🇫🇷フランス旅日記｜リヨンでブンブン(3)〜リヨンと大阪、似てるんちゃう？編〜

水浸し騒動から一夜明け、リヨンで初めての食事となる朝食の時間がやってきました。

朝食会場

ビュッフェ形式で、自由な席で食事できるようです。せっかくなので足元まで大きな窓がある窓際のテーブルに。このホテルはリヨンで3番目に高い建物で（ほんの少し前まで2番目に高かったとか）フロントが30階、私の部屋も36階と高層階でした。円筒形をしており、どの部屋の窓からでもリヨンの街並みを一望できるようです。ここは建物の高さに規制があり、日本のような高層ビル群はありません。

日本に来る私のフランス人の友人たちは「日本は高いビルが並んでいる様子がカッコよくて大好きだ」とよく話します。でもフランスの昔の建物をそのまま使っている様子も素敵ですし、隣の芝生は〜ということかもしれませんね。

午後からガエルさんに会いケーキをいただく予定なので、朝食は控えめに…するつもりでしたが、ずらっと並んだパンオショコラやマフィン、チーズにサーモンの美味しそうなこと！ 朝食はいつも玄米ごはん・納豆・お味噌汁という和食派なので、私の目には新鮮に映ります。

バターやジャム、チーズも色々試してみます。
まずはこのキャンディみたいに個包装された棒状チーズから。 丁度チョークくらいのサイズで、包み紙を剥がすと薄い黄色のチーズが姿を現しました。

かじると香りは特になく…なんかフニャッと油っぽい食感……。 なんやこれ？ 歯型のついたチーズをよくよく見ると、チーズではなく…どうやらバターでした。紛らわしっ！

「あの子バター丸かじりしたわよ」とヒソヒソされたくなくて何食わぬ顔でパンをちぎって口に運びます。一人旅だとこういう時突っ込んでくれる人がいなくて間がもたないですね。少し居心地が悪くて、その場でドイツ人の友人にチーズもどきバターの写真と「まさかのバターやった」というメッセージを送りました。「え！？ どう見てもチーズやん！」と返事がきました。やろ？

チーズやろ？
（包みに書いてある"BEURRE"とはバターなのですが、この時は知りませんでした）

時刻はお昼。
ガエルさんとの待ち合わせ場所に向かうべくバスに乗ります。席はほぼ満席で、アジア人は私だけ。朝の間に小雨が降ったようで気温も低く、外を歩く人は寒そうに肩をすくめています。バスの人も外の人も、みんなどこに行くんかしら。

運転席のそばに立っていると、スキンヘッドの中年男性がパンの袋を片手に乗車………するや否や、運転手さんとペラペラ楽しげにお喋りを始めました。雰囲気からして世間話かな？

パリのメトロは知らない人同士が会話を始めることがあり（ケンカもある）、ここでもそんな感じかな、と眺めていました。
ほどなくして男性が降車し、今度は初老の女性が「ボンジュー♪」と明るく乗車。そして先ほどの男性と同じように「ちょっと聞いてよ、昨日ねぇ…」と、気心の知れた友人にするように運転手さんに話しかけたのです。車の走行音で運転手さんの声は聞こえませんが、女性が時折楽しそうにアハハと声を上げ笑うので会話は盛り上がっている様子。

「大阪みたいにフレンドリーな人が多いんかも」と考え、ハッとしました。
この旅行の準備中にリヨンのことを調べていて、ふと「ある説」が頭に浮かんだのです。
『もしかしてリヨンと大阪は似ているのでは？』という説が。
「は？ 全然ちゃうやろ」「どこがやねん」みたいな声が聞こえてきそうですが、そう言わずに私の思うリヨンと大阪の共通点を聞いてください。

①その国の第二の都市である

リヨンはパリに次ぐ、大阪は東京に次ぐ第二の都市です。
リヨンは人口などで最近マルセイユに抜かれたと聞くので、厳密にはフランス第三の都市となるのかもしれません。しかし双方「首都ではない、けれども歴史ある大きな都市」という位置付けです。人の過密もそこそこで、パリ・東京と比較した時にすこーし日常生活に余裕がある…かもしれません。
(誤解を招くと悲しいので念のためお伝えしておきますと、私はパリも東京も大好きです。余裕というのは満員電車に遭遇する率が低いとかそういう感じのことであって、人々の心の余裕のことではございませんのであしからず)

