松野チョロ松の優しさについて
ここ2週間ほど、手紙と桜と二期と向き合った結果について、少しずつ書き残そうと思います。
桜を見た時、私は「手紙」がなかったことにされているのではないか、という気持ちによって、めちゃくちゃになっていた。
(24話「桜」所感とチョロ松推しの戯言 参照)
しかし桜でのチョロ松の行動、これはやはり手紙を乗り越えたからこその行動なのではないかとも思えてきた。
※ここから先はほとんど明示されていないチョロ松の行動について、ほとんど妄想を連ねているということをご了承ください。
「桜」において、チョロ松が職に就く描写はない。ハローワークで何かを熱弁し、本に囲まれて勉強しているような姿のみが映し出されている。
この彼の行動から想像できるのは、ハローワークにおいて何かしらの資格の取得を勧められた、という可能性である。
アルバイトや「手紙」の時のようなコネ就職であれば、おそらく物語の中で働く姿まで描ききることが可能だろう。
しかしそれが成されないのは、チョロ松が「職に就くのに時間を要する」何かを目指しているから、ではないだろうか。
彼は短期的に決着をつけようとはしていない。時間をかけてでも、長く続けられる仕事を手にしようと努力していたのではないか。
そして、彼がそのような考えに至ったのは、やはり「手紙」を乗り越えたからこそなのではないか、と思う。
「手紙」のチョロ松は、苦しそうだった。
「手紙」の彼の行動が彼にとっての幸福だったのかどうか、我々には知る由もないが、少なくとも全てが上手くいっているわけではなさそうに見えた。
「桜」の6つ子は、「手紙」の時よりも少し成長しているように感じる。
それぞれが、彼ら自身をある程度自由にさせられる場所で、生きようとしているように見える。
チョロ松にとってのその成長は、「自分に合った職業を、時間をかけて手に入れる」、ということだったのではないかと思う。
このように落ち着いて考えると、「桜」でのチョロ松の行動は、やはり「手紙」なくては為し得ないものだったのだと思う。(ずっと落ち着いていなかったのは、だからチョロ松ダケ働イテナイジャン、といった言説がネット上に散見されたために自暴自棄になっていたからです。)
それを踏まえて、二期第2話「祝・就職」を改めて視聴することにした。
すると、「手紙」との接続が感じられる描写が多々存在しているように感じられた。
チョロ松に冒頭からのしかかる、両親からの期待。刑に処されることなく、彼は一人取り残されて途方に暮れている。
この点に関しては脚本家の方が、チョロ松がこの場で残るのは必然である、という旨の発言をされていた。
つまり、彼は彼であるが故に、両親からの期待をかけられていたのである。
チョロ松がそうした期待をかけられる最大の要因と考えられるのは、やはり「手紙」における彼の行動ではないだろうか。
この場面、刑に処されていく順番も「手紙」における自立の真逆になっていて、どうしても「手紙」が意識される。
ところが、その後の屋台でのシーン。
チョロ松は、「なんで僕だけ助かったんだろう…」と疑問を呟く。
いや?! なんで?! わかるでしょ?!! それは!!!
なんと、チョロ松には全く自覚がない。
脚本家御本人が必然であるとするその期待が、なぜ自分にかけられているのか、彼は全く身に覚えがないような顔をしている。
ここで私は、ああ、彼はそういう人なんだな、と納得してしまった。
これを、「どういう人」と言葉にするのはとても難しいが、なんだか全てに納得してしまった。
「桜」でおそ松が、例の「チャッチャッチャーのスパッパパー」を口にした時、私は思わず怒った。
けれどチョロ松は、まるで自分の経験が、あの見送りが、全てなかったことであるかのように、その決意に同意した。銭湯でおそ松に笑いかけ、その背中を叩いた。
彼のその瞬間の理性や感情は、彼自身の利害や過去によって一切阻まれることはないのだ。
第4話「松造と松代」、チョロ松以外の5人が親の悩みを面倒くさがる中で、彼は一人父親の悩みを尋ねに向かった。結果、案の状面倒くさいことになるために、みんなに責められるにも関わらず。
第6話「イヤミがやってきた」、チョロ松はイヤミを羽交い絞めにし、「僕もろともでも構わないから、コイツを殺せ!」と叫ぶ。結果、ブーメランによって自分も殺されることになるにも関わらず。
第10話「カラ松とブラザー」、チョロ松は一人カラ松の悩みを尋ねに向かう。結果、カラ松自身にすらその役割を押し付けられることになるにも関わらず。
挙げ出すと切りがない。チョロ松の優しさは、自分をかえりみない。
彼の思い遣りや正義感、ともすれば殺意にもなる怒り。
彼の中から湧き上がるそれらは、彼に彼自身の人生があることすらも忘れさせて、どこまでも突き抜けていく。
それが、松野チョロ松という人間の、優しさなのだと思う。
ギャグアニメのキャラクターの行動からその人間性について考察することほど不毛で無意味なことはない、それはわかっているんですが、自分が納得し前に進むためには必要な行程だった…世界に許されたい……