全国の自治体で急務となった 新しい終活支援とは? その3(全3回)
最終回となる第3回は、令和2年の国勢調査の結果、65歳以上の高齢者人口に占める単身世帯の比率が全国1位となった東京都豊島区への取材を通して、今後、自治体の規模(市町村)に関わらず必要となる終活支援事業のヒントを紹介します。
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全国1位の単身高齢者比率の東京都豊島区では?
豊島区では、令和3年2月15日より「豊島区終活あんしんセンター」を開設し、令和4年4月1日からは「豊島区情報登録事業」を行っております。この2つの事業の内容について、東京都豊島区役所及び業務委託先である豊島区民社会福祉協議会の各担当者への取材の結果を踏まえて説明したいと思います。
1 「令和4年度終活サポート事業(相談状況)」について
東京23区で初めて開設された「豊島区終活あんしんセンター」は、豊島区内に住むおおむね65歳以上の方とそのご家族を支援対象としています。同センターでは、区民の方々の相続・遺言、葬儀やお墓などの終活に対する不安や悩みを解消するため、その方に応じた情報提供を行っており、必要に応じて弁護士、司法書士など専門家への無料相談へ繋いでいます。ポイントとなるのは、社会福祉協議会が事業の委託を受けていることから様々な福祉事業と連携が取れることです。
(1)相談状況(令和4年度)
① 年間延べ件数 826件
② 相談内容(重複あり) 合計1132件
多い相談内容として、以下となります。
1位 エンディングノートの書き方236件
2位 相続・遺言152件
3位 終活登録相談150件
(2)豊島区作成の「終活あんしんノート」の配布と活用の後追い調査
このノートは、豊島区オリジナルの作成であり、弁護士と医師の監修のもとに、計3000部が作成され、既に2600部が区民等に配布されています。特に注目したいことは、ただ単に配布しているだけでなく、このノートの書き方講座や出張講座を開催していることです。区の広報紙で講座受講の募集をしたところ、募集開始初日でほぼ満席となるほど盛況となっております。こうした講座開催の背景となったのは、ノートの活用について後追い調査の結果、置いたままの状態である方が多かったことによると伺いました。
2「豊島区終活情報登録事業」の内容と特徴
令和4年4月1日から、「終活情報」の登録受付を開始しており、ご本人の緊急連絡先など9項目の終活関連情報をご自身に選んでいただいて、その情報を誰に伝えたいかも含めて登録が可能となっています。登録された情報は、ご本人が病気・事故等で意思表示出来なくなったとき、親族や関係機関からの照会に基づき開示します。ポイントとなるのは、個人情報保護について事業設計の段階から重視している点です。この結果、ご本人(または成年後見人)が身分証明を提示して初めて登録が可能となります。コラムその2で紹介した横須賀市では、電話一本での登録も可能となっておりましたが、豊島区では制度設計の違いが表れています。
(2) 登録できる内容(9項目)
① 緊急連絡先
② 本籍
③ 通院先・アレルギー等
④ リビングウィルの保管場所
⑤ エンディングノートの保管場所
⑥ 臓器提供の意思
⑦ 献体登録先
⑧ 死後事務委託契約や終活に係る生前契約等
⑨ 遺言書の保管場所
(3) 登録件数(令和4年4月1日~令和5年8月1日現在)
30件
多い年代 1位 70代
2位 80代
3位 60代
3 東京都豊島区から学ぶヒント(終活事業のPRの重要性)
最後に本取材を通して感じたことは、地方自治体の終活事業における広報の重要性です。理由は、豊島区では、終活への関心は高いものの終活あんしんセンターのことを知らない区民も多いことが分かったそうです。そのため、豊島区では、昨年より区主催の高齢者向けイベント「介護予防大作戦」の会場内に終活事業を紹介するブースを出して来場者へのPRを実施しています。今後、終活事業に取り組む自治体でも地域の祭りやイベントをPRの場に活用することは参考になると思います。
このコラムの引用、参考先
・東京都豊島区 終活あんしんセンター(終活情報登録事業を含む)
・~知ろう、気づこう~介護予防大作戦inとしま2023
・「介護予防大作戦!inとしま2021」
・2020年国勢調査(全国,都道府県,21大都市,特別区,人口50万以上の市)
[プロフィール]
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自治体行政支援機構 理事長 林 勝美 氏
(元)国立大学法人 熊本大学大学院法曹養成研究科(法科大学院)教授
(元)東京都総務局法務部訟務担当課長
昭和45年3月中央大学法学部法律学科卒業。同年4月東京都庁入庁。総務局法務部法務第一課、民事訟務課、不服審査法務室、総務局文書課を歴任後、管理職として建設局の管理課長等を経て、再び法務部副参事、訟務担当課長として訟務実務担当。平成14年3月都庁退職。同年4月公募により熊本大学法学部教授就任。平成16年4月熊本大学法科大学院教授就任。平成22年3月熊本大学を定年により退職。平成25年4月自治体行政支援機構設立。理事長就任。現在に至る。
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