ふたたび号泣する準備はできていた。
【年末年始、自宅で映画三昧】
『チョコレートドーナッツ』(トラヴィス・ファイン監督 2012年)を6年ぶりに Amazon primeで観た。
やはり、傑作である。
70年代の米国ブルックリンで実際にあった、ダウン症の障害を持ち母親から育児放棄されている少年と、家族のように暮らすゲイカップルの話。
登場人物たちはみな、いわゆるマイノリティー。
世間の差別と偏見に立ち向かい、さらに「家族として暮らす権利」を裁判で争うストーリー。
米国人好みの“法廷モノ”として多くのツボを押さえた本作品は、公開当時ロングランヒットを記録し、大きな反響をよんだ。
そして今日のLGBTをめぐる状況、すなわち「性の多様性」の社会的是認を求めるムーブメントの一翼を担ったとされている。
このように強いメッセージを持った作品であり、日本では今年舞台化もされ、いまなおチョコ・ドナファンは増え続けている。
私自身もふたたび観て、“人生を愛し、自由に生きることの尊さ”に心震えた。
なかでもゲイバーのショーダンサーで日銭を稼ぐルディ役Alan Cummingの演技と歌は、本当に素晴らしい。
家族3人が海辺やハロウィンパーティーで愉しく過ごす情景を記録した8(エイト)ムービーのシーンも、ことのほか美しい。
愛すること。
愛されること。
自分の心のまま、
自由に生きること。
そのためには時に、
勇気をもって闘うこと。
そして、許すこと。
価値ある人生を過ごすために大切なことを教えてくれる、私にとって宝物のような映画である。
原題は『ANY DAY NOW』(いつか、たった今からでも)。
それにしても、ラストシーン。
ステージで心の叫びを唄うルディと、養護施設を抜け出し夜の都会を彷徨うマルコ。
深みのある演出がまた心憎く自宅で一人、ふたたび号泣してしまうのである。