『知らない人んち(仮)』 第三話

〜あらすじ〜

キャンは、きいろがココアの缶にコショウが入っているのを知っていたことから、記憶があることに気付き、アクに知らせる。
それを聞いたアクは「元施設長に会ってくる」と言い、準備を始める。
アクが出掛けるのと入れ替わりに、昔この施設で暮らしていたというアイドルグループ「星空Iz(アイズ)」のメンバー6人が家を訪ねてくる。
近所の公園で撮影をしていたメンバーは、休憩時間に懐かしさからこの家を訪れたという。
メンバーはジェミとキャン、そして先生のことも知っていた。
とりあえず、みんなでカレーを食べることになり、昔話などで盛り上がるが、そこで先生の口癖を聞く。「良い子にしてないと魔女が来て、お仕置き部屋に閉じ込められる」と。
そして、きいろは自分の動画に星空Izのメンバーに出てもらうことにする。
メンバーとの会話で、きいろがユーチューバーになった理由が明かされるのだが・・・

ーーーー

◯男子部屋
   パソコンに向かっているアク。
   キャンが部屋に入って来る。
   手にはココアの缶。
アク「どうした?そんなに焦って」
キャン「覚えてる」
アク「ん?」
キャン「きいろ。やっぱり全部覚えてるよ!」
   ココアの缶をアクに見せる。
キャン「この缶にコショウが入ってること知ってた!」
アク「そうか・・・。もう行くしかないな・・・」
キャン「行くって?きいろのところ?」
アク「いや、施設長に会ってくる」
キャン「えっ!?八木先生に?」
アク「あぁ。もう終わりにしよう」
   立ち上がるアク。
キャン「もう行くの?」
アク「いや、シャワーを浴びてからにしよう」
   キャン、ココアの缶を握りしめる。

◯浴室
   (先週のきいろのように)シャワーを浴びているアク。
   ティモテを取ってシャンプーをする。

◯キッチン
   キッチンでは、きいろ、ジェミ、キャンが笑顔で料理をしている。

◯浴室
   ダヴを使って体を洗っているアク。

◯キッチン
   きいろ、キャンからココアの缶を渡されてコショウを鍋に入れる。

◯男子部屋
   アク、タオルで頭を拭いている。
   拭き終わるとタオルを首にかけて、いつものハンカチを取り出す。
   バサッとハンカチを広げると、そこにアックスをシュッと吹きかける。

◯ダイニング
   アクが入ってくる。
アク「ちょっと出かけてくる」
きいろ「えっ?カレーもうすぐできますよ?」
アク「帰ったらいただきます・・・」
   アク、出ていく。
きいろ「大丈夫かなぁ?また何か拾ってくるんじゃない?」
キャン「えっ?あぁ、大丈夫じゃないかなぁ・・・。ちょっと見てくる」
   キャン、アクを追いかけて玄関へ向かう。

◯玄関
   靴を履いているアク。
   キャンが来る。
   アク、キャンを見る。
アク「大丈夫。心配するなって」
キャン「分かった・・・」
   うつむくキャン。
キャン「あ、ちょっと待って」
   キャン、ポケットからヴァセリンを出す。
   薬指で少し取ると、アクの唇にヴァセリン塗る。
キャン「気をつけてね」
アク「あぁ」
   玄関から出ていくアク。
   見送るキャン。

◯ダイニング
   きいろ、ジェミ、キャンが食卓を囲んでカレーを食べている。
   インターホンが鳴る。
   一番近くにいた、きいろがインターホンに出る。
   インターホンの画面には6人の女の子。
女の子達の声「ただいまー!帰ってきたよー!開けてー!」
きいろ「えっ?ただいま?」
   きいろ、玄関に向かう。
キャン「ちょっと!」
   キャン、きいろを追いかける。

◯玄関
   キャン、きいろを追いかけるが間に合わない。
   きいろ、玄関の鍵を開ける。
   女の子達が入ってくる。
   エリー(ゆきりぬ)、ラス(きりたんぽ)、
   リオ(えみりん)、ヴァゴ(前川歌音)、
   リブ(頓知気さきな)、ピオ(佐藤菜月)。
   靴を脱いで部屋に上がってくる女の子達。
   驚くきいろ。
きいろ「え?えっ?」
ラス「わぁ〜!懐かしい!」
リオ「全然変わってないじゃん!」
ヴァゴ「ほんと、ドアも昔のまんまだし」
きいろ「え、どういうこと?」
エリー「すみません、ちょうど近くの公園で撮影をしていて」
リブ「待ち時間長いから、ちょっと行ってみようかって」
ピオ「あれ?先生はー?」
きいろ「あ!あなたたち見たことある!」
エリー「気づいちゃいました?見上げる夜空に星1つ。私達、」
全員「星空Iz(アイズ)です♪」
きいろ「わぁ!だよねー!知ってるー!」
ラス「私達もこの施設出身なんです!」
リオ「あ!キャンさんだ!」
   女の子達、キャンを取り囲む。
ヴァゴ「お久しぶりですー!お元気ですか?」
   一同、わちゃわちゃとリビングへと入って行く。

