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開いた空間と閉じた空間

先日、こちらの記事で、建築家の山崎健太郎さんが設計した「庭の中の家」をご紹介しました。この建築物は、5つの箱のような空間を縦にずらして繋げた構造が特徴です。それぞれの箱の間に明確な壁や仕切りはありません。

(以下の写真は、「山崎健太郎デザインワークショップ」のウェブサイトより引用)

山崎健太郎さんが設計の「庭の中の家」


この建築物を見たとき、「まさに理想だ!」と思ったことを上記の記事に書きました。

でも、よくよく考えてみると、この構造は昔の日本家屋そのものではないでしょうか。部屋を直列につなげるか、上下に並べてつなげるかの違いがあるだけで。

昔の日本の間取り
部屋と部屋の間は、壁ではなく襖や障子でゆるく区切られている

こんなシンプルな事実になぜすぐ気づかなかったのか・・・(苦笑)。

しかも、これも今になって気づいたんですが、この開放的な間取りって、まさに私の実家の間取りなんですよ。

私の実家は築50年の木造平屋で、昔ながらの間取りで部屋と部屋の間には明確な壁がありません。襖で区切られる造りなのですが、現在は両親だけが住んでいることもあり、普段は襖をすべて外してしまっているので広いワンルームのようになっています。

私が実家に住んでいた10代のころには、部屋を区切る襖が一応は存在していました。

でも、当時、自分の部屋なんていうものはもちろんありません(私は3人兄弟です)。さらには、プライバシーなどは完全無視(笑)の環境でしたから、襖越しに兄弟の声は筒抜けだし、親は気軽に襖を開けてくるし、もうほんとに、この間取りが嫌で嫌でしょうがありませんでした。

ところが、あれだけ嫌だった「開放的な間取り」に今になって魅力を感じるようになるとは不思議なものです。(歳を取ったからでしょうか?)

ちなみに、山崎健太郎さんによる建築物は、「庭の中の家」以外にも開放的な設計が印象的で、たとえばこのような建築物もあります。
(以下の写真は「山崎健太郎デザインワークショップ」のウェブサイトより引用)

「52間の縁側」
高齢者用デイサービス
近隣住民が自由に訪れてくつろげる空間になっている


私がこうした「ゆるやかに繋がる開放的な間取り」に惹かれるのは、日本という文化的背景があるからかもしれません。

間取りといえば、数か月前に訪れたロンドンの「ニューグラウンドコハウジング(New Ground Cohousing)」というコミュニティが思い出されます。

このコミュニティは、50代以上の女性のみが暮らす集合住宅で、建物は大きな庭を取り囲むように配置され、その庭を含む全体が壁で囲まれる構造になっています。

ここに入るためには玄関のインターホンを押し、ドアを開けてもらう必要があります。

上記の開放的な構造とは異なり、壁の内側と外側が明確に隔てられた構造が特徴です。

居室もいくつか見学させていただきましたが、上記の記事にも書いたように、完全バリアフリーな点を除けば、一般的なマンションと何ら変わりない造りで、それぞれの住人のプライバシーが完全に守られています。

日本の開放的な間取りと、ロンドンの「隔てられた」間取り。その違いの背景には、文化や治安といった要素が反映されているのでしょうね。一概にどちらが良いとは言えませんが、こうした違いがはっきり現れている点は、とても興味深いなと思いました。


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