②リヨンは「美食の町」・大阪は「天下の台所」「食い倒れの街」

食にまつわる異名があるところも共通しています。 「大阪で有名なのは粉もんでしょ？ おしゃれなフランス料理とは違うよ」 と思われるでしょうか。

後々紹介する予定ですが、リヨンには「ブッション」と呼ばれる大衆食堂があり、リヨンの歴史を語る上で欠かせない存在です。「なんでも余さず使うこと」という信念のもと提供されるお料理は「本来捨てる部位である内蔵などを工夫し美味しく仕上げたもの」です。当然、フランスのお料理すべてが高級で細かいマナー必須なわけではないですよね。大阪にも粉もんしかないわけではありません。

食い倒れとは「安価でおいしいものがたくさんあるので、食べすぎて倒れてしまう」という意味ではなく「美食家ゆえ飲食にお金をかけすぎ財を失う」という意味です。食文化に誇りを持ち大切にする姿勢、おいしさを追求する気持ちが強いところが似通っているように感じます。

③リヨンのシンボルはライオン・大阪のシンボルはトラ

百獣の王ライオンと、密林の王トラ。
リヨンとは「LYON」と書き、発音はフランス語のライオンと同じです。リヨン市の紋章もライオンで、空港の駅にもリヨンの作家サンテグジュペリとライオンの像が。

また余談として…、これはゆりさんに教えていただいたのですが「LION」ではなく「LYON」という綴りになっている一説として、「リヨンを流れる2本の川、ローヌ川とソーヌ川が途中で合流し、Yの字になっているから」というものがあるそうです。

大阪がトラというのは私のこじつけのような感じがしますが、私のこじつけです。
言わずと知れた阪神タイガース。そして大阪城天守閣にある虎のレリーフ。少彦名神社の虎。………もうちょっと主張するに足る要素がほしいところですが…なにか動物を大阪のシンボルにすると言われたら、個人的には虎を推したいです。

あ、ヒョウは？大阪のオバチャンといえばヒョウ柄でしょ？と思われるかもしれませんが、誇張でなくああいうヒョウ柄を着た賑やかな女性は大阪全体の1割もいません。メディアが作り上げた虚像です。私含め、あの作り物の大阪像に傷ついている大阪人は結構多いんです…。テレビで「ザ・大阪の人間」みたいに映されているのは、「こうした方が盛り上がるだろう」という最適解を計算し大袈裟に振る舞っているサービス精神旺盛な方の切り取りです。

※この辺の話にご興味のある方は
・石川智久先生 著「大阪が日本を救う」(の、特に「大阪はそんなにガサツなところではない」の章)
・井上章一先生 著「大阪的」(食い倒れの本来の意味についても言及しておられます)
を読んでみてください。私は「よくぞ言ってくださいました…」と、読みながら首がもげそうなほど頷きました。

④人が穏やかで優しい

これは共通点なのかどうか…これから身をもって実感していきたいことです。
「リヨンの人は穏やかで優しい」というのは周りのフランス人に聞いたことで、彼ら曰く割とおっとりしているそうです。あ、でも男性は車の運転がちょっと荒いという意見もありました。ん？ それは穏やかとは言わんのちゃうかな？

しかし、「おっとり」かぁ…。パリのように観光客や物乞いの多さにウンザリしていないからでしょうか？リヨンに来たばかりの私にはまだ比べようがありません。

大阪も、先ほど少し本筋から逸れてしまいましたが、人情味のある街だと思います。
外国人の友人やそのご家族が「大阪の人はニコニコしてる」「フレンドリーで親切」とよく言います(リップサービスでないことを願います)。
ただ、私は不親切な人が多いと言われるパリでも、忙しい人が多いであろう大都会東京でも、たくさんの見知らぬ人に親切にしていただきました。当然世の中には良い人もいれば悪い人もいるので「この地域の人はこう」と一概には言えません。
色んな所へでかけて様々な経験をして、肌で感じるしかないなと…。仮説を立証できるよう、思い返した時にドキドキしたり嬉しくなるようなエピソードを積み重ねてゆくことが理想です。

「リヨンと大阪、似てるんちゃう？説」今日から検証してみよう。
そんなことを考えているうちにバスが停まりました。私の目的地です。

方向音痴の私、ここからさらに地図アプリを頼りにセーヴのお店まで向かわねば。無事辿り着けますように。