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【回文〆日記】 #16 色のギャップ
自転車でたまに通る川沿いの道がある。10月上旬のある日、すずしい川風に吹かれながらその道でペダルを漕いでいたら、なにやら赤いてんてんが脇の風景を流れていった。街への往路だったので勢いをゆるめずにしばらく行ったが、やっぱり気になって引き返してみた。
赤い色を発していたのは、花をたくさん咲かせるヤマボウシの木がある場所だった。初夏に思い出したなら、花を見るために通り抜けに行く、うっすら気に留めているスポットだ。
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自転車をとめて見上げると、赤い丸い実がたくさん木についている。そうか、赤いてんてんはヤマボウシの実だったのか。どんな実か知らなかった。
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花は、ひとつひとつは輪郭がしっかりしているものの、ちょっと引きで見ると、白い靄みたいで淡く、幻想的だ。
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だから、実の赤さは意外だった。勝手なイメージだけど、そんな強めの色を出してくるとは思わなかった。
観察してみると、実は花とは違う路線の魅力があった。イガイガ、抑えめの赤色、しぶかわいい。
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調べると、ヤマボウシの実は食べられるという。どうしても味を知りたくなり、翌日また同じ場所に出向いた。今回だけ、少量、味を知る目的で取らせてもらった。自治体が虫よけの薬をかけているかもしれないので、念入りに洗い、口に入れた。イガイガの皮が口に残るが、中は甘く、クセもなくておいしかった。へえ、こんな味なのか。気が済んだ。
自分の中の「近所の植物、見どき見どころリスト」に、ヤマボウシの花だけでなく実のデータも加わった。歳を重ねるとおもしろくないこともまああるが、好きなものや場所の蓄積が増すのは、わるくない側面だ。意識できたのは、note投稿の産物。これまではもっと、植物や風景をぼんやり、漠然と捉えていたように思う。
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咲くと淡いが、実、赤かぁ。見甲斐!わぁ!得さ。
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