恋人#15
恋人とは結婚までの踏み台だと、私は思う。
それは女が、男が、ではなくて、どちらも。
そして、踏み台にすることもあるし、踏み台になることもある。
他人を通して自分を知り、変えていくための踏み台だ。
よく、
「傷つけたくない」
とか言ってろくに話もせずに別れてしまうひとがいるけど、それはお互いにとってよくない。
人の身体もそうだが、じくじく長引く膿んだ傷より、ポッキリ骨を折ってしまったほうがあとあと丈夫になる。
そもそも、誰も傷つかない恋なんてひとつもない。
私は、恋人に依存を教えてもらった。
醜い自分の素の感情を教えてもらった。
別れた後は、いつも息ができないくらい苦しくて泣いて過ごしていたけど、1年もたてば別れてくれたことに感謝できるようになる。
恋人と別れて、自分を見つめなおすたびに、自分に戻って、自由になれた。
恋人といるのは、きまった箱の中にいて他を見ないでいい安心感を貪るペットになるようなものだった。
私はすぐに堕落する。
恋や、愛情を免罪符に、すぐに堕落して、その堕落した状態を受け入れるのも愛でしょうと押し付けていた。
それを何度も、何度も、何度も、繰り返すうちに、やっと自分のダメなところが解ってうんざりして、相手の中に自分の価値を見出してそれにすがるのをやめた。
そんな風にして、依存を諦めた時、結婚が決まった。
私の恋人は、夫になった。
もう、顔も声も、癖も、好きだったところも思い出せない恋人たちの屍の上で、私は幸せになった。
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