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オーストラリア「日本人ワーホリ、仕事なく炊き出しに行列」報道に思うこと

みなさん、こんにちは。
オーストラリア・シドニーで暮らしているNokoです。

今回はオーストラリアで日本人が「仕事につけず、ホームレスの炊き出しに並んでいる」という報道について、ワーホリ経験者として思うことを書こうと思います。



最近、頻繁に取り上げられるこの話題。
<日本人 ワーホリ 炊き出し>という見出しはすごくインパクトありますよね。


各メディアから取材依頼を受ける

私にも2024年の8月ごろから各種メディアより取材依頼が複数届くようになりました。Youtubeでワーホリについて投稿していたからです。

8/19には朝の情報番組「めざまし8」の取材を受けました。
内容はやはり、オーストラリアでワーホリ中の日本人が急増して仕事がなく、炊き出しに行列を作っている現状について話を聞きたいということでした。

依頼があったのが昼すぎ。
その日の日本時間9PMにzoomインタビューをしたいとのことでした。
そして、実際の放送が翌日8/20の8AM
TV番組の制作ってこんなにカツカツで動いているんですね。


それはさておき、
約30分のインタビューを受けました。
(もちろん無報酬です。)


私目線のZoom


聞かれたことは全てワーホリで苦労したことでした。
順調な今現在のことはこちらから話さなければ聞かれることはなく、話しても深掘りされることはありませんでした。

実際に使われたのはこの2つのエピソード

・仕事を勤務初日2-3時間でクビになったこと
・12人の違法ハウスでシェアハウスしていたこと


Youtubeもよかったらのぞいてみてね!


「ワーホリ=出稼ぎ」のイメージ

そもそもこのニュースが話題になる前、
あるゆるメディアがワーホリに行けば 誰でも稼げると報道していました。
(2023年の3月ごろから盛り上がっていたと記憶)

NHKでも長めの特集を組んで報道してたよ〜って
田舎の親族から連絡があったのを覚えています。

私がワーホリをしていると知っている元勤務先の同期数人から「TVで見て日本より稼げるっていうから会社辞めてワーホリに行こうか迷ってるんだけど、どんな感じが教えて」という連絡もありました。

当時は円安がすごい勢いで加速している時期で
それを強調するのにちょうどいい題材だったという理由もあると思います。

稼いでいる人が外貨で得た給料を日本円換算すれば
そりゃインパクトあります。

でも、それはごく一部の人の話。
主にSkilled worker(技術のある人)です。

私が入国したのは2022年末でした。
もう既にこの頃には仕事探しは難しくなっていたんです。
私も数えきれないほど応募して落ちましたし、同じ時期に来た日本人女性は結局キャバクラで働き始めました。

仕事がないだけではありません。
不動産価格が爆騰中で賃貸の空室率がめちゃくちゃ低い。
それに伴って家賃上昇。
固定費として出ていく支出が多いので貯金するのも簡単ではなかったです。

周りもこんな状況で苦労していて、"すごい稼いでる"って人はSNSの中にしかいませんでした。

なのに、ワーホリで海外に出れば「誰でも」「楽に」「稼げる」といったイメージを植え付けるような報道ばかり。
今回私がマイナスな面しかインタビューされなかったように、この時の出演者は良い面のみを聞かれたのではないかと推測します。

先述した<めざまし8>にて実際に放送された苦労エピソードも、2023年の初めごろの話なんです。
出稼ぎ報道が始まったころに経験したことでした。
放送では時期に言及していなかったので最近の話と解釈した方もいると思います。

