新世界建築ープラスチックで3Dプリントした家
新世界建築
未来の人たちはどんな建物で生活をしているんだろう?未来の世界はどうなっているのだろう?誰でも一度はこんな妄想をしたことがあるのではないでしょうか。
建築クリエイター集団NoMaDoSでは、建築を自由に拡張して、未来を実験するために、様々なコンテンツを開発しています。
新世界建築は、NoMaDoSが様々な時代・環境・条件を妄想して生まれた世界観、緻密な居住キャラクター設定、そしてそこから生まれるかつてない自由な建築アイデアです。
アインシュタインはこう言いました。“Imagination is more important than knowledge. Knowledge is limited. Imagination encircles the world.”(空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。)
新世界建築によって、建築が持つ無限の可能性を皆さんに届けます。
プロローグ
NoMaDoSが空想と妄想のみで作り上げる、未だ見ぬ未来の建築「新世界建築」。今回は、記念すべき第1作目となる「プラスチックで3Dプリントした家」。時は2049年、人類が月と地球の2つに分かれて暮らし始めた、そんな世界の過渡期に地球で生きることを決めた人類の姿を描き、彼らが暮らす建築を作りました。
それでは、未来の世界に入ってみましょう!
ストーリー
2049年、月への移住が本格的に活性化した時代。月面モジュール開発のため、鉄資源をはじめとする鉱物資源が活用され、地上の市場価格が高騰していた。月面移住に対して及び腰だった富裕層も、初期居住者(通称「ムーンジャンパー」)として実験体となった賤民層たちが無事に生活できていることを確認すると、我先にと月面の土地と不動産権利を買い始め、次々と自家用ソユース(宇宙船)で移住をはじめた。月への移住のお陰で人類のテクノロジーにもとんでもないスピードで進化が起こった。
人類の考え方は2つに分かれた。未知の世界を探究したい、月面での雇用・起業チャンスを求めソユースの座席券を求める人々(通称「ムーンシーカー」)と、やはり地球を諦めたくない、変化していく地球の生活にフラットに適応しようとする人々(通称「サードパーソンズ」)の二種類の人々が暮らしている。
その時、変わるのは人類の生き方だけではない、同時に、地球の自然環境も変化した。人類が月に恋焦がれるにつれて、地球の自然環境への意識は薄れていった。ある日、奇しくも繰り返されるゴミの不法投棄が、新たな「自然」を生むことになる。海に投棄された廃プラスチックがインド洋渦流に流されて、新しい島ができたのである。
(北緯11°14'44.1" 東経 87°38'14.4" のあたり)
ムーンシーカーらの熱狂する空気に辟易したサードパーソンズは、自然とその島に集まり始めた。自分たちの生み出したモノが原因で生まれた環境問題に対し、自分たちが生み出したモノで解決しながら生きていく道を見つけたのである。
変化していく地球の生活に適応しようとする建築も生まれた。新しい建築は壁・天井の継ぎ目のないモノコックの形。直立する壁で空間を分けるのではなく、くびれにより大小の空間を形成する構成、機能ごとに独立した分棟型である。津波対策で、建物地震がぷかぷか浮いて流されていく。上部トップライトはトップライトユニットを用いて、躯体とシーリングし、一般建築と同様に防水・止水性能を確保している。
そして、強度の異なる廃プラ樹脂繊維による短繊維補強プラスチックでは、中性化で鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートが剥がれるという典型的な劣化はプラスチック造では起こらない。また、繊維補強を行い、靭性を高めることにより、せん断応力や引張応力の作用によるひび割れ対策となる。地震時の応力に対して余裕が生まれるように、圧縮力が支配的な形態とし、壁量・壁厚に余裕を持たせる骨のないモノコック構造としている。
このようなプラスチック建築が生まれていく過程で、人々は経済活動を展開していくこととなる。島に創業された廃プラスチックのみで作られるアパレルブランド「transparent」。廃プラスチックを3Dプリンタでファッションに変え、エコサイクルを生み出すアパレルブランドである。創業者はクロエ・ウィルソン。
