シャワーにかき消される誰にも知られざる吐息
あの人の声を聴き続けて数日が経つ。
どんな言葉もどんな息づかいにも、
あの視線を浴びた一瞬を思い出すだけで
どんなフレーズも体に熱を帯びてくる。
なんでこんなことになっているのだろう。
いつからこんなに心が占拠されたのだろう。
恋はするものではなく落ちるもの、だなんて使い古された言葉が世の中には蔓延しているけれど
いつのまにかシャツに零したワインの染みのように
じわじわと心を抱きしめられていた。
電車の中、シャワーの最中、眠る前の瞬間
声にならないため息を何度したのだろう。
恋だの愛だの日常生活を狂わせるこの感情は
ひとたび味わうとついて離れないけれど
今はこの人肌さみしい季節も相まって、
どっぷりズブズブと浸かっていようと思う。
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