新世界建築ー機械とともに「自律」する街
未来の人たちはどんな建物で生活をしているんだろう?未来の世界はどうなっているのだろう?誰でも一度はこんな妄想をしたことがあるのではないでしょうか。
建築クリエイター集団NoMaDoSでは、建築を自由に拡張して、未来を実験するために、様々なコンテンツを開発しています。
新世界建築は、NoMaDoSが様々な時代・環境・条件を妄想して生まれた世界観、緻密な居住キャラクター設定、そしてそこから生まれるかつてない自由な建築アイデアです。
アインシュタインはこう言いました。“Imagination is more important than knowledge. Knowledge is limited. Imagination encircles the world.”(空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。)
新世界建築によって、建築が持つ無限の可能性を皆さんに届けます。
ほのぼのとしたポストヒューマニズム世界
NoMaDoSが空想と妄想のみで作り上げる、未だ見ぬ未来の建築「新世界建築」。今回は、第二作目「機械とともに『自律』する街」。
ある日、ヴェネツィアの海を回遊し続けるナノマシンが街と融合した。建築物にプログラムが溶け込み、街が人を導くようになったとき。
人は、生活は、一体どこへ向かっていくんだろう。
ナノマシンが街を食べ尽くした
大気汚染や地盤沈下など、多くの課題を抱え続ける文化遺産の街・ヴェネチア。中でも、とりわけヴェネチアの人々を悩ませ続けてきたのが「水害」と「水質汚染」。ヴェネツィア湾では、大潮と低気圧にアドリア海の東南から吹く風「シロッコ」が重なると、異常潮位を起こす高潮「アックア・アルタ」が起こり、ヴェネチアの街は浸水してしまう。その結果、長年の間、ヴェネチア湾には街の生活排水が流れ、水質汚染が問題視され続けていた。
それに対し、政府がとった策が「MOSE計画」だ。「アックア・アルタ」の被害をおさえるため、島の周囲に海水の侵入を防ぐ可動式ゲートを張り巡らせる国家プロジェクトである。
2000年代初頭から始められたこのプロジェクトだったが、建設はなかなか進まず、ようやく完成をみたのは2022年の夏。ナノ技術を用いたIoTマシン「NOAH」を大量製造し、「流れの生成と浄化」というプログラム付与のもと、ヴェネチア湾に投下する。
しかし、完成をむかえた住民たちを待っていたのは「水質汚染の激化」という更なる不幸だった。ゲートの影響で潮の流れが変化し、島の周囲で海流が止まった結果、水生生物が生息地域を離れ、水質汚染を悪化させてしまったのだ。ゲートの影響で潮の流れが変化し、島の周囲で海流が止まった結果、水生生物が生息地域を離れ、水質汚染を悪化させてしまったのだ。
そこで、MOSE計画の次のプロジェクトとして始まったのが「NOAH計画。」ナノ技術を用いたIoTマシン「NOAH」を大量製造し、「流れの生成と浄化」というプログラム付与のもと、ヴェネチア湾に投下する。そんなテクノロジーによる有機的な水質浄化プロジェクトは2030年に実施され、異常ともいえるスピードで効果を見せることとなる。
2035年には、水質は完全に改善し、水生生物もその姿を多く確認できるようになったため、ヴェネチアはまさに<水の都>の名にふさわしい都市へと生まれ変わることができたのであった。
ところが、投下されたNOAHたちは、目的を失ったことで、突如水中から水上へとその姿を現すこととなる。襲われるのではないかと、当初は恐怖心を示したヴェネチア住民たちだったが、予想外にもNOAHたちは人間を襲うことはなかった。驚くことに、なぜか街中の建築物の壁にくっつき始め、徐々に壁を侵食し、自らの身体を建築物と融合させてしまったのである。
その後もNOAHたちは街中の建築物・インフラと同化し続けた。そしてとうとう、歴史ある街ヴェネチアが超最先端テクノロジーNOAHにすべて入れて変わってしまったのである。その後、NOAHとなったヴェネチアでは、世にも奇妙な現象が起こることとなる。ある時、歩道が急に盛り上がれば、またある時には、座っていたベンチが急に崩れ落ちたり。家の中で床に座ろうとしたときには、突如床から椅子が出てくる。ついには、建築物同士が同化するといった現象まで起こり始めたのである。
その後、NOAHとなったヴェネチアでは、世にも奇妙な現象が起こることとなる。ある時、歩道が急に盛り上がれば、またある時には、座っていたベンチが急に崩れ落ちたり。家の中で床に座ろうとしたときには、突如床から椅子が出てくる。ついには、建築物同士が同化するといった現象まで起こり始めたのである。そんな現象に対し、マサチューセッツ工科大学メディアラボの特別チームが以下のような研究結果を発表している。
