念が拭えないという指摘もあります。

そのため、今年の春には東証から

「創業家と特別委員会で、どんなやり取りしたかもっと具体的に書いてよ〜」

「価格の算出も、結果だけ書くんじゃなくてもっと具体的に書いてよ〜」

というルールを導入するとのことです。


2025年に入ってMBOが急増しておりますが、その背景には
「春には新ルールになってしまう!その前にMBOやっとこ!」
という動機にもなっているかと考えられます。

ルールが明文化されると、MBOを控える企業も出てくるのでは、という可能性も考えられます。


ただ、結論としては、これまでお手盛りの価格でMBOできていたのが、今後は難しく、ちゃんと適正な株価で買い取らないといけなくなるので、少数株主にとってはプラスの材料になります。

そもそも創業家が経営していて株価が上がらないのであれば、昨今では同意なきTOBの対象にもなってきます。

ですので、東証に上場している企業は益々株主からの規律が働くことになり、真剣勝負の場に近づきつつありますので、日本の経済にとってはプラスでしょう。

最後に余談ですが、アメリカでは安い価格でMBOすることを、「また上場企業が盗まれた」という言い方をするそうです。
日本的な感覚だと、企業は作った人のモノ、という意識があるので、創業家が買い戻すならまあまあ、といった感覚があると思いますが、アメリカではMBOもれっきとした買収提案という意識があるため、上記のような表現をするようです。

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