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「行政アーティスト」という肩書のスーパー公務員(2)~山形 巧哉さん~

​※2019年4月12日初出の記事をnoteに引っ越ししたものです

 話し手:北海道森町 行政アーティスト 山形 巧哉さん
​ 聞き手:サイボウズ 野水

行政アーティストは、過去を記録に残して未来を描く人

前編はこちら


ところで名刺が「行政アーティスト」って肩書きになってるじゃないですか。まさかそれって正式な肩書じゃないだろうって思うんですけど、役場の前まで来て「あれ?何部に行けばいいだろう?」ってメッセンジャーで聞いたんですが(笑)

一応本職は総務課の情報管理係の係長をさせて頂いてるんですけど、あれはキロク乃キオクとか時層写真で遊び始めた頃に文化的な人達にも興味を持って頂いて、「ちょっと遊びに来てよ」って言われる事が出てきたんです。
けど、「芸術とか文化の世界に公務員って何となく呼びづらいよね」っていう話が持ち上がったんですね。

それは友人同士での話だったんですけど、「山形さん何か面白い肩書きあればいいのに」って話をしてたら、たまたまその場にいた人達が「行政なのにデザインとかしてアーティストっぽいから行政アーティストでいいんじゃね」みたいな事からスタートですね。

それで「行政アーティストってあだ名付けられた」って話をしたら、「それ滅茶苦茶パワーワードだね」「面白い」って色んな人が言い始めて。気付いたら「行政アーティスト(笑)の山形さん」みたいな紹介をされ始めちゃって、あれよあれよという間に…。

役場の外だとそっちの方が一般的になってますよね。

 ​そうなんですよ。
たまたま国の事業か何かで呼ばれた時に(役場の)名刺を切らして、「ふざけた名刺しかなくてすみません」って渡したら、「メチャメチャ良いじゃないですか」って感じになって、「これでいいんだ」って。

それで「名刺に書いてもいいですか?」ってちゃんと聞きに行って、みんな「別にいいんじゃない」みたいな感じになって。そのまま足して。だから別にそういう部署がある訳じゃないし、雰囲気で言ってるだけですけど、語呂が良くてみんな面白がってくれてるので「続けてもいいかな…」ぐらいの感じですね(笑)

ところで先程の話にあったように、お爺さん・お婆さんが残して欲しいって思ってる事はたくさんありそうなんですか?

あります。実は町専用のウィキペディアみたいなものも立ち上げているんですけど。「残して欲しい」っていう気持ちはみんなあるんですよ。
あるんですけど残し方が分からないのと、僕もまだ手探りで、作ったは良いけど何処に残すべきかはまだ悩みます。

「このサーバーって僕が「辞めた」って言ったらどうなるんだろう」とか、「僕が交通事故に遭ってアクセス出来なくなったらこのデータはどうなるんだろう」とか。
せっかくみんなで「良い取り組みだ」って作ってても、枠を越えられないっていうか。そこをいかに後世に伝えていくかっていうのを今考えてます。

でも町の財産って事であれば、例えば町史って図書館で保管してあるじゃないですか。それを今度は総務課の山形さんとして、町として役場で保管するとかって考えにはならないですか?

それも難しい問題で、皆さん図書館のある町に住んでらっしゃるからそういう考え方になるんでしょうけど、図書館がない町っていっぱいあるんですよ。「そういう所ってどうしてるの?」って話になった時、今は図書館がある町でも図書館が無くなる可能性はゼロじゃない訳じゃないですか。人口も減っていってるので。
「その時にそのデータってどうなるの?」って言ったら答えられないですよね。

​時代がまだ追い付いてない

追い付いてないと思いますね。この辺の大きな街だったら「じゃあ函館市に」ってなるけど函館市もそういう取り組みを公式にやってる訳じゃないですし。まだまだ事例もないし、どうしていいか分からない状況。

町史とかって僕も好きだから読むんですけど、自分の住んでる町だったら地名がどこかはだいたい分かるけど、知らない町の町史読んでも地名とか全く分からないじゃないですか。「これどこよ?」みたいな

