【大自然からの贈り物】
〜産卵のため帰ってきてくれた、鮭の娘たち〜
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生まれも育ちも北海道の私にとって、鮭はもっとも親しい魚である。
おにぎりのタネは大人になったいまでも、塩鮭と筋子がいちばん好きだ。
料理上手の母はふだんの食卓でもサーモンムニエルやチャンチャン焼きなどの美味しい鮭料理をつくってくれた。
とくに母のイクラ醤油漬けは絶品で、それを手巻き寿司で頬張るときの至福。
今年の秋も送ってくれ、私は自然農法で自分で初めて育てたコシヒカリの新米にのせ食べた。
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鰤が北陸の人々にとって特別な魚であると同じように、鮭は北海道民にとってやはり特別の存在である。
秋になると、北海道のほぼ全域でシャケ漁が一斉にはじまる。
新千歳国際空港近くの千歳川では、採卵用の鮭を捕獲するインディアン水車がぐるんぐるん廻る。
そして年末、市場や市内スーパーには年越し用の新巻鮭の木箱が高く積み上げられる。
懐かしいふるさとの冬の風物詩である。
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狩猟を営んだ北海道の原住民族アイヌにとって、鮭はさらに「特別な」存在であった。
深い雪に閉ざされた長く厳しい冬、囲炉裏で炙られた鮭の干物はなにより貴重な食糧として。
アイヌはその皮を加工し、靴や衣類などの生活用品もつくった。
また鮭の干物は、倭人(日本人)や周辺民族との交易における戦略物資でもあった。
アイヌが鮭を「神の魚」(カムイ・チェプ)と呼んだのは、極自然なことだと思う。
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考えてみれば、体長80㎝にもおよぶ巨大な魚を舟で大海に出ることなく捕獲できること自体、奇跡に違いないだろう。
鰤や鰹がわざわざ広い海から狭い川に来てくれて、大挙して捕まってくれる話など、聞いたことがない。
今日の午前中、手取川で捕獲された2尾の美しい雌鮭のお腹は、たっぷりの卵で膨らんでいた。
4年前に稚魚でここで放流され、大海原を渡り、ふたたび生まれたこの川に帰ってきてくれたのだ。
まさに、「大自然からの贈り物」である。
@手取川河川敷にて
手取川「サケ有効利用調査」事業