辱めを受けた先に見た景色は絶景だった
オーストラリアへ来て2年目のこと。
2021年9月、私はオーストラリアのQLD州にいた。
WA州に移動することを決めていたので、最後にどうしても行きたかった「Hill Inlet」へ行くことにした。
ヒルインレットは船をチャーターするかツアーに参加しないと行けないスポットだ。
写真で見るヒルインレットからの眺めはどれも綺麗で、どうしても自分の目で見たかった。
ツアー前日にAirlie Beachへ到着し、ホステルに滞在。ツアー当日に送迎バスが宿泊施設に迎えに来てくれ船乗り場まで送ってくれる手はずだった。
ツアー当日。ワクワクしているので最高の目覚め。
晴れてくれることだけを願い準備をし、送迎バスを待つために早めに外に出た。
そこには1台のバスが停まっていたがバスに記載されている会社名がツアー会社と違うため、一応メールを確認しようとしたその時、
私の横を1組のカップルが通り過ぎた。
そのカップルは颯爽とそのバスに乗り込みすぐにバスは出発。
この時まだ出発時間の5分以上も前。
「あのバスじゃなかったのかな・・ツアーの時は名簿確認するもんね・・」
一抹の不安を覚えつつメールでバス会社名を確認する。
そこには先ほど出発したバス会社が記載されている。
置いていかれたかもしれない焦りとヒルインレットからの眺めが見れないかもしれない絶望感で目の前が真っ白になった。
そのすぐ後に同じバス会社のバスがホステル前に停車した。
希望を胸に運転手に尋ねる。
「このバスじゃないよ!そのツアーは小さいバスだよ」
と丁寧に教えてくれる運転手さん。
と、同時に再度絶望が私を襲う。
そう、さっき私の目の前で出発したバスが小さかったのだ。
ありがとう、と一言絞り出し、すぐにツアー会社に電話を入れた。
英語での電話は苦手だが窮地に立たされるとそんなのどうでもよくなる。
私「早めに外で待ってるんだけど送迎バスが来ない。置いていかれたと思う。」
ツアー会社(以下、ツ)「Hahaha そんなはずはないよ。遅れてるだけだと思うから5分経っても来なかったら連絡して」
私「でも目の前でバスが出発した。置いていかれてると思う。」
ツ「そんなわけないから、とりあえず5分待ってみて。それでも来なかったら私からバスに連絡するから教えて。」
私「わかった」
一旦電話を切りとりあえず待ってみる。
そわそわしながら待つが、待てども来ない送迎バス。
5分経ち再度連絡を入れる。
私「来ないよ・・」
ツ「わかった。ツアースタッフに連絡を入れて迎えに行かせるから外で待ってて」
私「わかった」
その電話の後、私の目の前で出発したバスが再度姿を見せた。
(やっぱり置いていかれてるし、運転手は名簿チェックせい・・)
運転手から置いていったことへの詫びはなく、少しイラっとしてしまったがとりあえずツアーに参加できることへの安堵で自分を落ち着かせた。
船乗り場に着くとツアーの参加者と思われる人たちが多くいた。
私が参加者の中で到着した最後の一人だったのだ。
受け付けの場所をバスの運転手に聞くと指を指し教えてくれた。
受け付けを済ませるためバスを降りる。
すると・・
ツアーコンダクター「最後の一人が到着したぞーーー!!!!フーーーーーーー!!!!」
参加者を盛り上げ、参加者も私に向かって拍手を送り始めたのだ。
・・予想外の展開である。
(や・・やめ・・やめて・・・)
恥ずかしさのあまり苦笑いしかできず、早足で受け付けまで行く。
バスから受け付けまでの数メートルの道のりがとてつもなく長く感じた。
そんな辱めを乗り越え、無事に見ることができた景色は絶景だった。
この写真を見るたびにこの日のことを思い出すし、どうリアクションすればよかったのか頭を抱える。でも、それも含めて楽しかったな。