一番星のウマれ変わり 【SdT_3】
五月晴れのある昼下がり、宮崎国際音楽祭の中では一番、全体がバタバタしているけれども、Tの担当的には最も穏やかに進行していたリハーサルの舞台袖で、突然、舞台技術のスタッフから三択を迫られました。
「Tさんはさ、うまれ変わるとしたら、次のどれが良いの? 1.サラブレッド 2.御崎馬 3.ポニー」
そもそも何故その三択なのか、…ていうか何の脈絡もない唐突な質問でしたが、
県劇のウマおじさんことTに対しては、「とりあえず馬の話をしとけば上機嫌」というのが定説になっているので、特に不思議なことではありません。(もちろん、【推しの子】とも無関係な質問だったでしょう。)
その時、確信は全くないものの、咄嗟に
「…御崎馬、かな…」と応えました。しかしこれは考えれば考えるほど、難しい問題でした。
今でもその質問をたびたび反芻します。いや、馬は反芻しないから、違うな。…その質問を食べては出し、食べては出し、しています。それが土地を豊かにしていると信じて。
御崎馬は、本当に不思議な存在です。
追ってこのnoteでもご紹介する秋田さんや木直さん、その他多くの方が、岬の外から来て、
都井岬で、御崎馬と出会い、こんな馬がいるのだ、こんな場所があるのだ、と驚愕をします。
(そして、都井岬に生きることを決意するのです。)
Tもまた、そうでした。
驚愕し、何か奇跡的なものを感じました。それが『avec Toi』の奇跡性にも繋がっていると感じます。
(ところで突然気づいたけど、驚という字にも馬がいますね。カワイイ。新馬戦Make debut!のパドックで、暑さ対策のミストにいちいちビックリしてる2歳馬たちを思い浮かべてニヤニヤが止まりませんカワイイ。)
御崎馬の在り方、特にその、人との関わり方を、Tはふと、山手線内みたいだと口にしたことがあります。
その時に、木直さんが、その場の誰よりも強く共感されていたように感じたことを、よく覚えています。
Tの感じた御崎馬の特徴は、「無関心」。
それが、全く相いれないようにも思える山手線内と都井岬を、一瞬、結び付けたのでした。
Tがそれまで知っていたおウマたちは、人懐っこかったり、気位が高かったり、
…それは勝手な思い込みで(自分の見たいように)擬人化するようだけど、そうでなくても、
性格や、こちらに対する気持ちが見える、見て取れるような気がする、そういう反応を示すものでした。
これが逆に、完全な野生動物とかだと、警戒して逃げるか、相手によっては威嚇してくるか、だと思います。
劇場が位置する文化公園内で、よく昼休みとかに、なんか啄ばんでる鳥を見かけて可愛いなと思って近寄っていくんですが、キャーって逃げられてしまって悲しい。
御崎馬は、そのどちらでもないのです。(でも、くれぐれも、あまり近づき過ぎないでください!これについても追って、世良田さんの話と絡めて、早めにお伝えしたいと思います。大事な話なので!ね)
こういう生き物はあまり見た記憶がない。
エサをくれるわけでもないから、近寄ってもこない。(エサ、あげないでください!ね)
でも、別に逃げもしない。路傍の石を見るよう、いや、見すらしない。草は食べれるけど、たぶん草以下。
食べれもしないし、役にも立たないし、特に害にもならない。ふうん。知らん。関係ない。といった感じ。
冒頭の「うまれ変わり」のやり取りで、「御崎馬…」と暫定的な回答をした際、別の舞台スタッフから、
「でも、御崎馬は、交通事故に遭っても、何もしてもらえないよ?」と言われました。
ちょうどその頃、岬内で、御崎馬が交通事故に遭って、ニュースになったのです。
その後の対応は少し複雑な変遷を辿りましたが、それは、今ここで書くには少し長くなり過ぎます。
追って、丁寧に触れることができればと考えています。
ひとまず、タイトル『avec Toi ――馬がいて、人がいて、そしてまた馬がいる――』とキービジュアルのお披露目のタイミングで公開した、この公式note、
まもなくチラシも完成し、内容についてもいろいろお知らせできるというところで、
その前に、せめてタイトルとキービジュアルについてのことを書きたいのですが、なかなか辿りつきません。もう少しだけ、そこに向けての助走(与太話)に、お付き合いいただけたら幸いです。
御崎馬は、走る姿をTはあまり見たことがないので、助走しているところも見ないけれど、
日がな一日(16時間くらい?)食べ続けることで、膨大な量の除草をしています。そして出す。
(つづく)