VHS #48
私が何でできているか。
実は、「オーレ」でできている。
オーレというのは、地元にあった書店販売とCD、VHSがレンタルできる、TSUTAYAの地方ローカル版みたいなお店だった。
だったというのは、現在、もうその建物はテナントもはいっていなくて、取り壊しにお金がかかるからという理由だけで壊されていないだけの廃墟と化しているからだ。
オーレが、私をつくった。
そこに並べられている漫画、そして、ちょっとマニアックで豊富な品揃えだったミニシアターのVHSたち。
私の思春期のアイデンティティは、オーレで形成された。
何度も何度もVHSの棚の前を行き来し、裏のあらすじを読んで「今日はどれを借りるか」吟味しながら1本を選ぶ。
アマプラで気軽にどれを見るか選ぶのと違って、なけなしのお小遣いを賭して選ぶ1本には重みがあった。
そしてそれに対する価値を求めていた。
それらの見えない文化芸術に投資してきた結果が、今の私だ。
たとえば、中学2年生で出会った「天国の口終わりの楽園」。
ドハマりした私は、友人の留学先にメキシコをすすめ、まんまとメキシコにいき、モデルとなる町、アカプルコまで行ってしまった。
映画の中のモデルの町はとても素敵で、最高の地で、そこで飲む酒は死ぬほどおいしかった。
時は過ぎ、今、当時よりも情報が手軽に、安く、大量に手に入るようになった。
私達が冒険しながら宝ものを探したのとちがい、これから自分の子どもたちは宝ものであふれた海で、自分の好きなものを探し、選んでいくのだろう。
それも、よき。
しかし、私は、夜中にVHSをセットし、ドキドキしながらみたあの映画たちを忘れない。
今はもう、あの夢のような場所はあとかたもないけれど。
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