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死刑を望む声は治安の良化に貢献するのか

はじめに

どうも。
のむらです。

最近、特に性加害事件の被疑者に対して「死刑」を望む声が強くなってきたと感じる。

とある事件に対するTwitter(現X)ユーザーの投稿を幾つか無作為に引用する。

児童に対する性的暴行事件で、今、加害者は被疑者の段階だ。
大変痛ましい事件だし、被疑者が起訴され、刑事裁判になったら非常に重い量刑を与えられるべきだと私も思う。

ただし、死刑の基準をいわゆる「永山基準」から大きく引き下げた際に、私が大きく懸念することがある。

希死願望を持った無敵の人と死刑制度

希死願望を持った、ネットスラングで言うところの「無敵の人」の層による犯罪が増えるのではないか。
その層は目標を達成できたら、希死願望を国家の運営として叶えることができる。
「どうせ死にたいし、大きな罪を犯したら国家が、民衆の期待に応えて殺してくれる」という状況を生んでしまうのは、その犯罪者の願望を叶えてしまうのではないかという危惧をしている。
またその思想が浸透した時に、今よりも治安の良化につながるのかと自分自身に問うた場合、はっきりと肯定できない自分がいる。

ぶっちゃけると、死にたがりのレイプ魔にとっては凄く都合がいいのだ。
やることはやった、あとは正々堂々と殺してくれる。
こういう人が増えた世の中に、治安の良化を探すのは難しいと感じる。

日本以外の死刑を廃した諸外国のデータによると、殺人事件に限れば大きなデータの変動はなかったようだ。
また日本でも度々大量殺人事件は起きてはいるが、件数自体は昭和30年代をピークに減少傾向にある。

この記事はどちらかというと死刑廃止の色合いが強い。

私は死刑存続派を望む日本国民の一人だが、数々の冤罪事件が起きたことに対する操作のあり方、また時勢の移り変わりから「永山基準」は変えるべきだと考える。

昭和30年代、戦後20年の日本はまだまだ未熟で戦後復興中の国であって、落ちこぼれた人たちが今よりも人口比で非常に多く、教育環境や貧困問題ももあるが、希死願望を持った無敵の人の多さが治安の悪い時代を作ったのだろう。
つまり、「どうせ死にたいし、大きな罪を犯したら国家が、民衆の期待に応えて殺してくれる」という時代だったのかもしれない。

鶏と卵論になるが、犯罪を犯したら死刑になるのか、死刑を望んで犯罪を犯すのか。
どちらも大差はないと私は考える。
「自分の欲望や願いを満たせるのなら死んだっていい」ということには変わりないのだから。

性犯罪者に去勢を施しても再犯する人はいる

この記事では性犯罪者に去勢を行っている国々のデータが示されている。

アメリカ合衆国 テキサス州

この服役囚の男性は、40人以上の少年に性的暴行を加えていて、懲役15年の判決が出されていた。自ら外科的手術を希望したという。

テキサス州では、去勢手術の州法ができたのは1997年。17歳未満の子どもに対する性犯罪を行った者に対して、本人が希望すれば、去勢手術を行えることになった。のちに大統領となるブッシュ知事による州法制定だった。精神科医などによるカウンセリングを受けた後で、本人の自発的な意思であることが書面によって確認されるという条件つきである。

手術を受けたと報じられた男性の場合、服役しながら、すでに男性ホルモンを抑えるための薬物療法を受けていたが、その効果をより確実にするために、自ら外科的手術も希望したという。

米国では去勢、韓国では監視…性犯罪者とどう共存するべきか? 鈴木伸元

アメリカ合衆国 カリフォルニア州

1996年に州法を制定したカリフォルニア州では、13歳未満の子どもを対象とした性犯罪の加害者に対して化学的去勢が行われている。初犯の場合は、本人の希望を聞くことになっているが、再犯で捕まった場合には、強制的に行うとしている。

米国では去勢、韓国では監視…性犯罪者とどう共存するべきか? 鈴木伸元

アメリカ合衆国 ルイジアナ州

ルイジアナ州では、13歳未満の子どもを対象とした性犯罪や、大人が対象の性犯罪でも再犯の場合は、強制的に化学的去勢が行われる。従わない場合は、仮出所や保護観察とはならず、刑務所にとどまり続けることになる。

米国では去勢、韓国では監視…性犯罪者とどう共存するべきか? 鈴木伸元

またかなり古いデータになるがこのような記述もある。

欧米の多くの研究では、効果が立証されているとしている。1980年代のドイツの研究では、外科的去勢を受けた場合の再犯率は3%だった。一方、受けなかった場合は、46%にのぼったとされている。

化学的去勢の場合はどうだろうか。カウンセリングなどの心理的アプローチに加えて、化学的去勢を行った場合、再犯率は15%にとどまったが、心理的アプローチだけだった場合は、再犯率は68%にのぼったという研究データもある。