・仕事を勤務初日2-3時間でクビになったこと
・12人の違法ハウスでシェアハウスしていたこと


ちなみに私は一人部屋だったので、この写真の2段ベットは別の部屋。私が使っていたものではないと伝え、自分の部屋の写真も送りましたが、こちらが使われてました。


いわばメディアの"印象操作"によって出稼ぎのイメージが定着。
簡単に稼げると思ってしまった人たちが次々と入国してきたんです。

2023年〜2024年
日本人ワーホリビザ発給数は"過去最高"17,095件


「出稼ぎ」一転、 仕事に就けず炊き出しに並んでる


繰り返し「ワーホリは稼げる」と報道していたと思ったら
ここにきて厳しい現実という"真逆"の方向にシフトしたんですね。

現地にいる私の感覚からすると、
ここ1年ちょっとで状況が悪化して生活が困窮したわけではなく、
以前から稼げる人は稼いでいたし、そうじゃない人もいました。
今でも稼いでいる人はいるし、そうじゃない人もいます。

メディアは一部しか切り取っていないんですよね。
しかも、それが極端な部分の切り取りなんです。

これまで見た複数の放送や記事ではブリスベン、メルボルン、シドニーで炊き出しの列に日本人が並んでいて、その数が日々増えているということでした。


実際、ワーホリの日本人は困窮してる?


余裕をもった生活とは言えなくても、
そこまで切羽詰まった生活をしている方はほとんどいないと思います。

炊き出しに並ぶのは無料で食材などがもらえるからで、節約のため。
生活困窮者のためのものだと知らないで並んでいる人もいるみたい。

Xで「ここで無料で食材もらえたよ!」と言った投稿が登場。
ワーホリ界隈で拡散され、閲覧数やリアクションが多く人気だったのを覚えています。それを見た人たちが追随してもらいに行ったのだろうと思います。

「お金がない」と言っている人の多くも、オーストラリアの口座にはないけど、日本の口座にはあるって方が多い。
逆に本当にゼロに近いという方は渡航する前の情報収集が甘すぎたのではないでしょうか…

出稼ぎ報道を見てしっかりと準備をせず、英語できない、貯金もないのに勢いで来てしまったごく一部の方々は、仕事がなくてお金もないのは正直当然のことかと…

結論、ワーホリ全体が炊き出しに頼るほど困窮しているといったイメージを受ける報道もありますが、事実ではないです!!


とはいえ、仕事探しは難しい。


仕事を探しの競争は半端なく激しいです。
競い合うのは日本人ではなく、英語が話せる外国人。

オーストラリア政府が年2回出しているワーホリに関する調査文書があって、見ていると面白いなと思うのですが、

参考)こちらに記事一覧が載っています。https://www.homeaffairs.gov.au/research-and-statistics/statistics/visa-statistics/visit

以下は2023年12月に出された最新版より引用です。

As at 31 December 2023 there were 170,437 WHM (subclass 417 and subclass 462) visa holders in Australia, up from 112,335 at 31 December 2022

2022年12月31日時点で、
オーストラリアには170,437人のワーホリビザ保有者がいた。
ビザ発給数と違って実際に現地にいる人数です。

ちなみにワーホリビザには417と462の2種類があって、
違いは対象国と条件です。

日本は417に属していて、語学レベルと学歴が問われません。
一方、462に属する国の方々はこれらの証明書が必要で、政府の推薦書まで要するという国もあるようです。

そう考えると日本はラッキーですよね…?!

A total of 122,388 WHM (subclass 417 and subclass 462) visas granted, compared with 111,610 visa grants in the same period in 2022, including: - 66,870 first, 4,553 second and 1,320 third Working Holiday (subclass 417) visa grants - 16,146 first, 5,044 second and 1,078 third Work and Holiday (subclass 462) visa grants

直近6ヶ月では合計で122,388件のワーホリビザが発給されました。

Subclass417
ファースト:66,870件
セカンド:4,553件
サード:1,320件

WHMビザ承認件数推移


The United Kingdom, France, Republic of Ireland, Germany and Italy were the top five citizenship countries of the Working Holiday (subclass 417) visa grants in the six month period to 31 December 2023, cumulatively accounting for 68.7 percent of the total.

