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情報伝達のイノベーションの歴史 - 次の情報革命は何か?

はじめに

人類は、知識(情報)を蓄積し、共有し、活用することで進化してきました。この情報伝達のプロセスが、私たちの文明の発展やテクノロジーの進歩において重要な役割を果たしてきたことは周知のとおりです。古代の人々は、農業に関する知識を蓄積し、共有することで、より効率的な農法を生み出し、食糧生産を増大させてきました。教育制度も、知識を効果的に蓄積し、共有し、活用するためのインフラです。

情報流通の3ステップ

情報というものは、①特定の表現形態において生成され、②それが第三者に発見され、③その上で受容されることで、人から人へと伝達されていくものと整理できます。

誰かが何か有益な情報を口頭で発言したとしても(①)、誰もその場にいなければそれが誰かに伝わることもないですし(②)、仮にその場にいたとしても、言語を理解できなかったりあるいは言語を理解できても内容が理解できなければ(③)、情報として伝達されることはありません。このように、情報は、生成→発見→受容という3ステップで伝達されていきます。

情報流通の効率性向上=人類の進化

イノベーションは、既存のアイデアや技術を組み合わせることで生まれると考えられており、多様な知識や情報が集まって交錯する環境ほど、イノベーションが起こりやすいと言えます。身近な例でいうと、シリコンバレーは、世界中から集まった技術者や起業家たちが、多様な知識やアイデアを共有し、競争し合うことでイノベーションが生まれる場となっていると評価されています。

つまり、情報の流通の効率化が、イノベーションにつながり人類を進歩させてきたのです。そして、文字の発明や活版印刷の発明、そしてインターネットなど、歴史的にはいくつかの情報革命が起きてきましたが、いずれも”情報流通の3ステップ”を効率化する革命でした。

情報流通の効率化の歴史

口伝(言葉・言語)

書き物が発明される前は、情報は主に口伝えで伝えられていました。語り手の記憶に依存した表現になるため、情報生成においては正確性を欠いてしまうという欠点はありつつも、少なくとも「言葉」が発明されたことで、「情報」ひいては「思考」を生み出すことが可能になりました(①生成)。しかし、そもそも口伝えだと、その場に誰か他の人が居合わせないと情報は発見されないという問題もありました(②発見)。結局、文字が登場する前の口伝文化では、知識は限定的な範囲でしか共有できませんでした。

文字の発明

その後、シュメールの楔形文字やエジプトのヒエログリフなど、文字が発明されました。文字(数字を含む)は思考の補助道具でもあるので、コンテンツの生成が加速したのではないかと考えられます(①生成)。また、文字の登場により、非同期性・保存性が確立されました。すなわち、口伝のように「その場に居合わせる」必要がなくなり、時間的・場所的に同期せずとも、他人が情報を発見することが可能になりました(②発見)。また、読むほうが聞くことよりも時間短縮につながるため、情報を受容しやすくなりました(③受容)。

印刷技術

文字の発明は、時間的・場所的に同期せずとも、他人が情報を発見することを可能にしましたが、文字を媒体に残すコストが高いのがネックでした。しかしグーテンベルクの印刷技術が発明されることで、書物を大量に作成し配布することが可能になりました(①生成)。これにより、書籍が一般の人々にもアクセスしやすくなり、情報の発見と受信が促進されました。マルティン・ルターの宗教改革は、印刷の力を示すわかりやすい事例です。

インターネット

そして、コンピューター・インターネットの登場により、誰もが主体として情報を発信できる立場を手にすることができ、情報生成が世界的に加速しました(①生成)。しかしよりインパクトがあったのは、情報の受領側としては、Googleのような検索エンジンを通じて情報がより簡単に発見できるようになったことではないでしょうか(②発見)。動画など、密度の高い形式でも情報を受け取ることができるるようになり、情報受容の効率も向上したことも特筆点でしょう(③受容)。

大規模言語モデル(LLM)

そして世界を席巻しつつあるGPT-4などのLLMも、実はこの情報流通革命のひとつを引き起こしているのではないか、というのが個人的な見解です。LLMもメディア(媒介)です。

LLMにより、いわゆる検索エンジンを通じて(画面を延々とスクロールして)情報を探しにいくのではなく、自然言語というより直感的なユーザーインターフェースを通じて、より効率的に求めている情報に到達することが可能になりつつあります(②発見)。実際に、すでにGoogleの検索エンジンへのアクセスに顕著な低下がみられているようです。さらに、LLMは、翻訳機能により言語の壁を取り払い、情報受容の効率を圧倒的に向上させます(③受容)。しかし最も特筆すべきは、その生成力にあるのではないでしょうか。LLMは、その一部の効用をとらえて”Generative AI"と呼ばれたりするように、情報の生成をエンハンス・自動化する力を持っています。しかも単なる情報整理にとどまらず、人間には思いつかないような斬新な組み合わせ(≒イノベーティブ)のコンテンツすら生成することが可能です(①生成)。

正のフィードバックサイクル

このように、歴史的にみると、情報の①生成、②発見、③受容のそれぞれが効率化されることで、情報伝達の革命が繰り返されてきました。これらの3つの要素はそれぞれ正のフィードバックを与える関係にあります。

すなわち、生成が加速されると、情報が溢れるため、効率的な発見や効率的な受容へのニーズが顕在化します。そして、効率的に情報を発見・受容できるようになると、それをアウトプットする機会が求められるようになり、生成が加速されるようになります。言葉の発明からLLMの登場に至るまでの情報流通革命のイベントは、私が思いつく限りで(ある意味恣意的に)挙げたものですが、生成側の革命と発見・受容側の革命が交互に発生しているような印象もあります。

次の情報革命:Brain Computer Interface

情報伝達の進化の次のステップは、Brain Computer Interface(BCI)なのではないでしょうか。

LLMの登場により、有象無象のコンテンツが、歴史上かつてないほどのボリュームで大量に生成されるようになります。そうすると、検索エンジンはおろか、LLMの自然言語インターフェースをもってしても、我々は本当にたどりつきたい情報にアクセスすることは困難になっていくでしょう。そこで求められるのは、我々の意識が必要だと感じた情報に直接アクセスできるようにするソリューションです(②発見)。これを実現するのがBCIなのではないかとの仮説をもっております。たしかに現時点では、BCIが一般社会に普及するというのは少しSFチックな話にはなりますが、10年前にLLMの話をしても「そんなのはSFにすぎない」と一蹴されたのではないでしょうか。

加えて、BCIにより、アクセスできた情報を、その人の脳に最適な形で記憶を埋め込む(Writeする)ことができると、情報受容についても革命を起こすことができます(③受容)。ここでは、テキストや動画を超えて、さらにリッチな”体験”や”経験”レベルの情報もWriteすることができる可能性すらあります。もちろん、クラウド上にある情報に直接アクセスするスピードが速くなれば、わざわざ脳という”エッジ環境”に情報をWriteする必要はなくなるかもしれません。また、脳から直接情報をReadすることでコンテンツを生成することも非現実的ではありません(①生成)。

まとめ

いくつかの重要なマイルストーン(革命)を経て、情報伝達が効率化され、社会が変革されてきました。私見では、直近ではLLMにより、そして将来的に社会実装されるBCIにより、後続する情報革命が起きるのではないかと考えております。BCIはまずは医療・治療用途で立ち上がることが想定されますが、情報革命的なアングルも見据えてソリューション化していくと未来が広がるのではないでしょうか。

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