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From Nom 21.07.10         超話題のホンダ・GB350に乗ってみた

今年3月に発表され、4月22日から発売開始したホンダ・GB350(バリエーションモデルのGB350Sは7月15日発売)が絶好調で売れているようです。

シリーズ合計4500台の販売計画台数を発売前にすでに達成したとか、いま注文しても納車は来年だとか、なんだかその盛り上がりようは半端じゃありません。

ちょうど、ホンダ車の販売会社であるHMJ(ホンダモーターサイクルジャパン)の広報担当者の方が「今年は新車もたくさん出ているので、たまには広報車に乗ってください」とおっしゃってくれたので、一度乗ってみようと借用をお願いしました。

お願いしたのが6月の上旬でしたが、さすがの人気モデルとあってお借りできたのは6月の最終週。まさに梅雨の真っただ中で、日本各地で豪雨による被害が報じられている頃でした。

対抗ロイヤルエンフィールドで企画されたバイク

数年前、ホンダの幹部の方から「世界で一番売れているFUNモデル(ホンダでは趣味領域のバイクをそう呼んでいます)は、インドのロイヤルエンフィールド。これの対抗馬を作らないといけないんだよ」とお聞きしました。

今はずいぶん洗練されたデザインのモデルもラインナップしていますが、当時のボクのロイヤルエンフィールドに対するイメージは、古臭いスタイルでとても振動の多いバイク、でした。

かつてはイギリスのメーカーだったロイヤルエンフィールドですが、1960年代にはインドで生産されるようになり、いまはインドの自動車会社であるアイシャーグループの一員となっています。

すごいのはその販売台数で、現在は単気筒エンジンを採用する350、400、500㏄モデルと2気筒エンジンの650で展開していますが、インド国内は350がメインでシリーズ60万台。売れ筋のクラシック350だけで40万台を販売しているといいます。

もちろん、スクーターやビジネスモデルを入れたらホンダをはじめとした日本メーカーの販売台数のほうが圧倒的に多いのですが(たとえばホンダは、昨年度実績で1500万台超を販売しています)、趣味領域のバイクに限ればロイヤルエンフィールドが世界ナンバー1。多くの人が知るハーレーダビッドソンでさえ20数万台ですから、その驚異的な販売台数がお分かりでしょう。

目標5万台、デビューイヤーは堅調な販売状況

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インドではハイネスCB350という名称で、2020年秋から販売が開始されたこのモデルは、ホンダ関係者によると「狙い通り、流行りに敏感な若年層ユーザーに購入して頂いています」とのことで、直接的なライバルとなるロイヤルエンフィールドのクラシック350より日本円にして2万円ほど高い設定にもかかわらずまずまずのスタートを切っているようです。

そして、勉強不足で驚いてしまったのが、このハイネスCB350は日本におけるホンダドリームのような洗練された巨大なホンダディーラー(Honda BigWing、写真下がその店舗)での専売モデルで、こちらはまだ50店舗ほどしかないということですから、販売店展開含め今後が勝負という感じです。

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完全新設計の空冷単気筒エンジンを採用

さて、その日本名GB350ですが、エンジンから車体まですべて完全新設計のブランニューモデルです。

とくにエンジンはかなり気合が入っていて、外観も美しい直立シリンダーの空冷単気筒で排気量は348㏄。内径70㎜×工程90.5㎜のロングストロークエンジンで、フューエルインジェクションやHondaセレクタブル・トルク・コントロール(いわゆるトラクション・コントロール)などといった現代的装備を採用しています。

バイクの詳細についてはをご覧いただくこととして、なんで爆発的ともいえる人気を得ているかを紐解くと、やはり第一の要因は価格なのでしょう。

GB350が55万円、バリエーションモデルでスポーティな装備を追加したGB350Sでも59万4000円。いまや125㏄モデルでさえ40万円台が当たり前になっている時代に、60万円を切る価格設定なのですから、それはとても魅力的に見えるわけです。

さらに、シンプルでいかにもバイクらしいスタイル(あえて言えば昔風)と、その虚飾を排した佇まいが、老若男女問わず新鮮に感じられて素直に好感が持てるのでしょう。

ボクがよく使う表現に「素のバイク」(素うどんと同義語です)というのがあるんですが、あえていろいろなトッピングをしないで、素のまま、素材のまま売られるバイクがほとんどなくなっている時代に、GBはまさしく素のバイクとして逆に目立っているのだと思います。

雨、雨、雨……。雨の中、飯能までツーリング

青山にあるホンダ本社の地下駐車場で初めて実物を見たGB350は、思っていたよりも大柄。下の写真は地下駐車場で知人が撮ってくれたのですが、見てのとおり400㏄クラスとは思えないくらいの大きさです。

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東南アジアでよく見かける、3人、4人が乗れるように、ではなく、所有欲を満たしてくれる堂々としたスタイルに仕上げたのでしょう。