米国では去勢、韓国では監視…性犯罪者とどう共存するべきか? 鈴木伸元

1980年のドイツ、おそらく西ドイツを指すのだろうが、外科的去勢を受けた犯罪者でも3%は再犯する。
科学的去勢を行った場合は再犯率は15%、心理的アプローチだけだった場合は再犯率68%に上っている。

韓国の場合

性犯罪の前科がある者に対するGPS監視だ。刑務所から出所すると、足にリング状の位置情報を発信する機器を取りつけることが求められる。

装着の必要性については、裁判所が判断を行い、期間は最長で30年に及ぶ。装着した性犯罪の前科がある者の位置情報は、全て中央管制センターで把握されている。

監視する側からすれば、対象者がどこにいるかを把握できるという利点がある一方、監視される側には「心理的な圧力」が働き、再犯防止につながるというのが導入の基本的な考え方である。
(中略)
さらに2011年には、性犯罪者に対する薬物治療を義務づける法律も施行された。GPS監視と同じように、検察官からの請求を受けて、裁判所が必要性の有無を判断する。報道によれば「人権侵害ではないか」という批判も起こったようだが、認知行動療法などの再犯防止策と併用する形で、法律は施行される運びとなった。

薬物治療の開始と前後して、2010年には性犯罪の前歴がある者の身元情報の公開も徹底された。19歳未満を対象とした性犯罪の加害者で、特に再犯の危険性が高いと判断された場合は、顔写真や住所などがインターネット上に公開される。GPS監視とともに、国民全体で「監視」しようというのだ。

米国では去勢、韓国では監視…性犯罪者とどう共存するべきか? 鈴木伸元

韓国の運用はまだ始まったばかりであるのか、再犯率のデータの記載はなかった。
ただしインターネット上で身元情報の公開がなされているので、社会的には刑罰以上に厳しい生活を一生涯送ることになるのだろう。
その中から「希死願望を持った無敵の人」生まれてもおかしくはない。

実際に韓国の男性自殺死亡率は、日本人のそれの1.5倍ほどになる。

死刑を望む私刑の声は正しいのか

今の所、私には性犯罪者をどう処罰するのが一番なのか、わかりかねる。
厳罰化や去勢などは効果がありそうだが、それは再犯に限った話であり、根本的な解決にはならない。
また男性であるという理由だけで、何らかの処置をされるのは非常に重大な人道的な問題を抱えている。

厳罰化を死刑まで引き上げたら「希死願望を持った無敵の人」がどのような行動に移るのかもわからない。

また冤罪事件に巻き込まれた場合、どのようなことが起きるのか。
日本の警察・検察の調査能力は高いが、それでも冤罪は発生する。
死刑が執行された後に冤罪がわかっても、人の命は戻らない。
せいぜい、法務大臣が更迭されるくらいだろう。

死刑を望む私刑の声が司法に影響し、法治国家が情治国家となったら、一体何人が謂れなき罪に問われるのだろうか。

まずは、一息しよう

今、私は謂われないことで「性暴力加害者だ」と喧伝されたことに対する裁判の原告である。
5年前には想像もできなかった立場にいる。

アダルトビデオについて私見を述べただけで、性暴力加害者だと言われる。
合法なアダルトビデオを見ているだけで、性暴力加害者だと言われる。
私と代理人弁護士と二人三脚で、戦っている。
丸投げではなく、自分がやるべき業務ではない仕事をこなし、戦っている。

たった数十字だけで、刑事訴訟が起き、民事訴訟を起こしている。
実名を出し、顔を晒してSNSをやっているだけなのに、なぜ、あたかも違法行為を犯していると言われなければならないのだ。

話を元に戻そう。
冒頭の事件は、あくまでも被疑者の状態である。
警察から検察に事件が移送され、検察が起訴か不起訴かを判断する。
検察が起訴の判断をして、初めて地方裁判所での審議が始まる。この時点では被告となる。
この時点でも、被疑者→被告が事件の犯人と決まってはいないのである。
あくまでも最も犯人と思わしい人物であるに過ぎない。

低年齢の子どもに対する性暴力事件は、子どもの人生にも大きな影響を及ぼす。
一般的な感性を持っていれば、それが如何に許されざることかは、容易に想像がつく。

ただ、書き込む前に一息しよう。
その言葉が適切かどうか、冷静になって考えよう。
気持ちはわかる。
だが、捜査機関と司法を信用しよう。
不満はあるかも知れないが、法治国家の日本国に生きる以上、被疑者の処分を下せるのは捜査機関と司法だけだ。
私刑の言葉はなんの意味も成さない。

可能性は低いかも知れないが、冤罪の可能性もある。
31年前の松本サリン事件を思い返すと良い。
あのときはまさにメディアスクラムで、無実の人を犯人呼ばわりした。
そのことを教訓にしなければいけないのが、今を生きる我々である。

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野村和司
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