次の朝のために
言葉を溜める。
まるで血を溜めるように。
少しゴム臭のする柔らかな手を肘の内側に当てられて、なるべく気付かないように、さっくりと傷つけられる。
採血よりも微妙な速度で言葉を抽出していく。
ぽたり、ぽたり、と吹き溜まっていく真っ赤な言葉たち。
昨日読んだ小説に自傷行為のくだりがあって、私には一生縁のないことだと歯を食いしばりながら読んでいたけれど、それに似たことはみんな何かしら持っているのかもしれない。
溜まりゆく言葉たちを見ながら弛んでいくこの気持ちも、彼女たちの乾いた黒目の奥に共鳴するのなら。
私はまだもう少し言葉を吐いていても良いのかもしれない。