『知らない人んち(仮) 最終話

〜あらすじ〜

 きいろが堂島佐和子だと知ったジェミは、佐和子に詰め寄り真相を聞くことに。
堂島佐和子は、きいろの親友で彼女の代わりにこの家を訪れていた。
何の記憶も無いきいろに、今の施設のことや、当時の子供達がどうなっているかを伝えるために。
「きいろに記憶がない」という事実を知ったジェミ、アク、キャンは全てを佐和子に打ち明ける。
「すべてはきいろを守るためだった」と。
本当の母親と引き離してしまったという罪悪感をみんながずっと持っていた。
竹田先生死んだのも、キャンが警察に連れて行かれたのも、全部きいろの記憶を確認するための芝居だったのだ。
 突然現れたきいろの母親を名乗る女性。昼間から酒の匂いがして、とてもじゃないがきいろを渡すわけにはいかなかった。
里親が見つかるまで、きいろを暗室でかくまうことにした竹田。結局、母親のことは伝えずにきいろは里親へ。
母親はその後事件を起こして警察沙汰に。きいろを犯罪者の子供にはしたくないのもあり、母親のことは当時のメンバーだけの秘密にしようと誓いあっていた。
 みんなの思いを聞いた佐和子は、きいろには母親のことは隠して嘘の報告をすると言う。
きいろへの報告はYouTubeで動画をアップする方法だった。
そして、最後の動画撮影が開始される・・・・

ーーーー

◯リビング
ジェミ「こ、これどういうこと・・・?」
   恐る恐るスマホをきいろに見せる。
   画面をじっと見るきいろ。
きいろ「・・・分かりました。全部話します・・・」
ジェミ「待って、ちょっと疲れちゃった。あっちの部屋でもいい?」
きいろ「はい」
   リビングを出る2人。

◯女子部屋
   監視カメラの映像。
   ジェミときいろが入ってきて座る。

◯別室
   監視カメラの映像を見ている男女の影。

◯女子部屋
   きいろとジェミが向かい合っている。
ジェミ「あなたは誰…?」
きいろ「きいろの友人の堂島佐和子です。高校生の頃からの親友で…」
ジェミ「どうしてあなたがココに?」
きいろ「きいろ、里親の家族とうまくいってなかったんです。夫婦に子供ができてから・・・」
ジェミ「そうなの・・・?」
きいろ「早くあの家を出たいって、いつも言ってました。そして・・・」
ジェミ「そして?」
きいろ「昔、一緒に暮らしてた施設のみんなに会いたいって。あと、本当の家族に会いたいって」
ジェミ「本当の家族?家族のこと覚えてたの?」
きいろ「いえ、それは覚えていないそうです」
ジェミ「ほんと?ほんとに覚えてないって?」
   ジェミ、きいろの体ゆすって必死になる。
ジェミ「ほら!やっぱり覚えてないって!ねぇ、聞いてる?あのこと覚えてないって!」
きいろ「ジェミさん、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
   ジェミ、ベッドの下のカメラに向かって呼びかける。
ジェミ「ここにもカメラがあるの。アク達が見てるはず」
   きいろもベッドの下を覗き込む。

アクの声「本当に覚えてないんですね?」
   部屋の入口にアクとキャンの姿。
きいろ「アクさん、キャンさんも!」
アク「聞かせてもらった。ほんとうに何も覚えてないんだね?」
きいろ「はい・・・」
キャン「良かった〜」
ジェミ「アク、先生は?」
アク「もちろん生きてるよ」
   ジェミ、手で顔を覆って泣く。
きいろ「キャンさん、警察に行ったんじゃ・・・?」
キャン「ごめん、あれもお芝居」
きいろ「みんなどうしてそこまでして・・・?」
アク「佐和子さんって言いましたね。僕たちはこの施設で本当の兄弟のように育ったんです。だから、きいろにはどうしてもあの事は隠し通したかった・・・」
きいろ「あのことって・・・?」
   きいろ、アクをじっと見つめる。

◯(回想)ひまわり・リビング
   きいろの母親、みどり(伊藤修子さん)がソファーに座っている。
アクN「突然でした。きいろの母親を名乗る人が来たのは…」
   みどり、お茶を激しくテーブルに置く。
みどり「だから!私が母親だって言ってるでしょ!早く娘を返して!」
アクN「その人は昼間だというのにお酒の匂いがして怖かった…。先生はきいろには何も伝えず二階の部屋(暗室)でじっとしてるように言った」
   みどり、立ち上がってリビングを出ようとする。
   竹田先生(らしき人)がみどりを必死に抑える。
みどり「離せ!娘はどこだ!」
   暴れるみどり。
   手が花瓶に当たって落ちる。花瓶は割れてしまう。
   リビングの隅では、幼いアク、ジェミ、キャンが恐怖に怯えて抱き合っている。(回想終わり)

