【回文〆日記】 #1 春の散歩、海の味
少し前、県外から帰省していた幼なじみと、川沿いを散歩した。
ついでに、子どもの頃に利用していた児童館的な施設へ立ち寄った。建物の外観も中もびっくりするほど変わってなくて、すごい昭和感。それぞれの記憶をとりとめなく話した。
そこで見つけた冷水機。
当時は気にも留めなかったが、あらためて見ると、気になる改行。今回そこに、新たな意味が浮かんで来た。
噴水状に出るのは、よくある冷水機と同じ。ただ、水のかわりに液状のウニ、 「のむうに」 が出てくる。この施設を利用する子どもなら、誰でも飲んで良い。
小学生の自分はある日、口にしたことのない海産物、ウニ、の出る冷水機に挑むと決める。とはいえ顔や服を汚したくないし、貴重な珍味を無駄にしたくない。緊張の中、放出口を見極め、大口を開けて狙いを定め、集中してボタンを押す。
「やった!こぼさんかった!」 心で叫ぶ。
液状とはいえ、口の中いっぱいに広がる濃厚な風味。上手にキャッチできた喜びで、おいしさもひとしお。人生初のウニ。ただ、塩分で、喉は乾く。
「ふつうに水が飲みたい。でもこれは、うにしか出んから、手あらい場に行って、じゃ口から飲もう。」
施設を出て、また川沿いを歩いた。自分は子どもで、今さっきウニキャッチに成功したような気が一瞬したが、おとな大の身体をして、やはりおとな大の、友の横を歩いていた。会うのは久々で、楽しかった。だいたいの桜はもう散っていたが、しだれ桜はまだ見頃で、よかった。
当たり前といえばそれまでだが、頭の中には、次々何かがわいてくる。今回でいうと、のむうに、とか。あらゆる事象があるのに、なぜそれが浮上?と思う。スルーすれば消えて行くけど、こうして書いてみると、己の脳のクセ、みたいなものがわかる。続けてみようか、脳内ウォッチング。観察するのもまた、己の脳なんだろうけど。
追う、「のむうに」生む、脳を。
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