そして、普段、ボクが250㎏級のバイクに乗っているからかもしれませんが、とにかく車体が軽い(車両重量は180㎏)。そして足着きもいいので、またがったままバックも簡単にできてしまいます。

自分のバイクの重さに最近、辟易としていたこともあり、この軽さと取り回しのよさはとても気に入りました。

借用期間は1週間だったのですが、お借りしに行った日こそたまにポツポツと降るくらいでしたが、翌日からは梅雨真っ盛りの状態になり、雨でも乗ろうとひたすらウエット路面を走り続けましたが、長時間乗れるのは1日だけ。意を決して飯能にある知人が経営する古民家レストランのFuku Fuku Gardenへ向かいました。

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雨粒が身体に当たって痛いなんていつ以来だろう

その日は朝からもちろん雨。それもかなりの本降りで、関越自動車道を走っていると雨粒が身体に当たって痛いくらい。なんだか、とても久しぶりの雨粒の感触に、昔はもっとひどい雨の日もイベントなどにバイクで行っていたことを思い出しましたが、ここ最近は「いいや、クルマにしよう」と日和っていたので、あらためてバイクは雨の日も走るものだったなぁ、肩に力が入らないようにリラックスして、急な操作はしないようになんて、雨の日のライディングのコツを思い出しながら走り続けました。

350㏄の単気筒エンジンは、想像していたよりスムーズで振動もなく、気になるほどのエンジンブレーキもなし。ロングストロークエンジン特有の鼓動感も、感じられはするけれどもそれほど明確でもなく、1速上のギヤで大きくスロットルを開けないと鼓動感を楽しむという感じもありませんでした。

前述のホンダ関係者の方が、「うちには珍しく、回せ回せと急かされないバイクになっています」とおっしゃっていましたが、まさにその言葉通り。頭の中にある(あるいは身体に染みついている)単気筒バイクとは一味違うバイクだなぁと感じました。

高速道路の路面も、場所によってはかなり濡れていましたが、フロント19インチ/リヤ18インチという大径ホイールを採用しているためかとても安定したハンドリングで、止むを得ず車線変更をするときもとてもスムーズ。ただ、最高出力20馬力の350㏄単気筒エンジンですから気合を入れてスロットルを開けないとなかなか思い通りには加速してくれませんでした。

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雨でも安心して乗れる=いいバイクだと思います

Fuku Fuku Gardenからの帰り道は、少し小降りになりはしましたが、路面はずっとウエットのまま。その後も連日雨続きで、ドライ路面はホンダに返却に行くときだけという雨に祟られた試乗でしたが、それはそれでよかったのかもしれません。

なにより、雨の中でも一度もヒヤッとすることもなく、いつでも安定して走ってくれましたから、総合点ではとてもいいバイクだと思いました。

1本指でブレーキレバーを握る癖があるボクには、フロントブレーキの効きが甘く感じたり、単気筒らしいパルス感のある排気サウンドがあまり感じられなかったり(さらに、回すと音がちょっと割れてしまう)、常に視界に入るトップブリッジがあまりに愛想がなかったりなど、不満点ももちろんありました。

でも、大きくてとても見やすいギヤインジケーター、明るいLEDヘッドライト、前述のようにとても軽いことなど、気に入ったところもたくさんありました。

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ふつうにいいバイク、それ以上でもそれ以下でもない

とても乗りやすくて、ビッグシングル特有のクセがなく、軽くて足も着いて安定志向のハンドリングもいい感じです。

ボクがこのバイクで楽しむなら、長閑な田舎道をひとつ高いギヤにしてトトトトトという鼓動感を感じながらゆっくりツーリングするでしょう。とても平和で、笑いながら走れると思います。

誤解を恐れずに書くと、とってもふつうのバイクで、それ以上でもそれ以下でもないと思いました。

ただ、現在、各メーカーからラインナップされているバイクの中では、前述のように60万円を切る価格はとても魅力的に映りますし、いまなら注目度は抜群でどこに行ってもいろいろな人から声を掛けられるはず。事実、ボクがGB350のことをfacebookInstagramに投稿すると、いつもの倍くらいのいいね! が付きました。

注目されるのもバイクの魅力のひとつですから、それを加味すればかなりいい得点になるでしょう。

通勤や通学といった日常使用からツーリングまで、ふつうに安心して楽しめる。実はいま、そんなバイクは少ないように思います。そう考えると、とてもコストパフォーマンスの高いバイクだと感じました。

トップブリッジだってマフラーだって、カスタムする楽しさがあると考えれば、長く楽しむにはこのくらいのものでいいのかもしれないし……。

電子制御バリバリで200万円オーバーのてんこ盛りバイクもそれはそれで魅力的で多くのライダーの憧れですが、その対極に位置するようなこういう「素のバイク」、もっと出してほしいものです。




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