ブランド名の「transparent」(「透明」)には、この世界に積み重なった廃棄物を消し去りたいという想いと、人類が自分たちの過去に対して透き通った心と目で向き合ってほしいという願いが込められている。
クロエ・ウィルソンは、次のようなコメントを残している。「人類は、常に”時代の分岐点に自分は存在している”と思い続けてきました。私もそのうちの一人です。自分たちの生み出してきたものを捨てるのは簡単なように思えるかもしれません。ですが、本当のところは、大変難しいことなのです。自分が作り出してしまった過去というものは、私たちが生み出したいと思っていた未来の残り香のようなものです。つまり、過去を捨てようとすることは、自ら未来を捨てようとすることと同じことなのかもしれませんね。私がこの島で生み出したブランドの名前「transparent」には、「透明」という意味合いがありますが、これはこの世界に積み重なった廃棄物を消し去りたいという想いと同じくらい、人類が自分たちの過去という未来に対して透き通った心と目で向き合ってほしい、という願いを込めています。」
クロエのように、「ムーンシーカー」も「サードパーソンズ」も、環境の変化にあわせて様々な挑戦をしているのだ。
【居住者】
クロエ ・ウィルソン
年齢:28歳
出身地:オーストラリア・ケアンズ
職業:「transparant」オーナー
オーストラリアで人気コスメブランドのPRプランナーとして活動していたが、化粧品に使われる化学製品の人々に与える影響が気になり、サードパーソンズのライフスタイルと哲学にシンパシーを感じるようになる人の手によって自然環境を再活性したいと、島への移住を決め、廃プラスチックを活用したアパレルブランド「transparent」を創業する。
【建築情報】
用 途 : 廃プラアパレルブランド
「transparant」旗艦店
所 在 地 : ベンガル湾沖
敷地面積 : 約10,000㎡(島の面積)
建築面積 : 19.63㎡/棟
床 面 積 : 19.63㎡/棟
階 数 : 平屋建て
構造種別 : プラスチック造
施工方法 : 3Dプリンター使用
仕上材料 : 躯体表し、廃プラスチック
【意匠・構造】
廃プラスチックを再利用して作られる樹脂を基材に3Dプリントされた建築物。コンクリートよりも強度の高いプラスチックのみで形成された軽量で強い構造体。3Dプリンタの利点を活かし、壁から屋根までを曲面で連続させた「モノコック構造」にすることで、柱・梁がない広く伸びやかな空間を形成する。また、無人での建設が可能なため、立地条件に左右されることなく、安価な施設展開が可能である。
【電気設備】
太陽光発電プラントや海水ろ過の水流によってタービンを回し、小型の水力発電を行い、その電力を各棟へ供給する。また、建屋ガラス面の表面に透明な太陽光発電装置を設置し発電も行う。照明設備も壁面に内蔵した意匠と一体化した構造が特徴である。
【空調・換気設備】
建物の壁面・床面にあらかじめ内蔵された配管によって輻射冷暖房する。その際、雨水から作った水や海水から作った水を利用する。換気は、主にあらかじめ壁体内に設置されたダクトによる自然通風。利用者が開閉できる仕組みにして、通風したい時に通風できるようにする。
【給排水・衛生設備】
エピローグ
いかがでしたか?
プラスチックで3Dプリントした家って、なんだか遠くはない未来に実現できそうな建築ですね。
もしあなたがこの世界で生きていたら、どんな選択を選ぶでしょうか。
月へいこうの「ムーンシーカー」?それとも地球に留守する「サードパーソンズ」?
次回は、イタリアでナノロボットと共に暮らす生活を描きました。もし自己意識を持っている街があったらどんな感じでしょうか。
NoMaDoSのイマジネーションワールドはまだまだ続きます。お楽しみに!
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※この物語はフィクションです。登場する地名・技術・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
企画・コンセプト:NoMaDoS田中
イラスト:NoMaDoS乙坂
編集:NoMaDoS田中
意匠設計:NoMaDoS千葉、乙坂
設備設計:NoMaDoS高橋
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