我が愛しの“レディー上海”
【SHORT STORY】
『Merry Christmas ! , Lady Shanghai』
10余年ぶりに再会した彼女は、魔法のように若返って見えた。
「元気そうだね。いまは何て呼べばいいんだい?Mrs.フェアーモント?」
彼女はエレガントに微笑んで、何も語らなかった。
僕はすこし、バツが悪くなった。
「ほんとう10年なんて、あっと言う間だ。。小学生だった息子も来年、高校卒業だし。。おかげでだいぶ白髪が増えたよ。」
なんて冴えない会話だろう。
このままだと自滅パターン。。
想い出のクラシック・ホテルバー。
名物楽団「OLD JAZZ BAND」の演奏が始まった。
プレイヤーのお歴々は、お年がお年だけにスイング感はほどほど。
“骨董品の味わい”と云えば、良いだろうか。
「いま、金沢で働いているんだ。とても素敵なまちだよ。歴史や文化が深くて四季を通じて美しい。人びとは親切だし。。そして、食べ物や日本酒がとても美味しいんだ。」
「最後はとくに、貴方にとって重要なことね。」と彼女の眼が微笑んでいた。。
2014年上海でのChristmasイヴ。
忘れられない夜になった。
いつかまた、このBARでの再会を約束して、そのクラシック・ホテルをあとにした。
そう彼女の昔の名は「和平飯店」、またの名を「PEACE HOTEL」。
中国で一番幸せなホテルだと、僕は思う。