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中小企業のための実践的セキュリティ対策ガイド2024【前編】基本的な対策の導入

このガイドについて

本ガイドは2部構成になっています。

前編(本記事)

基本的なセキュリティ対策の導入方法を解説

  • パスワード管理の強化

  • アクセス権限の設定

  • システムの更新管理

  • ウイルス対策ソフトの選定

後編(次回公開)

運用面での対策を詳しく解説

  • 従業員教育の具体的な方法

  • バックアップ体制の構築

  • テレワーク環境の整備

  • インシデント対応計画の作成

はじめに:今なぜセキュリティ対策が重要か

サイバー攻撃の現状

  • 中小企業を狙う攻撃が全体の58%を占める(2023年調査)

  • 平均被害額は約450万円

  • 取引先からの信用低下による取引停止のリスク

  • 事業継続に関わる深刻な被害の増加

1. パスワード管理の強化

現状の課題

多くの中小企業では、以下のような課題を抱えています:

  • 簡単なパスワードの使用

  • パスワードの使い回し

  • 共有アカウントの管理不足

基本的な対策方針

  1. パスワードの作成と管理

    • 推奨される対策

      • Keeperパスワード マネージャー

      • Microsoft 365 Business Premiumの管理機能活用

    • 最小限必要な対策

      • Google Chromeのパスワードマネージャー、Microsoft Edgeのパスワード。

      • パスワード設定ガイドラインの作成

  2. 多要素認証(2段階認証)の設定

    • 推奨される対策

      • Microsoft 365やGoogle Workspaceの認証機能

      • 組織全体での一括設定

    • 最小限必要な対策

      • 重要アカウントへのGoogle認証システム設定

      • SMSやメールでの認証コード利用

実装のポイント

  • 経営層のアカウントから優先的に対策実施

  • 共有アカウントの棚卸しと整理

  • パスワード管理ルールの文書化

2. アクセス権限の適切な管理

現状の課題

多くの組織で見られる問題点:

  • 必要以上の権限付与

  • 退職者の権限が残存

  • 共有フォルダの過剰な公開設定

基本的な対策方針

  1. フォルダ・ファイルの権限設定

    • 推奨される対策

      • Microsoft 365での詳細な権限設定

      • 部門別・プロジェクト別のアクセス制御

      • アクセスログの定期監査

    • 最小限必要な対策

      • Windowsの標準機能での権限設定

      • 共有フォルダの定期見直し

      • 重要データの別フォルダ管理

  2. アカウント管理

    • 推奨される対策

      • IDM(Identity Management)ツールの導入

      • 定期的な権限棚卸しの自動化

    • 最小限必要な対策

      • アカウント一覧表の作成と管理

      • 四半期ごとの手動確認

      • 異動・退職時の確認手順作成

3. システムの更新管理

現状の課題

  • 更新プログラムの適用遅れ

  • 古いOSの継続使用

  • アプリケーションの放置

基本的な対策方針

  1. 更新プログラムの管理

    • 推奨される対策

      • Microsoft Intuneによる一元管理

      • 更新状況の自動レポート作成

    • 最小限必要な対策

      • Windows Updateの自動更新有効化

      • 毎月の更新確認日設定

      • 更新状況の目視確認

  2. アプリケーション管理

    • 推奨される対策

      • 資産管理ツールでの把握

      • 自動更新の一括設定

    • 最小限必要な対策

      • 使用ソフトの一覧作成

      • 手動での更新確認

      • 更新手順書の作成

4. ウイルス対策ソフトの選定と導入

高度化するサイバー攻撃に対して、PCの用途や扱う情報に応じた適切な保護が必要です。中小企業では、基本的なセキュリティ対策として、Windows Defenderの活用が推奨されますが、より高度な攻撃に対応するためにはEDR(Endpoint Detection and Response)の導入も検討する必要があります。

基本的な対策:Windows Defender

Windows 10/11に標準搭載されているMicrosoft Defenderで、以下のような基本的な保護が実現可能です。

Microsoft Defenderで実現できる対策

  • リアルタイムウイルススキャン

  • ファイアウォール機能

  • フィッシング対策

  • 不正アクセス防止

Microsoft Defenderは、最新の更新プログラムを適用し、常に最新状態を維持することで、その効果を最大化します。ただし、標的型攻撃や高度なマルウェアに対応するには限界があるため、EDRの導入を併用することをおすすめします。

EDR(Endpoint Detection and Response)の導入推奨

従来型のウイルス対策ソフトでは防ぎきれない高度な攻撃や標的型攻撃に対応するためには、EDRの導入が効果的です。EDRは、高度な脅威検知やリアルタイムの異常検知、自動対応機能を備えたエンドポイント保護の最新ソリューションです。

✅ EDRを導入すべき優先度の高いPC

  1. 経営者・役員が使用するPC

    • 機密情報や経営判断に関わるデータの保護

    • 標的型攻撃のリスクが高い

    • 意思決定に必要な重要データの防御

  2. テレワーク用PC

    • 社外からの接続による侵害リスク対策

    • 安全でないネットワークからの保護

    • 不正アクセスの早期発見

  3. 顧客情報を扱うPC

    • CRMシステムへのアクセス

    • 顧客データベースの操作

    • 個人情報保護の観点から重要

  4. 財務・経理システム利用PC

    • 取引情報の保護

    • 財務データの改ざん防止

    • 不正送金対策

推奨されるEDRソリューション

EDRソリューションの選定は、導入コストや運用負担を考慮して行う必要があります。以下は中小企業向けに信頼性の高い製品例です:

  • CrowdStrike Falcon:高度なAI分析機能と迅速なインシデント対応。

  • Microsoft Defender for Business:Windows環境との高い互換性とコストパフォーマンス。

  • SentinelOne:自動化された脅威検知と防御機能。

  • Cortex XDR:多層防御と高度な調査機能。

EDRの主な特徴

  • 高度な脅威検知:ランサムウェアや標的型攻撃など、未知の脅威にも対応。

  • リアルタイムでの異常検知:振る舞い分析に基づき、攻撃を即座に検知。

  • インシデントの自動対応:感染拡大を防ぐ隔離機能を含む。

  • 詳細な調査機能:攻撃の経路や影響範囲を特定。

  • 一元管理機能:複数のエンドポイントを一括管理可能。

5. 実践のためのチェックリスト

即日実施できる対策

  • Windows Defenderの有効化確認

  • パスワードポリシーの見直し

  • 共有フォルダのアクセス権確認

  • Windows Updateの自動更新設定

1週間以内に実施する対策

  • 重要アカウントの多要素認証設定

  • アプリケーションの更新状況確認

  • 管理者アカウントの棚卸し

  • セキュリティソフトの導入計画作成

1ヶ月以内に実施する対策

  • EDR導入の検討と選定

  • アクセス権限の総点検

  • セキュリティポリシーの文書化

  • 定期点検スケジュールの作成

次回(後編)の予告

後編では、以下の内容を詳しく解説します:

  1. 効果的な従業員教育の方法

  2. バックアップ体制の構築手順

  3. テレワーク環境のセキュリティ対策

  4. インシデント発生時の対応計画

  5. セキュリティ投資の費用対効果

お問い合わせ

セキュリティ対策でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

初回相談は無料で承っております。

💡 ポイント
基本的なセキュリティ対策は、必ずしも大きな投資を必要としません。本記事で紹介した対策を、優先度の高いものから順に実施していくことをお勧めします。

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