転ばぬ先に備えあれ!【シニアフィットネス】で健康寿命を延ばす!!
はじめに
シニアの運動指導では、安全性を重視するのは当然ですが、過剰な安全志向が効果を半減しているケースも少なくありません。
高齢者にとっての「危険」や「制限」を過度に強調するのではなく、よりニュートラルな視点で運動指導を見直すことが重要です。
エイジズム(年齢差別)にも繋がるような、本来の機能回復を二の次に置くような指導は避け、シニアの持つ可能性を最大限に引き出すような運動指導を目指しましょう。
私たちはなぜ生まれ、そして歳を重ねていくのでしょうか?
多くの人が、人生とは何か、そしてどのように生きるべきかを考える中で、健康で自立した生活を長く送りたいと願うでしょう。
しかし、加齢に伴い、筋力や柔軟性、体力などの身体機能は徐々に低下していきます。そして、転倒や骨折などのリスクが高まったり、日常生活に支障が出るようになったりといった問題が生じてくる可能性もあります。
シニアフィットネスは、こうした加齢に伴う身体機能の低下を予防し、改善するための運動プログラムです。無理なく続けられる運動を取り入れることで、筋力や柔軟性を高め、体力維持や転倒予防、認知機能の維持・向上などに効果が期待できます。
加齢に伴う経時変化
加齢とともに、心身様々な機能が徐々に衰え、変化していきます。主な変化は以下の9つです。
心肺機能の低下: 心臓や肺の機能が低下し、息切れや疲れやすくなります。
身体活動量の低下: 運動能力が低下し、日常生活での活動が制限される可能性があります。
骨格筋量の減少: 筋肉量が減少し、筋力やパワーが低下します。
体組成の変化: 脂肪量が増え、筋肉量が減ることで、肥満やサルコペニアになりやすくなります。
精力の減退: 男性は精子数や運動能力が低下し、女性は閉経を迎えます。
人格の変化: 感情がコントロールしにくくなったり、認知症を発症したりする可能性があります。
脳機能の低下: 記憶力や判断力、集中力が低下します。
骨量と骨密度の低下: 骨が弱くなり、骨折のリスクが高くなります。
内臓機能の減退: 胃腸機能や肝臓機能、腎臓機能などが低下します。
これらの変化は個人差が大きく、すべての人に当てはまるわけではありません。しかし、加齢によって心身機能が衰え、変化していくことを理解しておくことは、健康維持や介護予防のために重要です。
生活習慣や運動習慣を見直し、適切な栄養摂取を心がけることで、加齢に伴う心身機能の衰えをある程度予防することができます。
身体機能低下とそのリハビリテーション
日本人の運動習慣率は低く、WHOからは65%しか運動習慣がないと指摘されています。運動指導者にとって、継続を促すための工夫が求められています。
加齢によって運動能力は低下し、特にバランス能力、筋パワー、柔軟性が退行しやすい傾向があります。
1.筋パワーの減少:
筋力トレーニングとパワートレーニングは、どちらも転倒予防と姿勢改善に効果的な運動ですが、アプローチ方法と効果に違いがあります。
筋力トレーニングは、抗重力筋を中心に鍛えることで、体幹を安定させ、正しい姿勢を保持しやすくなります。
パワートレーニングは、筋力とパワーを向上させることで、バランス能力と反応速度を向上させ、転倒時の対応能力を高めます。
転倒予防と姿勢改善には、筋力トレーニングとパワートレーニングを組み合わせることが効果的です。
2.バランス能力の低下:
寝たきりの原因となる転倒・骨折の増加は、筋力低下だけでなく、加齢による平衡感覚機能の衰えも関係していることが近年明らかになっています。
内耳にある平衡感覚を司る耳石器の機能低下により、正しい体の傾き情報が脳に伝わらなくなり、つまずきや転倒につながるのです。
バランス能力は、静止状態を維持する静的バランスと、運動状態を維持する動的バランスに分けられます。
高齢者は、加齢によって静的バランスと動的バランスの両方が低下し、転倒リスクが高くなります。
バランス能力低下の関係因子
加齢
筋力低下
感覚機能低下
認知機能低下
精神疾患
薬剤の影響
静的・体平衡検査
静的・体平衡検査は、体の平衡機能、特に体幹の安定性を評価するための検査です。
両脚直立検査: 両足をそろえて直立し、目を閉じて60秒間その姿勢を保持できるかどうかを評価します。
Mann検査: 片足ずつで直立し、目を閉じて30秒間その姿勢を保持できるかどうかを評価します。
単脚直立検査: 片足で立ち、目を閉じて10秒間その姿勢を保持できるかどうかを評価します。
これらの検査は、以下のような目的で使用されます。
体平衡障害の有無と程度の評価
障害部位や障害側の推定
疾患の経過観察や治療効果の判定
代償過程の程度の評価
静的・体平衡検査は、比較的簡便な検査であり、医療機関だけでなく、介護施設やスポーツ現場でも広く利用されています。検査結果に基づいて、適切なリハビリテーションプログラムを構成することが重要です。
バランス能力は、日常生活動作や転倒予防に重要な役割を果たします。定期的にバランス能力を評価し、適切な運動や生活習慣を取り入れることで、転倒リスクを軽減し、健康的な生活を送ることができます。
3.柔軟性の低下:
柔軟性低下は、特にハムストリングスの拘縮による骨盤の後傾が問題視されています。骨盤後傾は、腰痛や転倒リスク増加などの原因となる可能性があります。以下は、柔軟性低下と骨盤後傾を評価するための代表的な方法です。
1. スタティックアライメント
骨盤の傾斜
寛骨の傾斜の左右差
亀背の程度
WOT (Weight On Toe)
2. ダイナミックアライメント
①前屈テスト
クライアントの両PSIS (腸骨粗隆)を触り、前屈してもらう。
PSISが頭方向へ移動するのが正常。
股関節伸展筋が拘縮しているとPSISは動かない(骨盤後傾)。
②後屈テスト
クライアントの両PSISを触り、後屈してもらう。
PSISが尾方向へ移動するのが正常。
股関節屈筋群が拘縮しているとPSISは動かない(骨盤前傾)。
柔軟性の低下と骨盤後傾は、姿勢不良や運動制限、痛みなどの問題を引き起こす可能性があります。
ストレッチや筋力トレーニングなど、適切な運動習慣によって改善することができます。
まとめ
シニアフィットネスは、いつまでも元気に、自分らしく生きるための重要な手段です。運動習慣を取り入れることで、加齢に伴う身体機能の低下を予防し、健康寿命を延ばすことができます。
もし、シニアフィットネスに興味がある場合は、地域のスポーツクラブや高齢者向けの施設などに問い合わせてみてください。
転ばぬ先に備えあれ!バランスと筋力、今から鍛えよう!
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