花 2019.10.29
河内遥『夏雪ランデブー』を読んだ。なかなか引かない元旦那に少しイライラしながら、花屋なんてほとんど行ったことないなあ、とぼんやり考えた。わたし自身、一人暮らし時代に小さなサボテンや多肉植物の鉢を買って育ててみたことはあるけれど、すぐに枯らしてしまった。生来の飽き性で何事も続いたことのないわたしは、茶色くふにゃふにゃになった植物たちをゴミ箱に捨てた。花や植物が好きというより、ままならない日常を少しだけ壊してみたかったのかもしれない。『夏雪ランデブー』の影響か、道端に咲いていたヒメジョオンを摘んで埃だらけの一輪差しに生けてみた。枯れたら捨てて、また新しい花を生けるんだろう。「乙女って不気味で 好きよ あたし」。一番好きな言葉。
台風19号がきて、わたしが住んでいる場所はまた被災地になった。黄土色の泥がこびりついた道路、屋外に山と積まれた災害ゴミ。作物が全部ダメになったと言うマスクのおじさん。わたしは募金箱に小銭を入れる。店員にありがとうございますと言われる。散歩しながらゴミを拾う。通りすがりのおじいさんに偉いねえと言われる。誰のための募金なのか、誰のためのゴミ拾いなのか、わたしにはわからない。もしこの世界から戦争も貧困も災害も犯罪もなくなったら、わたしは真っ先にいらない人間になるんだろうな。本を読んで、文章を書いて、道端の花を生けるだけの人間は。
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