417ビザの発給数が最も多かった5つの国は以下で全体の68.7%を占めているそうです。(2023/12/31までの6ヶ月間)

- United Kingdom (23,009)
- France (14,115)
- Ireland (8,116)
- Germany (7,011)
- Italy (6,080)


イギリス、アイルランド、ドイツの人は
当たり前のように英語話しますよね。
個人的な感覚ですが、(オーストラリアにいる)フランス、イタリア人も話せる人が多い。

WHMビザ承認件数(国別)

日本人のワーホリビザ発給数は過去最高を記録したけど、世界で見ると、417クラスの中では6番目に多いことがわかりますね。
全体の6.8%に当たります。


話がそれましたが、私が言いたかったのは、
ワーホリに仕事がないわけではありません。

こういった英語が当たり前に話せる人たちと戦わなくちゃいけないんです。
(+学生ビザでも働けるので留学生や現地大学生も仕事を探してます。)

英語力だけじゃない。

これまでの話と矛盾するようですが、
ワーホリに限らずにいうとシドニーで暮らしていれば、
英語ができない人なんてたくさんいます。

私はシドニーのCBD周辺で生活が完結しているので、
特にそう感じるんだと思います。
もうほぼアジアみたい。


英語が苦手でもいいんです(生活はできます)
でも何か武器を備えてから出陣して欲しい。
と、私は思います。
時々、あまりにも無防備で戦いに挑む方をお見受けするので…
凹まないメンタルをお持ちの場合は問題ないけど。


そして、仕事を選びすぎるな!ということ。
私自身が、
「最低賃金以下はイヤだ」
「場所はシティがいい」
「英語を使う仕事がいい」
「ローカルオーナーがいい」
「cash in handはイヤだ」などなど
生意気にも選びすぎたことでなかなか仕事に就けませんでした。

結局妥協して、当時の私としては理想ではなかったけど、
探し始めて1ヶ月半ちょっとで仕事を始めました。

結局10ヶ月もそこで働いたので、
何事もやってみないとわからない。
(妥協なんて思ってごめん、元勤務先…)


※仕事の話はこちらの記事で書いています。


仕事があっても安心できない。

苦労の末に仕事を見つけられたとしても、
喜ぶのはまだ早いです。
・シフトに入れない可能性
・クビになる可能性


オーストラリアの決まりで1日の最低労働時間が定められていますが、
例えばレストラン&カフェ業界ではパートタイム3時間、カジュアルは2時間です。

下記文章はfairworkのホームページからの引用。

Minimum hours
(Restaurant Industry Award [MA000119])

Each time a full-time, part-time or casual employee works they have to be given at least:
6 hours of work in a day, for full-time employees
3 hours of work in a row, for part-time employees
2 hours in a row, for casual employees.

https://www.fairwork.gov.au/employment-conditions/hours-of-work-breaks-and-rosters/hours-of-work


炊き出し報道に出ている人の中でも、
”仕事はあるけどシフトに入れない”
"1日3時間しか働かせてもらえない"
と話している方がいました。

今はどこも人手が足りないというよりは余っているお店が多い状況。
仕事ができなければシフトは減らされ、クビもありえます。
日本人の感覚では考えられないほど簡単に告げられます。(経験あり)


情報収集力が大事!!

「ワーホリ行けば誰でも稼げる」というメディアを信じて来た人と、
「時給は高いけど仕事見つけるのが大変」と思ってきた人とでは行動に違いが出ます。

出稼ぎ報道や炊き出し報道のYoutubeやYahooコメント欄などを見ると必ず書いてあるワーホリ批判の数々…

出稼ぎが良い・悪いの話ではなく、
炊き出しに並ぶことの良し・悪しでもなく、
英語ができないからダメなんだということでもなくて、
実態を反映していない情報に惑わされずに自分でちゃんと調べることが大事
これに尽きます。

何十年前のワーホリ体験者の話は貴重だけど、
現在の生活にはほとんど役に立ちません。
ましてやコロナ前(2022年前半くらいまで)と今とでも
実態は全く異なります。
情報の鮮度も見極めて!取捨選択をしっかりと。

ということで、
今回はオーストラリアで日本人が「仕事につけず、ホームレスの炊き出しに並んでいる」という報道について、ワーホリ経験中の私が思うことでした。

読んでくださってありがとうございました!


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