昭和奇譚「銀雪のゴルフコースで・・・」
昭和のおわり、携帯電話の普及もまだまだだった頃・・。
埼玉県某河川敷コースでラウンドの日。前日未明から雪が降りだし、そこそこ積もってきてるので(クローズだろうな・・)、とラウンド観念しながらも、とりあえずゴルフ場へ・・・。
まあ、そんな状況でも、スリーサムで回るゴルフ馬鹿2人も、すでに到着していて、
「雪も止むし、昼頃からなら整備した9ホールは回れるってよ」
せっかく時間作って来たんだし、ラウンドしていこう、雪上ゴルフもおつなもん♪と
近くの練習場でたっぷり玉を打ち時間をつぶし昼過ぎ。吹きっ晒しの極寒コースへ・・・。
回っているのは馬鹿3人だけ・・なのだ。
グリーン上とフェアウェイだけ9ホール雪かきをしてくれてはいたが、ラフへ行ったら雪に埋もれて白いボールはまず見つからない。3人とも何個ロストしたことやら・・。けれど、初めてのこんなシチュエーションゴルフでテンションは爆上がり、はしゃぎまくりの馬鹿3人・・。だが時折、鉛色のどんよりとした空、他にはだーれもいない広大な銀雪に、ふと、薄気味悪さを感じたりもしたわたㇲだった・・。
数ホール消化したところで、ゴルフクラブを数本どこかのホールに置き忘れてる事に気付いたわたㇲ、ひとりカートで探しに戻る・・。
2ホール戻ったグリーン横に我が愛刀を無事発見。ホっと拾い上げたその時・・・、
誰もいないフェアウェイ彼方から笑い声が聞こえた・・・。
「・・・なんだ・・ゴルフ馬鹿、俺たちだけじゃないじゃん。」
それならと、追いつかれてもなんなので、チンタラはしゃぎながらを止めにし、せっせと9ホールを2周りして無事キャディマスター室前へ。
係員「早かったですね」。
わたㇲ、クラブを拭きながら「寒いし後ろの組に追いつかれないようガンバリましたよ」
係員訝しげに「えっ!?」
「お客様3名様以外、今日は誰もラウンドしてませんよ」。
***
女性の笑い声のようだった。
唯でさえ、夕方の、周りにだーれもいないゴルフコースは薄気味悪い、と普段から怖がっている私の、空耳だったのだろうか。