見出し画像

どこまで行っても、今の自分にないものを欲しがり続けるのかもしれない。

我が家が味噌を自分で作るようになって今年で3回目。九州の味噌は麦味噌が主流ですが、米味噌で育った私はやっぱり米麹で作った味噌の方がなじみます。

自分好みの味の味噌を作る楽しさを覚えてからは、すっかり手前味噌にハマってしまいました。せっかくなら、誰かと一緒に楽しみたい。そう思ったので、先週末は天草で味噌作りのプチワークショップを開催しました。

ワークショップといっても、お招きするのは1日1組だけ。今日は、土曜日にお招きしたご夫婦の話が印象的だったのでここに書いておこうと思います。

東京から転勤で熊本にやってきて1年のそのご夫婦は、なにかのきっかけでうちのwebサイトにたどり着き、そのままみかんの木オーナーになってしまったそう。

味噌を作りながら「転勤で、ということはまた関東に戻る可能性はあるのですか?」と聞いてみると、ご主人が「ここの生活が気に入っているので、ずっといるつもりです」と答えました。

「どんなところが気に入っているのですか?」

「仕事から帰るのが早いので、東京にいたときよりも余裕ができました。以前は夜7時に夕飯を夫婦そろって食べられることなんてなかった。頑張れば6時に食べ始めることもできるんじゃないですか?土日もあっという間に過ぎてしまって、何かをしようと思えるだけの気力がなかった。今は何かをしようと思えるようになっている。だから最近、ぬか漬けをはじめました。」

発言の主が奥さんではなく、ご主人であるということ。
そして、ぬか漬けのようにほぼ毎日手入れが必要な手間がかかるものを楽しむようになったことが、おもしろいと私は思いました。

そして、もう一つ。かつて私もそのご主人と同じように思っていました。にも関わらず、関東を離れて7年目を迎えて、いつの間にかそれが「当たり前」のものになってしまっていたのです。

私は東日本大震災をきっかけに、地方移住を考え始めました。便利な都市生活の裏側にあるもろさを目のあたりにして、言いようのない恐怖を感じたからです。

しかし、望んで今の生活を手に入れたにも関わらず、いざその状態が日常になってみると「楽しむ」という心持ちでなくなりつつありました。

慣れってコワイ。
そしてどこまで行っても、私は今の自分にないものを欲しがり続けるのかもしれない。

かつて自分はどんなことをしたかったのか。
何のために今の自分はあるのか。これからどうしていきたいのか。

ご主人の発言は、自分だけでは気づけなかったことに気づかせてくれました。人と会うのが難しい時期ですが、いつもと違う人と話すって、本当に大事なことなんだ、と思った週末でした。

ここから先は

0字
一度ご購入いただけると、今後追加される記事は追加料金なしでお楽しみいただけます!

横浜出身の私が、地方の田舎町で暮らしていくために考えて、やってみたあれこれをまとめています。新しい環境に飛び込んだチャレンジ精神あふれる人…

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?