2019 F1 Rd.14 イタリアGP 供養記事

残念ながら当然、というボツ記事の供養のため晒します。

面白くない。
焦点があやふや。
切り口が鋭くない。

アレですね。編集者の有り難さが凄くわかります。
指摘されて「ああ、そうだよな」と納得。
精進しまっす!

 F1はイタリアのモンツァ・サーキットに舞台を移し、最速360km/hの超高速バトルに挑む。前戦はフェラーリのシャルル・ルクレールが念願の自身初優勝、チームも今季初優勝を手にした。ストレートスピードのフェラーリ、完成度のメルセデス、前戦でピークパワーの高さを見せたルノー。そして満を持して全マシンにスペック4を投入するホンダ。パワーユニット(PU)メーカーの思惑が交錯するスピード勝負のイタリアGP、その勝負の行方は…

 ここ数戦、予選でスリップストリームの奪い合いにより大渋滞が発生する問題が頻発。今戦F3予選でも同様の問題が起き、30台中20台がペナルティを受けた。FIA(国際自動車連盟)は「コース外の走行、および極端なスロー走行にはルールを厳密に適応する」と発表した。

 スリップストリームは前に走るマシンを利用して空気抵抗を減らし、ストレートスピードを稼ぐ古典的な戦略だ。モンツァは4本の長いストレートを擁し、そこが攻略の鍵になる。計算ではスリップストリームを使うことで0.2秒タイムを短縮できる。これが「前代未聞の予選」に繋がることとなる。

 予選Q1から波乱が起きる。残り5分で赤旗中断。セッション再開後すぐ、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが「パワーが無くなった」とスローダウン。ホンダF1のテクニカルマネージャー田辺豊治氏は「タイアが激しく空転し、エンジン回転が上がりプロテクションモードに入った為、走行中にパワーを落とすことになった」とコメント。フェルスタッペンはまさかのノータイムでQ1脱落。

 予選Q2から問題が顕著になってくる。2回目のアタックで大渋滞が発生し、タイムを伸ばせないドライバーが続出。好調だったトロロッソ・ホンダの2台もここで姿を消した。

 予選Q3。1回目のアタックはルクレールがトップに立つが、アルファロメオのキミ・ライコネンがパラボリカでクラッシュし、赤旗中断。そして奇妙な光景を目にすることとなる。

  セッションは残り6分35秒から再開されるが、全車ピットで待機。唯一ホンダ勢でQ3に進出したレッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンはいまだノータイム。時間は刻々と過ぎていくが、どのマシンもピットを後にする気配が全く無い。残り2分となり全車が一斉にコースイン。だがスリップストリームの奪い合いで超低速の大渋滞。決勝のフォーメーションラップよりも遅く感じるほどの奇妙な光景だ。

 残り時間は数秒、ようやくスピードを上げ始めメインストレートに戻ってきたマシンに提示されたのはなんとチェッカーフラッグ。その前にフィニッシュラインを通過したのはルクレールとマクラーレン・ルノーのカルロス・サインツだけ。残り7台は2回目のアタックをすることなく、時間切れで予選を終えてしまった。アルボンもノータイムで終えてしまう。

 この出来事に多くのF1ファンや関係者は呆れ、SNSでは怒りの声が数多くあがった。筆者も状況を瞬時に飲み込めなかった。それほどにお粗末で恥ずべき結果だったと言わざるを得ない。

 FIAは7台に対してペナルティ無しの裁定を下した。予選前の「ルールを厳密に適応する」という声明は何だったのか。不可解な裁定は過去にもいくつもあり、有名なのは1989年と1990年鈴鹿における「セナ・プロストの激突」だ。しかし今回は事前の声明があったにもかかわらず、それを自ら放棄した。何のための声明だったのか。FIAの姿勢に強い憤りを覚える。

 モンツァにおいてスリップストリームは重要だ。しかし集団でのタイムアタックは非常に危険である。超低速で走行しているためタイヤやブレーキの温度も低く、正常に作動する保証もない。この中で誰かがミスをした場合、大事故に繋がることは明白だ。集団で高速域に入ったが故に起こったのが、先日のF2でのアントワヌ・ユベール選手の死亡事故だ。

 またドライバーは前後にアタック中の他車がいると多少なりとも重圧を感じる。0.2秒のためにそこまで高いリスクを払う必要があるのか。メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは「全員がマヌケに見える」と批判している。チームも予選戦略を変えなければ、大事故は必ず起こるだろう。本当にユベール選手に敬意を払うならば、あまりにも大きなリスクは絶対に避けるべきだ。安全性は担保されなければならない。スポーツマンシップからかけ離れた、非常に愚かで嘆かわしい前代未聞の予選となった。

 一夜明け決勝。ポールポジションのルクレールが好スタートを見せ、トップをキープ。最後方ではフェルスタッペンが追突。マシンにダメージを負いすぐさまピットイン。フロントウィングを交換、タイヤを新品のソフトに履き替えるが40秒近いタイムを失う。

 最後尾まで落ちたフェルスタッペンは序盤にファステストラップを記録し必死の猛追を見せる。トップ集団に匹敵するラップを刻み続けて後方集団をあっという間にパス、25周目には10番手まで一気に駆け上る。1周で2秒近くタイムを稼ぎ、レッドブル・ホンダの力強さ、フェルスタッペンの速さを存分に見せつけた。

 26周目にアルボンがピットイン、コース外走行ペナルティの5秒も消化し、ミディアムタイヤでコースに復帰。28周目にはトロロッソ・ホンダのダニール・クビアトがタイヤを交換しピットアウトするが、直後にオイル漏れでリタイアを喫する。好位置にいただけに残念な結果となった。

 トップ争いは終盤まで激しい競り合いが続き、ルクレールが逃げ切り2連勝。チーム、ティフォシに「フェラーリ9年ぶりの母国優勝」を捧げた。

 ホンダ勢はレッドブルのアルボンが6位、フェルスタッペンは8位で入賞。トロロッソのピエール・ガスリーは11位と入賞圏内に手が届かなかった。タラレバになるが、フェルスタッペンは接触がなければルノー2台の前でフィニッシュできた素晴らしい追い上げを見せた。アルボンも5秒ペナルティがなければルノーのニコ・ヒュルケンベルグを上回っていた。しかしF1参戦14戦目、レッドブル移籍2戦目と考えれば十二分に役割を果たした。ガスリーも51周目に自己ファステストラップを叩き出し、6周目のコースオフさえ無ければ入賞も見えていた。クビアトのオイル漏れはPUと車体を調べ上げ対策する必要がある。

 レッドブルとトロロッソともに苦手なコースとは言え、充分に走ることができた。個人ファステストラップはルノー勢よりレッドブルの方が速く、優勝のルクレールとフェルスタッペンとの差はわずか0.134秒。ホンダPU・スペック4は確実に、大きく進歩している。次戦以降はホンダ勢が得意とする中速サーキットが続く。ホンダは今戦で得た多くのデータを持ち帰り、次戦シンガポールGPまで課題を検証し、解決して臨みたいところだ。

 そしてモンツァ以上に熱い聖地・鈴鹿では「ホンダF1、27年ぶりの母国優勝」と、クリーンで紳士的な予選が行われることを強く願ってやまない。