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ジェーンとシャルロット感想

「ジェーンとシャルロット」を観て2日経ちました。

余韻があるうちに感想を残しておこうと思います。

これから映画を観る方は読まない方が新鮮な気持ちで観れるので鑑賞後にどうぞ!


日本の茅ヶ崎館(すごく素敵な雰囲気でスタート)という宿での2人のトークから始まりますがシャルロットは
「他の姉妹たちと違って自分のことを愛していなかったのか?」
ストレートな質問にジェーンは
「あなたはまるで地図がない土地のようだった」
と返し、デリケートで緊張感ある場面からスタートしました。


日本のシーンからスタートします


この時にジェーンは思春期のシャルロットに
「胸がどれだけ成長しているか触って確認したい」
とも言っていたようで…。

セルジュゲンズブールのファンである私はこの流れにピンとくるものがあったのです。

セルジュはもう亡くなってその場にいないのですが2人がいる場所には彼の存在感がどうしても透けて見えてました。

ジェーンは自分とセルジュの娘であるシャルロットに対して、セルジュが溺愛した女としてのシャルロットとセルジュの才能を受け継ぎセルジュの面影があるシャルロット。

2つの面でコンプレックスを刺激する存在としてライバルとしてシャルロットを意識していたのだと気づきました。
シャルロットの才能を讃えながらも自分も
「シャルロットに認めて欲しい。完璧でありたい。」
そんな思いを抱えていたように思いました。

シャルロットは美しい母に憧れながらも母から貰えるはずの愛がもらえず寂しい気持ちを抱えつづけていた様子が伝わってきて心が締めつけられました。

私的なクライマックスはバーキンが出ていくまでシャルロットやセルジュと住んでいた家に30年ぶりに2人で行くシーンです。


30年ぶりに足を踏み入れて
セルジュとシャルロット


驚いたのが30年、あの家に足を踏み入れてなかったこと。
シャルロットをセルジュの元に置いて出て行ったことがジェーンにとって心の傷として残っていたようでした。

この家は現在、ゲンズブール美術館として当時のままの状態を保って一般公開されているので、家具はもちろん冷蔵庫の中の食べ物も中身は腐ったまま残されているのです。

タイムスリップしたかのような不思議なシーンでした。
ジェーンの印象的なセリフが心に残りました。
「ポンペイの遺跡のよう。楽しかった思い出もすべて前世のことのように思えてくる」

有名なセルジュの部屋にある特大ブリジットバルドーの写真の前に老いたジェーンが!
フレンチ好きの人にとってお宝シーンですので興奮間違いなしです!



ジェーンは当時使っていた香水を吸い込みます。
観ている私たちも同じようにタイムスリップしたかのような不思議で神聖なシーンでした。
セルジュがそこに存在しているかのようでした。

シャルロットにとっては母が出ていき、父が亡くなり複雑な気持ちが残る場所のようです。

2人の心の傷が残るその家に2人で訪れたことで心の距離が一気に近くなったのがわかるシーンでした。

ジェーンが亡くなる前に訪れることができてよかったな…と思います。

占星術的に解釈するとこの映画は月が示す
「母と感情、本心」
にクローズアップされているように感じました。

監督のシャルロットは蟹座の新月生まれ。
ジェーンの神経質で繊細な月乙女座の面を上手く引き出し感受性豊かに美しく撮ることができたように思います。

パブリックイメージのエキセントリックで気さくでファッショナブルなジェーンの裏側、プライベートのジェーンがそこにいました。

シャルロットにしか撮れない作品でした。
遺作がこの作品でジェーンも喜んでいるのではないかと思います。

エンディングはジェーンの曲ですが選曲のセンスが素晴らしかったです!
まさにジェーンの B面!

「Je voulais être une telle perfection pour toi !」
タイトルの意味は
「あなたのために完璧になりたい」
「最愛の人になりたい」と歌詞の意味が字幕で出る。
「そのためには何だってする」
というような意味深長でアナーキーな歌詞が続く。
私はあなたのために完璧でありたかった!……。そんな風に思える男がいて、その男のために完璧をめざす女。

セルジュに対しての想いは勿論、この歌詞にはシャルロットへの想いも込められてるのではないかと思いました。


シャルロットはエピローグで語ります。
「人はなぜ母から離れていくことを求めるのだろう?
まるで自分自身かに課した目標でもあるかのように。
私は自由になりたいんじゃない、しがみついていたい」

そう、人は月から解放されて自立していかなくてはならない。
月から離れて生きていくことはとても寂しさを伴う。

シャルロットは喪失の予感をきっと感じとっていたのだろうと思う。

気まずい親子の心の隙間が埋まり傷が癒えて再生する様子に感動しました。


フランスのジェーンの自宅


どんな家庭でもちょっとしたことで気持ちが行き違ったり誤解が生じることがありますがこの作品は修復するきっかけとなり得ることができるのではないかと思いました。

誰もが持つ心の傷の修復が描かれた作品。
1人でも多くの人に観て欲しいです。


♕♕𝚗𝚘𝚔𝚘.𝚊𝚜𝚝𝚛𝚘𝚕𝚘𝚐𝚢𓂀𝚝𝚛𝚘𝚝♕♕

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