何でもない日の#64
「ただいま」と、玄関を開けた旦那を迎えると、バラの花を持っていた。
「いつもありがとう、結婚記念日だから」
と、真顔で言うが、結婚記念日は、一か月後である。
なんでもない日にいきなり差し込んだ真紅の赤、重なる花びらが、なんでもない日を彩って私も旦那も子どもたちをも笑顔にしてくれた。
同じ日は、二度とない。
知っているし、わかっているのに、日常のルーティーンをこなしながら掃除などしていると、同じような似通った日々に飽き飽きしてしまうこともある。
この日常を手放す勇気もないくせに、いっちょ前に、飽きるのである。
私は、その飽きが来た時、脱皮するチャンスだなと思っている。
子育てをしながら仕事をして生きていく日々は、飽きるなんて思う隙間もなかった。
今、少しづつ、余白ができている。
その余白は、大好きな読書に使いたいし、そしてずーーーーっとしてみたかったことにも使っていきたい。でも、カフェにも行きたいし、大好きな漫画を読み返すのにも使いたい。
人生の自分時間は、思うよりも少ない。きっと。
その密度を上げるか、それとも、無理しない範囲で気持ちよく幸せにすごしていくか。
気持ちよく幸せに過ごしてしまうと、ちょっと、飽きたりもするけど、きっと幸せだろうなとも、思う。
発酵食品をつくってみたり、毎日家のどこかしらを片付けて家と共に暮らす感じを深めたり、季節の花を植えて四季のサイクルを楽しむのもいい。
正直、そういうこともしたいからしている。
毎日は同じようで、違う。小さな舵を、少しづつ回しながら忙しく過ぎていく。
振り返ったとき、同じものは残らない。これは、子どもを育てるようになってすごく思う。
過ぎ去る速度が、早い。そして、後悔は戻らない。
同じような毎日。
だから、私は夜にテレビを消して、子どもたちに絵本を読む。
子どもたちに囲まれながら、何度も同じ本を読む。
目に見えない、思い出が重なっていく。バラの花びらの様に。
見えない花が、子どもたちの中で育ってくれるといいなと思って。
そして、たくさん本を読みたかった自分への栄養としても、本を読んでいる。
最近、子どもたちにいろんな質問を投げかけられる。
「人間はどうしてつくられたの?」
「どうして空は青いの?」
私は彼らの中に芽吹きはじめた世界を思い、クスクスしながら嬉しくなる。
何にもない日の積み重ねで、人生がちょっと彩られていくのを感じる。
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