家が欲しい、7日目(内見編その1)

家が欲しくなったわたしは夫に相談した。
「家が欲しいんだけど」
「こことかここはどうかな?見学今週末でいい?」
ものすごいスピード感。そうだった、夫は物件大好きで引っ越す予定がなくても物件を見て、知らない街に行けば不動産の前で立ち止まりチェックする男だ。手持ちのカードからめぼしいのをピックアップしてもらい内見の予約をお願いした。
家が欲しくなってからまだ1週間経っていなかったがとにかく練習!思い立ったら即行動!マンション、戸建て…何が良いのかもわからないのでとりあえず色々見せてもらうことにした。

まずは戸建て。
近かったので歩いて行った。駅までの距離や生活圏は今と変わらなさそうだ。
わたしは北海道のど田舎の土地だけは有り余っている所で育ったので隣んち近すぎんか?というのが第一印象だった。隣家の幼馴染と糸電話で喋るシーンが少女漫画であるが、これならサランラップの芯でもいけそうだ。
入った感じは友達の家だった。友達の家からマイホームになるもんなのか?まだ一軒目なのでそこもわからないが、友達から恋人になるようなもんかね?と思いながらぐるぐる見て回った。ここの家で暮らす自分を想像したが、階段を登って寝室に行くのがめんどくさくてリビングで寝るようになるのが想像できた。どうも二階建ては向いてない気がしてきた。あとはセキュリティも不安だった。狙撃される心配はないかもしれないが、もし襲撃された場合どこで迎え撃てばいいだろう。取り囲まれてどの窓から入ってくるかもわからない。海外みたいに地下はないし、そもそも私は何と戦うつもりなのか、わからなくなってきたところで戸建てはないな、と判断して次に行くことにした。
ちなみにこのときの不動産は、私たちに買う気もお金もないように見えたのか、ネットで調べればわかるようなことをホニャホニャ述べていただけで何一つ有益な情報は教えてくれなかったのでここでおさらばした。あばよ。

次はいわゆる高級マンション風の最新のマンションだ。
しかも人が住んでいるらしい。靴下に穴があいてないか何度も確認しつつ車で向かう。車だとどこに向かっているかわからなくなるのは私だけだろうか。駅からの距離は全くわからなかった。ちなみにここから不動産が変わる。通称ワタナベイビーだ。どこにでもいそうだが誠実そうで好感が持てる。
ここのマンションの第一印象はキレイ!奥様が。国仲涼子系の美人人妻にドキドキしつつ家を見せてもらった。クローゼットの中も見せてくれるしお風呂も見せてくれる。なんの接点もない人妻の生活を覗き見している感じがなんとも言えない背徳感で全然家の作りが入ってこない。へえーティッシュのストックはこんなとこに入れてるんですね、あ、今日はカジュアルだけどこういうお洋服もお召しになるんですか似合いそうですね。旦那さんは何をされてる方なんですか、出会いはどこですか、私の中のスケベおじさんを抑えることに必死で全く家を見ずに出てきてしまった。
後で夫に家の感想を聞いたら奥さんがキレイだったと言っていた。

この日の最後は団地だった。
ボロボロだけど値段も抑えられてリノベーションのしがいはありますよ、とワタナベイビーが言う。
第一印象はかなり好き!レトロなレンガ調の壁も無駄に凝ったベランダの柵もヨーロッパ風でかわいい!わたし最初から恋愛対象として見れない人と恋仲になることはないわね。中もたしかに年季入ってるけどなんだか私ここで生活してるのが想像できます!西日が入った感じも哀愁があっていとおかし。駅からの距離も良い。わたし、もしかしてこの人とどうにかなっちゃうかも…そんな淡い予感を胸にこの日のは解散となった。

内見初回のまとめとしては
・友人関係からいつしか恋人に、はありえない。
・家の中の階段は使わなくなる。
・いつどこからどんな武器を持った敵に狙われるかわからない。
・キレイすぎると入ってこない。
以上からリノベーションが良いのでは?となり、ワタナベイビーにはそういう物件をよろしくねとお願いすることにした。
リノベーション、聞いたことはあるけどあまりわからないので調べつつ物件も見つつゆっくり進めることにしましょうと話して仲良く酒を飲んだのだが、これがまさか壮大な前フリになるとは。と3週目の今思っているところだ。

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