おすすめ本紹介:「ノマドのマドvol.33」より
ノマドプロダクションのメンバーが、ノマド界隈の皆様におすすめしたい情報を紹介していくシリーズ。今回は8/7に配信したメールマガジン「ノマドのマドvol.33」より、3冊の本をご紹介します。
記憶する体
自粛生活が長くなると、一日の時間の流れが以前とは変わり、それほど動いていないはずなのに、体は疲れていて重い。室内という殻に籠っていると、無意識のうちに精神的にも負荷が溜まり、それが外に出てくるようだ。そんな時に出会ったこの本。様々な障害を持った人たちとの対話と著者の分析を通じて、普段当たり前のように動かしている体に対する考え方が解体されて、言葉にしづらいことが言語化されていく。それはまだ解明されていない身体という「宇宙」の中を、著者の言葉を手がかりに探っていくような感覚だった。こういった時期なので、家の中でとことん自分と向き合いたい方におすすめです。
(奥村圭二郎)
ノーマの発酵ガイド
独創的な現代北欧料理で有名なデンマークのレストラン「ノーマ」。アリを食材にしたり、料理の高額さや、「世界のベストレストラン50」の1位に4回選ばれて予約が取れないなど、何かと話題の絶えない人気店。本書は、そのノーマの創始者である著者たちが、2014年に設立したラボで開発しつづけている発酵技術を公開し、一般の家庭にも取り入れてもらえるようにと、1冊にまとめあげたものです。7種類の発酵食品(果物と野菜の乳酸発酵/コンブチャ/酢/麹/味噌/しょうゆ/ガルム/黒フルーツと黒ベジタブル)の章に分けられ、100以上のレシピが掲載されています。が、心から食欲をそそられるレシピは見つかるでしょうか⁈ beforeコロナ期に刊行された本書。ノーマの食の概念は、噂に聞いていた通り食卓という日常をはるかに超えて、アートの域に突入しています。そればかりか、本書では、アートをも越え、そこは化学の実験室⁇ 飽くなき探求を続けるノーマのシェフたちにとって、ある意味日本の食文化は、発酵食品の歴史がつまった宝庫のようです。コロナパンデミックを経て、これからの人類の衣食住について思い巡らしていたところ、インパクトのある1冊でした。
(堀あいえ)
武器としての「資本論」
己の価値を「換算」しなければならない。働いたり、仕事を求めたりしていると、自分の全てがお金にすり替わっていくような、何とも言えない気持ち悪さを覚える時があります。本書は、マルクスの名著『資本論』から現代社会を読み解くもの。イノベーション。働き方改革。紙幣と電子マネーの決定的な違い。読み進めるうちに、19世紀にマルクスが看破した資本主義の機構が、現代社会にどれほど深く根付いているかが分かります。非正規雇用の増加やフリーランス化の進行といった現代の労働問題の背景にある、労働力の価値について詳しく論じられている点も、不安定な労働形態を強いられがちなアートの世界の人々にとって重要だといえるでしょう。そして、更に注目すべきは、労働力の価値の原点に「人間そのものの価値」があるという指摘。貧しくとも、スキルがなくとも、私たちは豊かさを享受することが出来る。この信念こそが、文化芸術の価値を裏付けてくれる、そんな思いを新たにさせられます。
(西田祥子)
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