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観光事業が日本経済復活のカギになる
昨年の秋ごろから新型コロナの水際対策が少しずつ緩和され、インバウンド需要も回復し始めています。
本日は、観光事業について、世界各国と日本を比較しながら、今後日本が観光事業を伸ばすためには何が必要かを考えていきたいと思います。
下図は、コロナ禍前である2019年(令和元年)の各国・地域の国際観光収入ランキングです。1位が米国の1,933億ドル。2位はスペインで797億ドル。3位はフランスで638億ドルという結果です。日本は461億ドルで7位でした。(アジアではタイに次いで2番目)
■国際観光収入ランキング(2019年)
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※出所:観光庁「令和2年 観光の動向」
また、外国人旅行者の受け入れ人数では、日本は3,188万人で12位(アジアで3位)でした。受け入れ人数上位のフランス、スペイン、米国と比較すると、半分にも満たない人数です。
■外国人旅行者受入数ランキング(2019年)
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※出所:観光庁「令和2年 観光の動向」
観光収入の上位10か国について、①観光収入 ②外国人旅行者受入数 ③旅行者1人当りの観光収入 ④GDP ⑤GDPに占める観光収入の割合を一覧で比較すると、次のような結果になります。
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※観光収入のランキング順
※GDPは2019年を使用。「IMF - World Economic Outlook Databases」を参照。
「旅行者1人当りの観光収入」についてこの10か国の中で比較すると、一番高いのはオーストラリアで、4,826ドル、次に高いのは米国で2,439ドル、3番目に高いのはマカオで2,152ドルです。
1位のオーストラリアは2位の米国に2倍近くの差をつけており、「旅行者1人当りの観光収入」では群を抜いています。
「GDPに占める観光収入の割合」についてこの10か国の中で比較すると、一番高い国はマカオで72.6%、次に高いのはスペインで5.7%、3番目はオーストラリアで3.3%です。
一位のマカオはGDPの約7割を観光収入が占めているという特殊な数値ですが、2位のスペイン、3位のオーストラリアなどをみるとGDP比で2%~3%は現実的に実現可能な範囲であると考えられます。
日本は、外国人旅行者受入数は8位、旅行者1人当たりの観光収入は5位、GDPに占める観光収入の割合は米国と同率で9位という状況です。
観光収入は外国人旅行者受入数×1人当りの単価で決まります。
日本は外国人旅行者受入数も1人当りの観光収入単価も平凡な順位ですので、まだまだ伸びしろがあるとも言えます。
■日本が観光収入を伸ばすために
観光収入を伸ばすためには、(1)外国人旅行者受入数を伸ばすこと、(2)旅行者1人当たりの観光収入単価を上げること の2つがポイントです。
その2つのポイントについて、他の国の施策を学び、取り入れていくことで、日本の観光事業は活性化されると思います。
外国人旅行者の受入数については、上位国のフランス、スペイン、米国の共通点から、特徴を捉えたいと思います。
主な特徴は3つあります。
1つ目は、「観光客向けの情報サービスの充実」です。
フランスでは、政府観光局インフォメーションセンターで、10ヶ国語対応の旅行情報を手軽に得ることができます。また、フランス観光サイトでは20か国語以上に対応しており、季節の情報、イベント、地図、観光ツアー、美術館やコンサート、観光バス、ホテルの予約など様々な情報が手に入ります。
2つ目の特徴は、「政府のサポート」です。フランス政府は各地域に毎年3000万円程度の予算を補填しています。スペインでは、政府観光局が海外向けのプロモーションを積極的に行うことで観光収入を後押ししています。政府が資金面やプロモーション面など様々な支援をすることで、国全体で観光事業を育てる意識があります。
3つ目は、「ビジネス利用の多さ」です。特にフランスや米国では、展示会や国際会議の誘致を積極的に行っていることに加え、それと同時に、それらに参加した人向けに各観光スポットへのディスカウントチケットの配布や、ホテルを安く提供するなどのプロモーションを行っています。
「情報サービスの充実」、「政府のサポート」、「国際的な展示会や国際会議の誘致」等を行うことで、日本のインバウンドは伸びる可能性が十分にあります。
観光収入を増やすもう1つのポイントである「1人当たりの観光収入単価」においては、
オーストラリアが世界で1位です。
オーストラリアはかなり前から観光を「国を発展するための重要なビジネス」と捉え、他国では体験できないユニークで質の高い観光プログラムの構築と、世界に向けた効果的なマーケティング戦略を実践してきました。その結果、1人当りの観光収入単価では2位の米国に2倍近い差をつけるまでになったのです。
今後の日本が観光業界を伸ばしていくためには、オーストラリア式の「客単価を高める観光事業」から学べることはとても多いのではないかと思います。
円安という追い風もあり、日本は今、インバウンドを伸ばす絶好の機会でもあります。
政府と企業が協力して、観光事業を日本の産業の1つの柱にしていくということが、日本の経済を復活させるカギになるだろうと私は考えます。
インバウンドによって外国人旅行者が日本に来ることで、観光事業以外の産業にも様々な効果があります。
ぜひ皆さんも、これからの日本の観光事業にアンテナを立て、自分の仕事との接点を考えてみてはいかがでしょうか。