噂
蛹の内側を覗いてみれば、その悍ましさ虚しさに恐怖を覚えるだろう。
私はもはや、君たちとのこの小さな息吹の中に、自らの産声をあげることになんらの欲求も感じない。
だが無くなるわけではないのだ、何も。
ことことと煮込まれたものは煮崩れて消滅するのではなく溶け込んでいるだけなのだ。
波すらも起こさないほどに溶け込んでしまったとしても、それらが細胞となり羽根を形作るのと同様に、我々の時間が交差し離れてゆくこともにっこりと微笑んでしまえばなんてことない。
事を成すには優しすぎる
そんな呪いみたいな言葉を冷めた目で見つめながら電車に揺られゆく。
お前の目に私がどう映っていようともそれは全て過去の虚像で、本当の私はずっとここにいる。
うまく生きることは出来ないけれど、いまだ不誠実に人の手を踏み躙ってしまうけれど、どこまでも醜いままだけれど。
心から欲するものだけは、どれだけ拒んだとしても手を伸ばし続けてしまう。
欲しいたった一つだけを見つめ続けている。