肉切りを断る勇気
宗教上豚肉は食べられないとか、宗教上牛肉が食べられないという人々がいる。
そういった国から来た外国人観光客の主張は認める物の、
私は肉はあんまり食べないし、肉の塊を毎日沢山切る仕事は抵抗がある。
ステーキなど料理ではない。
と、仲居のお姉さん達は言う。
旅館やホテルの料理には必ず鍋が出てくるが、連泊だと鍋のかわりにステーキが出る事がある。
水色の固形燃料を使った卓上の一人用の鍋。
フライパンの柄の無いやつみたいな物へただ肉と野菜が乗せられる。
鍋の場合は出し汁を入れる事もあれば
水に昆布を入れるだけの場合もある。
お客さんが来たら、カエンに着火マンで仲居が火をつける。
もはや料理しているのはお客さんだ。
ステーキも同じ原理で、ただ肉が乗せられた耐熱の皿を固形燃料で加熱するだけだ。
そういう物を出す所に限って、うちは他の所とレベルが違うんだ。と横柄な態度で接してくる。
とある山小屋でもステーキを出していた。
ただ肉を乗せるだけ。
元々肉はたいして食べないし魚より旨いと思わない。
ましてや、牛の存在を感じる塊肉をひたすら切る仕込みばかりやらされるのは苦痛だった。
他の人と変わってくれ、と思うが、もう一人私と同日入山の子も肉が苦手で食べないし切りたくないと言う事で、私が切る事となった。
そんな所でい良い人である必要など全く無いのだが…。
豚を飼っていたら絶対豚肉を切る仕事は断る。
牛を飼っていたら断る。
豚も牛も飼っていないが、
心理的にキツイタイミングだった。
49日にまで肉切りをやらされそうだったので
鈍感でKYな従業員に恨みすら覚える感覚だった。
これは動物の肉じゃない、
嫌な人間の肉だ、と言い聞かせて耐えた。
が、49日には下山する事を決めた。
そして若い小屋主の逆鱗に触れた。
切れるがいい。
山小屋で誰もステーキを求めていない。
私だったら、ステーキならば自炊で良いと思ってしまう。
日本はまだまだ頭の硬い人が多い。
労働者の事情を全く無視して自社のために尽くせとは、良く言えたものだ。
雇用者失格だろう。
宗教上の都合なら認められる。
が、おそらくあの山小屋ではヒンズー教でも牛肉を切らせるだろう。
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