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「方法」や「ツール」にできることは多くない(『ToDoリストは捨てていい。』より)


本書の企画を引き受けたにもかかわらず、私は「仕事術」や「ライフハック」というモノに疑いをもっています。

もちろん「佐々木正悟」という名前をごくわずかにでも聞いたことがあれば「お前こそそういったモノをずっと推奨してきた張本人じゃないか!」と言いたくなると思います。

そのとおりです。

ただ私はいわゆる「ビジネス書作家」として生き始めたころから、あくまでライフハックなどはよくて「サプリメント」でしかなく、ケースによっては「しゃれ」に近いアイディアだとみなしてきました。

たとえば寝起きに少し熱めのシャワーを浴びるという「ライフハック」があります。目覚めるには悪くない方法でしょう。

しかしこの程度のことは、少し考えれば誰にでも思いつきます。さらにいえばこの方法は「十分に寝た人」だけにおすすめできます

二時間しか眠ってないからといって五〇度のシャワーで目覚めようとしても皮膚にやけどをおうばかりです。

私は本書のテーマである「消耗」についてもまったく同じことがいえると思います。

消耗しないための時間術やスケジュール管理の方法なら確かにいくらかは心当たりがあります。

でもそれらはあくまで「消耗しなくていいはずの条件」で働いている人向けです。

間に合うはずもない締め切りを設定されて、そのうえ上司から理不尽に責めたてられている人に、時間のやりくりだけで「消耗しなくなる」とはいえません。

さらに「心の消耗」のような問題には、メソッドやガジェットよりも「覚悟」がものをいうことも少なくないのです。

たとえば、夜の八時以降に働くと「消耗する」と思い込んでいる人がいるとします。

そういう人には「八時前に仕事を終えるライフハック」は悪くないでしょう。

しかし実は「夜の九時に働いても消耗しない!」と気がつければ、それだけで問題が解決してしまう場合も多くあります。

ただやっかいなことに、こういう「覚悟」のような精神論が有効だとなると、「やはり真夜中まで仕事をさせても大丈夫。ようは気持ちの問題だ」と理不尽な上司に詰められても反論できなくなってしまいます。

そこで私は冒頭に「消耗しないために覚えておきたい3つの原則」を掲げたいのです。

①仕事であるかどうかにかかわらず「約束」をするかどうかは自分で決める。
②約束を交わしたら原則として守るようにする。
③やりたいことはすぐにやり、休みたくなったらすぐに休む。

以上の3原則を守ったうえで「仕事術」なり「ライフハック」を用いるようにしてください。