◯ダイニング
   テーブルを囲むきいろ、アク、ジェミ、キャン。
ジェミ「その日はどうにか帰ったんだけど、それから何度も来たの。夜中だったり、朝方だったり。いつも酔っ払ってた…」
キャン「その度にきいろちゃんをあの部屋に隠してたの…」
アク「いつしかずっとあの部屋に閉じ込めるようになってしまって…」
きいろ「きいろは会いたくてなかったの?本当の母親でしょ?」
ジェミ「そうよね…でも…」
キャン「私なら会いたかったかも…」
アク「きいろには内緒だったから。母親が来てたことは」
ジェミ「先生も悩んでだと思う。でも普通じゃなかったから。その時のお母さんは」
キャン「それで急いで里親を探して…」
きいろ「母親が迎えに来たことも、全部みんなで隠したってこと?!」
アク「それで良かったんだ。どうしてもきいろを守りたかった。犯罪者の子供にしたくなかったんだよ!」
きいろ「犯罪者?どういうこと?」
ジェミ「その後すぐ逮捕されたの。恋愛感情のもつれで男の人を刺したって・・・」

(回想)床に倒れている男性(KEIさん)

キャン「そりゃ、本当のお母さんには会わせてあげたかったよ・・・。いいじゃん、家族なら私達で充分でしょ?!」
アク「だからこの事は、何があってもきいろには隠しておこうってみんなで誓ったんだ」
ジェミ「お願い!きいろにはこのこと黙っていて」
きいろ「・・・」
   アクとキャンをきいろに頭を下げる。
きいろ「報告しないと」
   アク、ジェミ、キャン、きいろを見る。
きいろ「実は、YouTubeに動画をアップして報告してたんです」

   ×  ×  ×

   きいろ、自撮りのカメラをまわす。
   きいろの後ろには、アク、ジェミ、キャン。
きいろ「どうも〜、人生いつも黄信号!YouTuberのきいろでーす!」
アク・ジェミ・キャン「いえーい!」
きいろ「という訳で、知らない人んち泊まってみた!企画。今回は男女3人で暮らすこのシェアハウスでしたー!ありがとうございました!楽しかったです」
アク「いえ、どういたしまして」
ジェミ「こちらこそ楽しかったです」
キャン「初めて会ったとは思えないぐらい!」
   笑顔で笑い合う4人。
きいろ「では、最後は約束通り、ご飯をご馳走してから帰ろうと思いまーす!それではまた、知らない人んちで会いましょう!バイバーイ!」
   画面に手を振る4人。
   RECが止まる。
   感慨深そうにカメラを見つめるきいろ。
   ジェミ、きいろの肩に手をかける。
   顔を上げるきいろ。
キャン「じゃあ、飲もっか!」
きいろ「・・・うん!」

   ×  ×  ×

◯ダイニング
   テーブルの上にはたくさんのお酒と料理が並んでいる。
   ビールを手に取るアク。
アク「待て、待て、これクラシックじゃないか!?どうしたこれ?」
キャン「えっ、冷蔵庫に入ってた♪」
ジェミ「それが嫌ならこっちにする?」
アク「待て、待て、待て、こっちは赤星だろ〜、勝手に飲んだら先生怒らないか?」
ジェミ「こんな時に、いないのが悪い」
キャン「そうだよ!いないのが悪い!先生どこ行ったの?」
アク「絶滅してしまうかもしれない絶品メシを食べに行くとかなんとか・・・」
ジェミ・キャン「・・・」
きいろ「じゃあ、飲んじゃいましょう!」
キャン「いぇ〜い!」
ジェミ「おいしく頂きましょう」
アク「乾杯をもっとおいしく。か」
きいろ「それでは!」
全員「乾杯〜!!」
   美味しそうにビールを飲む面々。
   ビールを片手に笑顔で語り合う。

   × × ×

きいろ「そうだ、せっかくなんでみんなで写真撮りましょー!」
キャン「いいね〜!」
   集まるメンバー。
   身なりを整えるアク。
   きいろスマホ取り出す。
   キャン、きいろのスマホの待受画面を見る。
   魚のマーク。
キャン「可愛いイラストだね。お魚?」
きいろ「そう、お魚。3月6日生まれの魚座だから♪」
   アク、ジェミ、キャン驚いて顔を見合わせる。
アク「き・・・」
ジェミ「い・・・」
キャン「ろ・・・?!」
   笑顔のきいろ、自撮りのシャッターを押す。


   END


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