ウフラボ・平野由記さんと、フライヤー 【SdT_16】
前回から、だいぶ間が空いてしまいました。…が、ついに!
フライヤー(チラシ)が完成しました! やったー!
実物がお手元に届いた方には、ちょっとしたお楽しみが…。
そうでない方は是非、こちらからダウンロードしてご覧ください。
さて、このフライヤーにも、たくさんの奇跡がありました。
デザインをお願いしたのは、ウフラボの平野由記さん。
劇場でも今年度の年間パンフレットなど、何度かお世話になっているデザイナーさんですが、Tは今回初めてご一緒しています。
【SdT_10】にも書きましたが、『avec Toi』でTが最初に出会ったアーティストがスズキトモミチさん、そして最後に出会ったアーティストが、平野由記さんでした。
平野さんと一緒にSEABISCUITを訪ね、スズキトモミチさんと打ち合わせをした後、
都井岬内を一通り、一緒に見て回りました。Toiを五感で直に感じてもらうこと。
それはもちろん、このプロジェクトを一緒に進めていくにあたって、とても大切なことです。
その帰り道、Tは初めて、Apple Pencilを失いました。それが、その後に続く惨事(pencil連続失踪事件)の始まりでしたが、それは置いといて。
ほどなくして平野さんからあがってきた『avec Toi』のタイトル文字デザイン案。
まずは3案いただいて、正直、とても悩ましかった!
特にA案とB案が、どちらも捨てがたくて。
結果、A案をベースに現在の形が完成し、B案は、失われた可能性となりました。
アーティストによっては、それは見せたくないものかも知れません。
でもTは、様々な異稿も含めて、あり得たかもしれない可能性に想いを馳せるのが好きです。
そこで何が選択され、決断されたのかを、感じることも。
多くの場合、そこには、作者だけの決断ではなく、今回にしても、我々の選択が大きく関わっています。
多かれ少なかれ、それが良いことか悪いことかも別にして。
そんな若干の悔恨?呵責?とともに、(実際のデザイン案をここでお見せすることはしませんが、)
平野さんに了承いただいて、タイトル案に付記されたご自身のコメントを紹介したいと思います。
A案:
実際に都井岬を訪れたことで、人間が謙虚に自然に合わせた暮らしを感じました。
そこで、小枝や草、実を使ってシルエットを使い、自然と人間の文化が混ざり合うイメージをつくりました。
B案:
A案に同じく、自然と寄り添うことをイメージし、手書きの文字を使用しています。
土に指で書いたようなラフな線とかたちで、何者かからのメッセージのように感じます。斜めの文字列は高低差のある岬全体の様子です。
「Toi」の「T」は目と耳をつけて馬に、「i」は人をイメージさせます。タイトルの中に馬と人が存在しています。
(C案については紙幅の都合上、省略)
正直に言うと、Tは、この時のA案に参考として付された、「実際にひろった木や草」で形作られた「avec Toi」の写真が、とても素敵で、何とかこれを生かせないだろうか、と思ったのでした。
草の色、枝の質感、影、匂いまで漂ってきそうな、…そんな文字に、心打たれました。
一方、B案のアイデアは、Tを歓喜で小躍りさせました。「T」の文字が馬に成る、というアイデアは、そこだけをとるなら、他にも目にすることのあるものでしたが、「i」が人間となると、これはTも全く思いもよらなかったアイデアで、…だって、これはまさに、「Toi(都井)」の中に「馬がいて、人がいて、…」をそのまま表している! 間にある「o」も、何やら意味深に思えてくる!
そして、その中で、「T」の馬だけが大文字であることも、Tを最高な気持ちにさせたのでした。
果たして、細々とした修正や相談を経て、A、B、それぞれの修正案が再びあがってきた時、
B案の馬(と人)は、さらに可愛くなっていて、「え? 私たちを選ばないの?」って訴えかけてくるようで、単体であれば、もしかしたらこちらを選んでいたかも知れません。
でも、スズキトモミチさんの表紙のビジュアルの中に入った時、Tとショータくん、そしてコトリさんも、最終的に、A案を選んだのでした。
Tはそこに風を感じたのです。都井岬で感じる、あの印象的な、風。
Tは、B案の「都井の中に馬と人がいる」という驚きと可愛さともに、平野さんのコメントの、「何者かからのメッセージのように感じます」という言葉に、とても心を動かされていました。
たぶん、その「何者か」は、B案で平野さんが言うように、土に指でメッセージを残したかも知れない。
でも…!
Tは、その「何者か」は、土にさえ、跡を残さなかったんじゃないか、と思ったのです。
それすら、してはいけない、と自らに課して。
ただ、そこに落ちていた草と小枝と実で、メッセージを残した。
それは、都井岬に流れる強い風で、あっという間に吹き飛ばされてしまうのでしょう。
そんなメッセージは、誰にも届かないのかも知れない。
でも、その「何者か」は、希望を託したんだと思います。
誰かには、きっと、伝わってくれる。
その、「きみ」とともに。
その、「Toi」の中には、今も永遠に、馬と、人と、そして、その間をつなぐように、「何者か」が、
…それは黄金虫なのかも知れないと思うのだけれど、
生き続けているんだと、Tは思うのです。そうやって、Tの中で、可能性は生き続けているのです。
(つづく)
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