あれがデジタル化されたら、分からない地名をクリックした時にWebGISとかに飛んでいって「この辺だった」とかポーンとプロットする仕組みがあればもっと地域って面白くなりますね。

僕の友人が面白い事を言ったんですけど、日本ってデモクラシーを取り入れてからまだ100年ちょっとしか経ってない中で、民主的に情報を残す手段って多分これまで無かったんですよね。今までは権力者が自分の良いように歴史を書き換えてきて、権力者の通りの情報しかなかったのが、やっと民主主義の時代になって色んな情報を残せるようになったんですよね。

諸外国っていうのは日本より早く民主的な国になってるから色んな立場での残し方を知ってるけど、日本ってまだそれが分からなくて、成熟してないという言い方をしたら失礼かもしれませんけど、そこがまだ僕らに足りない所なんじゃないかと思いますよね。

山形さんのお話を聞いてると地図っていうのが一つのテーマなのと、もう一つが過去を残すって事にこだわられてる感じがしますね

​そうですね。僕ら北海道民なんで開拓精神は強いので、どうしようもないものはブッ壊して新しく作るっていうのは僕も賛成ですし、バンバンやっていくべきだと思ってはいるんですけど、過去を全て捨ててしまうのは、また同じ失敗をしてしまう可能性ってある訳じゃないですか。

なので、作るためには残すって絶対大事なんだなっていう気持ちが今は凄く強いですね、この取り組みを始めてから。

キロク乃キオク
森町の古写真を今と比較する地図と写真を融合したサービス。行政アーティストという肩書がぴったりなクリーティブな試み。

これからどんな事をやっていきたいってあります?​​

自分が生活してて「この町にずっと住んでてもいいな」って思える事をやっていきたいですね。「何をやりたいか」と言われると分からないです。多分その時に思い付いたものをやりたいです(笑)

「これ良い!」って思ったものをとにかくやりたい。

例えば町民の皆さんから「これやってくれ」って言われる事とかないんですか?​

僕らがこういう活動してるのって少しずつ新聞とかで分かってくださってる方って出てきてますけど、だからと言って必ずしもITというのが頭に無いので。

だからまずは、人口も減ってきてこれから先は(知見とか歴史が)デジタルの世界に移住する世界が来ると思ってるので、少しずつ皆さんに「ITって身近なもので、そんなに敷居は高くない」っていうのを分かって頂いて、何か相談を受けていければと思いますけど。

ITが便利で簡単になったっていう事は色んな人に知ってほしいですよね。「言ったら作れるぞ」みたいな

あくまで僕はこの町のハブになりたいと思っているんですが、僕がやるのは僕の好きな事だけやりたい(笑)

凄いわがままですけど、それ以外は皆さんに色んな方を紹介して、色んな方々が入ってくださって、色んな方々と一緒に「遊ぶ」っていうのが凄く重要な事なんじゃないかって思ってます。

シビックテックがブームになりつつあります。ブームと言うと語弊がありますが、市民による地域を良くするためのいろんな活動の一つとしてITを活用する環境が整ってきたという状況なのだと思います。
ですから、一過性ではなく永続する取り組みですね。

しかし、田舎に限らずですが、「周りに誰もITに詳しい人いないから」ということはよく聞きます。
かく言う筆者もそう思っていた頃があります。
でも、100人いればIT好きが5人くらいはかならずいるもので、そういう人たちをどう見つけ出してつながるかが大事なんだと思います。
自分が前に出ることをためらわずにアピールしていけば、ついてくる人は増えていくもんだと取材して感じました。

語り口からほとばしるエネルギーと言うか、溢れ出す町への思いが、ITの方向に向くとこんなたくさんのサービスが生まれるんですね。
自分が好きだと思うやることは大切で、それを周りが支援してゆくことも大切で、両方が組み合わさると大きな成果が生まれます。

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野水克也(nominomi)
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