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反シンギュラリティ論者、AIよりIA、「AIで仕事は増える」論者として受けたインタビューから その1

 日本経済新聞本紙 nikkei.com で野村直之で検索していただくと同姓同名の弁護士(高名な方です)を除いて7件ヒットします。うち、西條編集委員のこの記事では、「AI脅威論」のオピニオンリーダーが米マサチューセッツ工科大のエリック・ブリニョルフソン教授と対置して、私・野村直之がAI道具論の代表として取り上げられています:

“AIは人間にとって代わるほど賢くないという意見である。AI技術の専門企業、メタデータ(東京・文京)の野村直之社長がこちらの立場の論客だ。長年AIやアルゴリズム研究に携わった知見から、「人とAIの能力には絶望的なまでの格差がある」といい、機械はあくまで人の補助役と位置づける。”

 著作や講演では、一定時間間隔で桁上がりする指数関数の成長というのはグラフの垂直上昇も同然。核弾頭内の連鎖反応やねずみ講と同じで、短期間でリソースを食い尽くして終わると主張しています。一時のブームで(ブーム時には基礎研究による飛躍的進歩が停滞するとの観察もありますが)可能なのはせいぜい加速度的な成長であり、通常は1次関数的成長と時に人間の天才による断層的進化があるもの。そもそも知識の構造が明確には定式化できず知識量などを適切に計測する方法もない(何百種もの素粒子の理論がクォークで整理されたように知識が深まると情報量は減ったりもします)状況で、人類の知識の総量(隣人どうしどの程度ダブった知識もっているのか?排他的な科学知識のことを言っているのか不明)などという曖昧で非科学的な計量を持ち出されても、科学的な議論などできません。次の記事でいえば、インタビュワーの吉成さんが控えめながらチョムスキーに軍配あげているように、天才科学者チョムスキーが、技術者(PhD取得できず)のカーツワイル氏に圧勝しています。

 昨今のAIについて言うなら、同じ条件で正解が多数、ゼロ、あるいは1つだけ示された時に、広大な常識と、オープンな物理世界、人間世界についての構造的理解から、何千、何万の新規事例について類推できてしまう(学習せずに)人間の頭脳には、まったくAIは追い付けていない。少しでもそれに迫ろうと基礎研究は試行錯誤しているが、ロードマップが描けるような成功の見込みは存在していません。一方、道具としてのAIは、暗黙知をキャプチャーできるようになったので、正解作りの苦労をいとわなければ、従来にない広大なITの応用が拓けました。不毛な単純作業に2,3割もの時間を費やして一生を終える不幸な人間を減らす素晴らしい福音です。

 「その1」ということで、あまりアクセスされない下記サイト(最近親会社との争いで社長が追放されたA社です)が丁寧にインタビュー記事を書いてくれていますので、上記の補足として少々引用します。

冒頭、高2、17歳のときにフジテレビのクイズグランプリで準優勝したとき「科学の100」に正答し、同級生にからかわれたのが、知識研究やAI研究に身を投じるきっかけとなったことが書かれています。高2の私が投げかけた疑問に、カーツワイル氏は全く答えることができていません。ちなみに、IBMのワトソンがこの出題に「モル」と正答できるのは、膨大なテキスト中で近くに出てくる言葉どうしのランキングで、「アボカド数」と「モル」が圧倒的に統計頻度が高いからそう回答しているだけです。

 次に、第3次AIブームのもう1つの立役者、深層学習の華々しいデビューを支えたイメージネットのベースとなったWordNetに私が貢献したことが記されています。他、40年以上前のネオコグニトロン(福島邦彦博士)がCNNそっくりだったこと、それ以来の地道なニューラルネットワーク研究と、計算機が6~8桁も早くなって実用化したこと(理論的にそれは予測できませんでした)、などが示されます。仕様の書けない暗黙知、技能の世界、小さな子供ができることにITが切り込めるようになって、めでたい!と。

 以下、日経本紙の上記記事では説明不足な内容がかなり良くまとめられています。是非お読みください。おまけに、最初の写真より、2冊の著書を抱えた笑顔の最後の写真のほうがずっと良いです。御覧いただけたら幸いです。








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