◯リビング
   全員リビングへと入ってくる。
   カレーを食べているジェミ。
リブ「わっ!ジェミ先輩!」
   メンバー、ジェミを見ると気をつけをしてお辞儀をする。
メンバー「おはようございます!」
   ジェミ、メンバーをチラッと見る。
ジェミ「今夜はカレーよ」
   メンバー、お互いの顔を見合って。
メンバー「やった〜♪」
キャン「いっぱいあるから食べてって」
   キャン、キッチンに向かう。
ピオ「あ、私やります」
   ピオ、キャンを座らせてキッチンに向かう。

   × × ×

   メンバーは、ジェミやキャンの回りを囲んで楽しそうにカレーを食べている。
   ソファではきいろがエリーと話している。
きいろ「ここは昔、施設だったんだね」
エリー「はい。私達が小さい頃に閉鎖されたんですけど、先生がずっと住んでいてたまに会いに来てたんです」
きいろ「へぇ〜、閉鎖されちゃったんだね」
   ラスが話に入ってくる。
ラス「私達6人は別の施設に移されて、そこで育ちました」
きいろ「大変だったんだね・・・」
エリー「いえ、全然!私達はいつも一緒だったから楽しかったです!」
ラス「魔女もいないしね!笑」
きいろ「魔女?」
エリー「(笑)先生がいつも言ってたんです。良い子にしてないと魔女が来てお仕置き部屋に閉じ込められるぞ!って。笑」
   キャンがやってくる。
キャン「ほら2人とも、デザートもあるから手伝って!」
2人「はーい♪」
   エリー、ラス、キッチンに向かう。
きいろ「魔女・・・」
   キャン、きいろを見つめる。

   × × ×

   きいろの自撮り画面。REC。
   後ろには星空Izのメンバーがいる。
きいろ「なんとー!今日はゲストが来てくれましたー!しかも、今人気のアイドルでーす!」
エリー「気づいちゃいました?見上げる夜空に星1つ。私達、」
全員「星空Izです♪いぇ〜い♪」
きいろ「今日お邪魔している、知らない人んち。実は、彼女達がむかし住んでいたそうです!」
全員「いえ〜い!(それぞれに)みんな見てるー?先生元気ー?チャンネル登録よろしくー!」
   部屋の隅では、ジェミとキャンがその様子を見ている。
キャン「(小声で)この動画あげられたらヤバくない?大勢の人が見るかも」
ジェミ「そうね・・・」
   笑顔でトークを進めているきいろとメンバー。
リオ「そういえば、きいろさんはなんでユーチューバーになったんですか?」
きいろ「それは・・・こないだバイトをクビになったからでーす!」
   メンバー、爆笑。
きいろ「それと、それと・・・」
ヴァゴ「それと?」
きいろ「1人でも多くの人にちゃんと知って欲しくて・・・」
リブ「えぇ?何をですかー?」
   キャン、焦ってジェミの方を見る。
きいろ「きいろは・・・黄信号は、”注意して進め”ではありません!”止まれ”です!」
   一瞬静まり返る。
ピオ「えぇ〜!知らなかった〜!」
   全員笑顔で笑い合う。

◯玄関
   玄関には、きいろ、ジェミ、キャンと星空Izのメンバー。
   メンバーを見送るきいろたち。
   メンバーは別れを惜しみながら出て行く。
きいろ「じゃあ、私、編集してきますね♪」
キャン「ちょっと」
   ジェミ、キャンの手を掴む。
   キャン、ジェミを見る。
   きいろ、和室へ入っていく。
   

ーーーー

〜今後のあらすじ〜
当時、児童養護施設ひまわりの家では、日常的に虐待がおこなわれていた。
時には施設長の八木に。時には八木が連れて来た人間によって。
場所はあの暗室。
被害者は、きいろとジェミ、キャン。
竹田先生やアクもそのことに薄々気がついてはいたが、どうすることもできなかった。
虐待に耐えかねたきいろは、ある日八木を暗室に閉じ込めて、裸のまま施設から脱走する。
暗室の鍵をいろどり公園に埋めているところを保護され、事件は明るみに出る。
あまりのショックにきいろは記憶を失っているとされていたが・・・。
十数年後、きいろはジェミと再会し、当時の施設長への復讐を誓う。
「ルールは1つ。体は売らないこと」


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