「おそらく、自身に組み込まれていた『流れの生成と浄化』のプログラムによって、NOAHが『地上における流れと負の浄化』を次の目的として自己設定したのではないかと思われます。地上における流れとは『人間の物理的な動き』と『人間関係の創出と分岐を促進することで発生する心理的な動き』です。ゆえに、NOAHは人間の2方向の動きを生み出す起点となる『建築物とインフラ』に同化したのではないでしょうか。ひいては、地上における一番の『負』、すなわち『戦争』の原因である人間同士の理解不足を『接点と会話の増加』によって浄化しようとしているのではないでしょうか。今ヴェネツィアで起こっているのは、NOAHによる『人間の流れと浄化を生み出すためのテスト』なのではないかというのが、我々の見解です。」
この世の一部の人は未だにNOAHの事を恐れていたが、そういうわけで、ヴェネチア市民とNOAHの共同生活が始まった。
この街に住む少年
ヴェネチアには、ノア・ビアンキという名前の17歳の少年がそこに住んでいる。彼はNOAHがヴェネチアの街を覆って以降生まれたN世代(N世代=NOAH世代)の3世。現在は、ヴェネチアにある高校に通っている。
物心ついたころからNOAHとともに過ごしていて、祖父母・両親からNOAHのなかった時代の話を語り継がれる中で、自分の名前との繋がりもあり、NOAHと自分はどこか心で繋がっているのではないかと信じている。子供の頃、周囲の大人や同級生たちにその感覚を打ち明けてバカにされて以来、誰にもそのことは打ち明けないようにしている
ナノマシンが作り出す有機的な建築空間
ナノIoTマシン「NOAH」が既存の石造りの建築物を侵食し、自分自身を建築物および都市インフラの素材として入れ替わりを果たしたもの。
その意味では、建築物ではなく機械集合構造物という呼び方が正しい。
水質改善という従来の目的のために設定された「流れの生成と浄化」のプログラムに従い、街に存在する人間の物理的な動き、そしてコミュニケーションによる人間関係の浄化を生み出す現象を引き起こしている。
完全独立自動駆動の仕様が採用されており、光・熱・衝撃を効率的に電気エネルギーに変換する機関を備えている。
プログラムが起因し、人々のモビリティ性を高めようと、街中のいたるところで電気プラグや水道栓を生成し、人々がどこでも設備利用ができるような環境を生み出している。
生活設備もモビリティ&コネクテッドな時代に-モバイル設備
ナノマシンにより自動増殖する街となった今、固定的な環境設備は意味をなさなくなった時代。人々は「環境設備を持ち運ぶ」という次元に達した。
このような時代となる前、「タスクアンドアンビエント」という考え方が流行し、人々は個々の感覚に合わせて調整可能な空調・照明設備を求めていたが、あくまで利用は1地点に限られ、固定的な設備にとどまった。
現在は、自動で増殖する予測不能な街に合わせるため、「環境を持ち運ぶ」といった、より高次元の「タスクアンドアンビエント」な設備が提唱されている。
[電気設備]
モバイル設備ポータブルエアコンにはソーラーパネルと照明が内蔵されており、それ自体で常に電気を作り出し、必要な個所を照らせる。
[空調・換気設備]
超小型ヒートポンプの開発により、それを持ち運ぶことで、どこでも好きな時に冷暖房できる。
また、あらかじめナノマシンによって壁面の開口などは取れる仕組みのため、最低限の外気のみ取り入れ、自然換気によって通気を行う。
[給排水・衛生設備]
風呂・トイレ・キッチンなどの水回りが一体となったユニットを移動させることで、自動的に変化する街に合わせて住み方を変えられる。
アップデートし続ける新世界建築
いかがでしたか?
今回みたいなナノマシンが登場するストーリーって、ディストピアをテーマにする映画やドラマが多くなりがちですよね。
だから今回の新世界建築では、ナノマシン達と共に生きるストーリーを、ポジティブでコメディチックな形で描きました!
ナノマシン達は本当に悪戯が大好き。彼らはいい近所の友達にもなりえるけど、気をつけないといけません。
でもナノマシンがいるだけで、ヴェネツィアの生活は絶対飽きない。実際タスクアンドアンビエントで、凄く便利なマシンですからね。
実は、今回のキャラクターには裏話があって。コンテンツ完成の直前まで、もう一人女の子のキャラクターがいたり、彼らが登場する小説があったりしたんですよ。いつかどこかで公開できたらいいなと思っています。
次回は、風の力を借りて生きる民族集落がある新世界へ旅してみたいと思います。
お楽しみに!
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※この物語はフィクションです。登場する地名・技術・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
企画・コンセプト:NoMaDoS田中
イラスト:NoMaDoS乙坂
設備設計:NoMaDoS高橋
note版編集:NoMaDoSカイ
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