【レポート】アートプロジェクトを「伝える」ラボ in 岡山 開催レポート
ノマドプロダクションのパートナー事業として、アートプロジェクトを「伝える」をテーマとしたトーク/ワークショップを別府と岡山で開催しました!
※別府は「ベップ・アート・マンス2022」の登録プログラム。岡山は「岡山芸術交流2022」パブリックプログラム公募事業参加企画。
このうち、岡山に関しては参加者の有志でZINE「よりみち芸術祭 vol.2 in 岡山」の制作を行いました。芸術交流の会場(旧内山下小学校インフォメーション、または同体育館「Oil Drum Stage」脇)や参加メンバーの手により配布中です。「EDIT LOCAL LABORATORY」プロデューサーの編集者・影山裕
樹をゲストに招いて開催したトークの様子をレポートします。
秋晴れの午後、全国のローカルメディアや地域活動・情報発信に関わる人々が集う「EDIT LOCAL LABORATORY」の知見等を紹介するトークイベントを行いました。参加者は美術館職員、編集、ライター、デザイナー、PRなど10名。アートや地域活動、子育て中の女性と社会の繋がりなど様々なテーマのもと「伝える」活動に関わる方々で、そんな参加者に向けて、アートプロジェクトや地域の魅力を「伝える」ための知識やヒントを、アートプロデューサーの橋本誠さんと「EDIT LOCAL LABORATORY」プロデューサーの編集者・影山裕樹さんがお話しました。
橋本さんはアートプロジェクトの「記録」「アーカイブ」の必要性と制作のポイントを紹介。第一のポイントは素材集め!開催概要のほか、写真とエピソードをしっかり集めておくことで、記録も情報発信のクオリティも劇的にアップします。(これを書いている私自身アートプロジェクトの世界に飛び込んで最も衝撃を受けたのは記録の丁寧さでした)
制作のポイントを5W1Hにそってまとめてみると…
「なぜ?」アートプロジェクトを伝える目的は、宣伝や集客だけではありません。プロジェクトの意義やプロセスを、関係者や地域の人にもしっかり伝え「こんな事してたんだ」と知ってもらうことも重要です。プロジェクトの継続には自分たちの思いや活動を理解してくれる仲間が不可欠。「記録」はそのために必要な伝達ツールなのです。
「いつ?」最新情報を伝え続けたいならニュースレターや瓦版。活動の全容を伝えたいならプロジェクトの輪郭が見えた頃冊子を作るなど、伝えたいことと素材状況によって、制作のタイミングは変わります。
「誰が?」誰が書き手かもポイント。主催者が主体ならプロジェクトの社会的価値に重きを置くし、アーティストなら作品への思いや制作意図を大事にします。プロジェクトに関わる人の数だけ色々な視点があるはずです。
「どうやって?」「何を?」多くの人が関わるプロジェクトではその視点の多さを活かし、編集メンバーを募り雑誌のような本を作ったそう。コンセプトやイメージを伝えたい時は小部数で安く作れるフォトブックという手も。「よりみち芸術祭」のようなZINEも公式記録から零れたエピソードや課題をシェアするのに向いているかもしれません。
「どこで?」流通のさせ方も考えどころ。誰でも気軽に手に取れてお店にも設置してもらえるマップ形式や、書店流通、関係者への配布など手段は色々。ですが「どんな人に手に取ってほしいか?」を意識すれば流通のさせ方も決まるはずです。
続いてのお話は影山さんから。「ローカルメディアのおもしろさは視点もかたちも自由なこと」とたくさんの事例を教えてくれました。
たとえば、城崎温泉の「本と温泉」。温泉に浸かりながら人気作家・万城目学さんの書き下ろし小説が読めるという物で、城崎温泉に行かなければ読めないこの本は都心から感度の高い若者を呼び寄せ集客に大いに貢献したそうです。南房総市の「HEDATE PASSPORT」はスタンプラリーをベースにした冊子。「スナックでドリンクを注文するとママがスタンプをおしてくれる」などのミッションを達成したらスタンプがもらえる仕組みで、地域の人と移住希望者との関係を一歩深める仕掛けとなりました。
他にも、食材と一緒に雑誌を届けて都会の消費者と地方の生産者をつなぐ「東北食べる通信」や、100均のカゴを壁に貼ればまち中どこでも立ち呑み会場となる「裏輪呑み」など面白いアイデアばかり!しかし「裏輪呑み」のような企画も編集者の仕事なのでしょうか?そんな疑問に応えるように影山さんは言いました。「これからは『情報の編集』ではなく『関係の編集』の時代。人と人を繋ぐことで新しい価値を生み出し、コミュニティをつくる地域編集者が必要です」
ローカルメディアは異なるコミュニティを繋げるハブのようなもの。地域編集者はそのハブを活かして人と人を繋げるコーディネーターのような役割が求められているようです。だからこそ「誰と出会いたいか」を意識して「何を」「どんな形で届けるか」まで工夫することが大切になってきているのでしょう。
アートプロジェクトを伝えることと地域を伝えることは、よく似ています。そこに関わる人たちの言葉やプロセスに目を向け記録を残していくこと。その足跡や生まれかけている動きを、これから出会いたい誰かに届くように編集して世に出すこと。そして新たな人と人との関係を作ること。どちらも同じ役割が求められてます。なんだか大きな役割な気もしますが、「伝える」ことが新たな価値を生み出すことに繋がるのだと思うと、さて何から始めよう?とわくわくしてきますね。
南裕子…備前出身のフリーのPR/デザイナー。岡山と神奈川を行来しながら活動中。旅とアートと工芸が好き。
よりみち芸術祭 vol.2 in 岡山
2022年11月
発行:EDIT LOCAL LABORATORY アートプロジェクトラボ
執筆メンバー:えみおわす、永田直子、溝口仁美、橋本誠、南裕子